植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた

植物人間だった夫がなんと新婚の夜に目を開けた

による:  かんもく  たった今更新されました
言語: Japanese
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概要

偏執男

財閥

独占欲

父親が経営している会社が倒産する寸前で、三千院とわこは継母の都合で、ひどい病を患った噂の大物常盤奏の妻となった。周りの人間は彼女が未亡人になって、常盤家に追い出されるのを高みの見物のつもりで待っていたところに、思いがけず奏が意識を取り戻した。 昏睡状態から回復した彼は、性格が暗くて暴戻で、「三千院とわこ、仮に僕のこともができたとしても、僕がこの手でその首を絞めて殺してやる!」と彼女に脅しを入れた。 四年後、とわこは男女一人つつの天才双子を連れて帰国した。 財経テレビ番組に出ている奏の顔を指差しながら、彼女は「いい、君たち、この男にあったら、絶対接触を避けること。でないと、首を絞められるわよ」 その夜、うえの子が奏のPCにハッキングし、「首、絞めてみろうよ、この野郎」と宣戦布告を残した。

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コメント

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美幸
最初は涙を流しながら読んでいましたが、最近では読むのがかったるいです。内容が面白くないです。
2024-08-30 17:51:34
2
339 チャプター

第1話

今日は東京名門にあたる三千院家ご令嬢三千院とわこの結婚式だ。新郎の姿の見当たらない彼女の結婚式なのだ。なぜならば、新郎の常盤奏は半年前に車の事故で植物人間となり、余命も今年いっぱいだと医者に断言された。失意のどん底に落ちたその際、常盤家の大奥さまは、息子が亡くなる前に、結婚させようと決めた。常盤家が、東京での指折りの一流名門だといっても、死ぬ間際の人間の妻として喜んで嫁入りする令嬢は誰一人もいない。…鏡台の前に座っているのは、支度の整えたとわこ。白いウェディングドレスに包まれた姿のしなやかで美しい彼女は、まるで雪みたいな白肌をしている。凝った化粧をしている彼女は一段と美しく見えて、まるでまるで蕾を膨らませ今にでも咲こうとしている赤いバラのようだった。キョロキョロしているその大きくてつぶらな瞳には、恐懼という不安の色が見えた。式開始まで、まだ二十分、彼女は絶えずにスマホのスクリーンをスライドして、ヤキモキしながら返事を待っていた。無理矢理常盤奏との縁談話に乗せられる前に、とわこには彼氏はいた。まるで嘘のような巡り合わせで、その彼氏というのは、常盤奏の甥っ子で、常盤弥だった。ただ、その間柄はずっと伏せておいたままだった。昨晩、彼女は弥にメールを送り、自分を連れて東京を脱出して、駆け落ちしようと彼に願ったが、一晩中待っていても返事は来なかった。とわこはもう、待っていられなかった。椅子から立ち上がった彼女は、スマホを握りしめて、適当な口実を作って部屋を抜けた。回廊を抜けて、とある休憩室の前を通ろうとしていたところ、彼女は驀然と足が止まってしまった。閉めただけにしてあった休憩室のドアの向こうから、妹のはるかのかわいこぶった笑声が聞こえてきた。「弥くん、きっとまだ弥くんが来るのを待っているのよ。あたしのバカ姉は!ねぇ、後で会ってあげなよ。もし後悔でもして、結婚してくれなかったら、どうするの?」はるかを抱きしめている弥は、はるかの首に自分の薄い唇を走らせながら言った。「今更、あいつが嫁入りしたくないってわがままを言っても効かないんだろう?後悔したとしても、俺ん家の用心棒どもが多少強引な手を使っても、結婚させてやる!」聞こえてくるはるかの笑声は先よりも耳障りだった。「弥くんが毎晩、あたしといるの、あの三千院
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第2話

シャンデリアの下にいる奏の目は黒曜石の如く、中からは奥深い何かが読めそうで、悩ましいと同時に、危険なオーラを放っていた。彼の目はいつもと同様、身の毛がよだつほど、人の心を脅かしていた。びっくりして顔が真っ青になった常盤弥はがばと数歩後退りした。「とわちゃん…じゃなくて叔母さま、もうだいぶ遅くなったので、私はこれで失礼いたします」生汗が止まらない弥は、足元をひょろつきながら主寝室から逃げ出した。弥が慌てて逃げたのを見届けたとわこも、口から心臓が出そうになって、小刻みに震えている彼女の体はどうしてる止まらなかった。「常盤奏が起きたのかしら?!もう余命は長くないはず!」というのは彼女の心の声だった。とわこは何とかして奏に話かけようとしたが、自分の口からはなかなか何も出なくて、もっと近寄って彼の様子を見ようともしたのに、両足はまるで床に固定されたかのように、一歩も動けなかった。未知への恐怖に包まれた彼女は思わず尻込みをし…下の階へと走り出した。「三浦さん、奏さんが起きたの!目、開いてくれた!」とわこのを聞いて、三浦は急いで上の階に上がってきた。「若奥さま、若旦那さまは毎日目を開いてくれますが、これは意識が回復したことではございません。今こうしてお話をしていても、何の反応もくれずにいますから」ため息まじりに三浦は「植物人間が昏睡状態から回復する確率は極めて低いとお医者さまが」といった。「夜、明かりをつけたまま寝てもよろしいでしょうか?何となく不安でね」とわこの胸はなおどきどきしていた。「もちろんです。明日の朝はお家元のお屋敷へ行くご予定ですので、若奥さまは早めにお休みになってください。では、明日の早朝起こしにまたお伺いいたします」「はい」三浦を見送ったとわこはパジャマに着替え、ベッドに上がった。男のそばにいる彼女は、窮屈に座っていた。奏のハンサムで美しい顔を見つめながら、彼女は手を差し出して、彼の目の前で振った。「常盤奏、あなたは今何を考えているの?」けど、男は何の反応もしてくれなかった。彼女の心境は突然変わり、悲しくなってきた。彼の遭遇と比べたら、自分が現に経験している苦しみはつまらないと思い知った。「常盤奏、私的には、あなたが目を覚めてほしい。あなたは大金持ちだ。あんな大金が常盤弥のクズの
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第3話

 今のとわこはまるで背中に棘が刺さられいたかのようで、いても立ってもいられない気分だった。「とわこさんはまだ大学生だよね?こんな大事な時期に妊娠したら、勉学に支障が出ることになるでしょう…」と悟の妻が言った。悟も相槌を打った。「そうだ、そうだ。とわこさんはまだお若いだし、彼女的にも勉学をやめて、家で子供を産んで育つのがさぞ嫌だろう!」大奥様は長男とその嫁の腹の中をちゃんと把握していた。これも老婆であった彼女が意地を張っても奏の血筋を残すことを押し通す理由なのだった。「とわ、奏くんの子を産んでくれるか?」という問いを投げてすぐ、大奥様は何も隠さずに、率直にとわこに言い聞かせた。「あなたも知っているはず、あなたと奏くんの子供は、将来奏くんの遺産を継ぐことになる。奏くんの莫大な遺産で、あなたと子供は贅沢に生きていけるでしょう」とわこは何も躊躇なく、「ええ、喜んで」と答えた。常盤弥が奏の家業を奪うのを阻止することさえできれば、彼女は何でも喜んで試したことだった。それだけではなく、自分が拒んだとしても、常盤家従来の強腰のやり方からして、強引に子供を産ませるだろうと彼女が判断した。彼女から良い返事を聞けた大奥様は、満足そうな微笑みを顔に浮かんだ。「いい子だ。さすが私が見込んだだけ、外の愚かの女どもとは違うだと分分かっていた。あの連中は奏くんがもうすぐ死ぬので、奏くんから何にももらえないと踏んでいて…愚か者ども!」お茶のおもてなしを終えて、屋敷から出たとわこは、奏の別荘に帰ろうとしていたところを、途中で弥に引き止められた。汗ばむ炎天下で、蝉の声は次々と高まった。常盤弥のを顔を目にしたら、とわこはやけに虫唾が走った。「三浦さん、先にお土産を持って帰ってきてちょうだい」と彼女は三浦婆やに言いつけた。頷いた三浦婆やは、お土産を持って、先立った。周りは誰人もいなかったのを確認して、安心した弥はとわこに向けて、こう言った。「とわちゃん、俺だって傷つくんじゃない!もうあんなにも長く付き合っていたのに、とわちゃんは一度もくれなかった…けど、今は自らの意志で叔父さんの子産むだなんて」「奏さんの子を産めば、遺産がもらえますし。これ以上都合のいい話ないじゃないと思いませんか?」彼女はわざと軽い口で返事して、弥の心を抉った。思った通り
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第4話

 「そうですね、早ければ、三、四ヶ月で成功するケースもあります。遅ければ、いくらでも時間がかかります」女医者は少しの空白を作って続けた。「奥様はお若いですし、きっとうまくいくはず!」時は割と早く流れていき、一雨で東京ではすっかりと秋が来られた。夜、風呂上がりのとわこは浴室から出て、ベッドの傍らに行き、今日買ったばかりの保湿クリームを、少しつづ肌につけて、斑がなくなったまで塗った。「奏さんにも塗ってあげようか!最近のお天気は乾燥しすぎたのよ」彼女はそう言いながら、奏のそばに寄った。ベッドの縁に座り、彼女は指先で適量なクリームを汲んで、彼の顔に塗ってあげた。ふっと彼の目が開いた。琥珀のようで奥深い何かを潜めたあの瞳は、まるで宝石みたいだった。彼の目から漏れてきたわずかな心気の揺らぎを察した彼女は、驚きのあまりに息が重くなった。毎日、彼が目を開いたのを見てきたけど、見るたびに驚いてしまった。「動きが荒かったせいか?力を入れてないつもりだったけどね!」そう言いながら、彼女は指を動かしつづけて、彼の頬を丁寧にマッサージした。同時に、ぶつぶつと独り言を続けた——「ねぇ、奏さん、ネットでのニューズを読んだら、奏さんは彼女を作ったことがないのは、きっと身体的に無理だからというのが書かれてて…けど、私は奏さんがなかなかいい体をしていると思うよ!腕が健やかだし…太腿も丈夫そうだし…」彼の顔に保湿クリームを塗り終えた彼女は、勢いで手をあげて彼の腕と太腿をポンポンした。彼女の叩きは柔らかくて軽いから、決してこのポンポンで大な大人がどうかしたはずがなかった。なのに彼女は彼の反応で目を丸くした——それは…何となく男の声がしたからだった。「奏さん?奏さんなの?さっきの男の人の声は、奏さんが喋ったからなの?」とわこはぱっとベッドの縁から跳ね上がり、ただでさえ大きなつぶらな目を丸くして、彼の顔を見つめた。彼も彼女を見つめていた——今までとは全然違った。これまでの彼も目を開いたけど、両目には生気がなかった。でも今の彼の目はじっと彼女を見つめていて、中から感情が読めてきた!ただその感情には怒り、敵意とわずかな疑惑が混じっていた。「三浦さん!」尻尾を踏まれた猫のようで、とわこは素早く寝室から飛び出して、下の階へと走っていった。
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第5話

 とわこはびっくりして、つい後退ってしまった。奏はまるで蘇生した野獣のようだった。眠てくれていた時は、彼からは一切危険な気配もしてこなかったが、その両目を開いたと、危険が湧いてきた。部屋から出てきた三浦婆やは、門を軽く閉じた。驚いた鹿のように取り乱していたとわこを見て、三浦婆やの口から慰めの言葉が出てきた。「若奥様、安心してください。若旦那様は起きたばかりから、まだこの事実を受け入れられないのかもしれません。今日は一旦、客の間でお休みください。話がございましたら、まだ明日にでも。大奥様は若奥様のことを買ってくれますし、もしかしたら、肩を持ってくれます」とわこの頭の中はもうごちゃごちゃになっていて、奏がいつか死ぬ覚悟ができていたが、まさか起きてしまったことは想像すらもしなかった。「三浦さん、私の荷物はまだ彼の部屋に…」中に入って自分の所持品を持ち出したがっていたとわこは、ちょこっと主寝室のほうを覗いた。先自分の目で確かめた奏のあの凶悪な目つきで、彼女の心の中では、彼は多分自分を妻として受け入れないだろうといった予感が強くした。彼女にとって、いつでもこの常盤家を出られるよう、準備するが必要だった。とわこの話を聞いた三浦婆やは、息を浅く吐いた。「貴重なものでなければ、預けてもらいましょうか!明日、この私が取って差し上げます」「はい。三浦さんもやっぱり奏さんのことが怖いのでしょうか?」「若旦那様の元で、お仕えさせてもらってるのはもかなり長い年月が経ちました。一見怖そうな感じがしますが、私を困らせたことは一度もございませんでした」とわこは相槌だけを打って、これ以上何も言わなかった。彼女は彼の妻だけど、厳密に考えると、これが初対面だったから、彼が敵意を抱いていたのも、納得できた範囲内だった。この夜、彼女はよく眠れなかった。訳のわからなかった発想が脳裏をよぎった。奏が意識を取り戻したことは、完全に彼女の生活のペースをかき乱した。…翌日。朝八時、三浦婆やは主寝室から持ち出したとわこの所持品を、客の間へと持ってきてくれた。「若奥様、朝食の準備は出きました。若旦那様がダイニングで待っていますので、一緒に来てください!お話をして、お互いへの理解を深めるいい機会です」と三浦婆やが言った。とわこは難色を示した。「
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第6話

 出血していたので、流産を防ぐ処置が必要となった。このことはまさに、とわこをパニックに突き落とした晴天霹靂だった。「先生、もしこの子が要らなかったら、どうしたらいいでしょう」もうすぐ奏と離婚することになったから、腹の中の子は、実に間が悪かった。問いかけられたお医者さんは、彼女を一瞥した。「理由を聞いてもいいですか?世の中には、赤ちゃんがどんなに欲しくても、授からない人々がどれだけいるかわかります?」彼女は視線を少し下のほうに向けて、沈黙を選んだ。「ご主人は一緒に来ていませんが、どうかしましたか?」と医者に問われた。「赤ちゃんが欲しくないのも結構ですが、まずは夫婦二人で話し合ってから決めましょう」とわこは顔を顰めた。彼女がかなり困っていたように見えて、その医者はやっと彼女の病歴本を手に取り、目を通した。「まだ21歳か!結婚はしていませんよね?」「してい…一応その枠に入れます」もうすぐ離婚するのを思い出して、とわこはそう答えた。「人工流産手術も立派な手術です。今日決まったところで、今日中にすぐできるわけではありません。手が空いてません。一旦帰って、じっくり考えのをおすすめします。彼氏さんとどう揉めているのが知りませんが、赤ちゃんにはなんの罪もないです」お医者さんは病歴本を彼女に渡した。「今出血しているので、処置をしないと、これから流産する可能性もあります」とわこの態度もふっと柔らかくなった。「先生、処置というのは?」お医者さんは再び彼女の顔を見た。「人工流産する希望じゃなかったか?もう気が変わりましたか?三千院さん美人ですし、赤ちゃんもきっと綺麗でしょう。流産を防ぐのなら、まずは薬を処方しますので、一週間の間安静にしてください。一週間後まだ再診に来てください」…病院から出てきた彼女は、明るい日差しで目が眩んだ。彼女の背中からは、止まらないほど、生汗が出ていて、両足は鉛のように重く感じた。今の彼女はすごく迷っていて、どこに行くべきかも、誰に相談するべきかもわからなかった。ただ唯一確定できたのは、これは奏に乗ってもらってはいけない相談だった。彼に教えたら、彼女は確実に彼の用心棒に、手術台に乗せられた。彼女は子供を産む決心をついたわけではないが、ただ今の彼女は頭が混乱していて、一旦落ち着いてから決めよ
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第7話

 奏はパスワードを設置していなかった。立ち上がるスピードも早かった。早すぎて、彼女の心拍に乱れが生じた。彼女は深呼吸をしながら、USBメモリーを挿入し、自分のSNSアカウントにログインした。ちゃんと登録したのを確認でき、彼女は迅速にファイルを先輩に送った。怪しいほど順調だった。ファイルは12時前に、無事送信だれた。1秒でも、書斎に長く居残る勇気、彼女にはなかった。電源を落とした時、マウスを取った手が震えたのかもしれなかった。その拍子で、とあるフォルダをクリックしてしまった。あるフォルダがいきなり表示された。彼女はそのつぶらな目を大きく開けて、好奇心に誘われ、フォルダの中身を見てしまった。…5分後、彼女は書斎から出てきた。三浦婆やはほっとした。「ほら、若旦那様はそんなに早く戻りませんって」とわこの内心はいつもよりも複雑だった。彼女は奏の秘密に触れてしまったようだった。そんなことになったとわかっていたら、絶対彼のパソコンは借りなかった。「三浦さん、奏さんの書斎には監視カメラはあるか」「書斎の外にはあります」とわこの顔色は思わず悪くなった。「じゃ私が書斎に入ったの、きっと彼にバレる」「若旦那様が帰ったら、若奥様のほうから、積極的に説明すれば問題ないと思います。この三浦婆やが時間を見ていました。10分も経っていません。お怒りにならないはずです」とわこは三浦婆やに慰められた。「チン」と携帯の通知音がなった。携帯を手に取ったとわこは、振り込みの通知を目にした。先輩から四万三千円の振り込みが来た。報酬がこれほど高かったのが予想外だった。たかが二時間で、まさか四万三千円をゲットしたとは!この振り込みは、タイミングよく、彼女の内心を虜にしたパニックをはらってくれた。わざと彼のパソコンを使ったのではなかったし、それに、わざと彼のパソコンの中身を見たのでもなかった。彼が帰ってきたら、ちゃんと説明しようと気合を入れた。彼が怒らないことをも、とわこは祈った。何しろ、彼女はもう離婚するのに承諾したので、離婚したら、もう二度と会うこともなかったはず。彼がどれだけの秘密を抱えても、彼女には関係のなかった話だった。昼飯の後、とわこは部屋に戻り、ドアを閉めた。彼女は鏡台の前に座り、頭を傾
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第8話

 内側へとドアが押し開かれて、外に立っていた大奥様は、部屋の中を覗き込んだ。体育座りをしていたとわこは、体を丸めて、壁に寄りかかっていた。下ろされた彼女の髪は、ぼさぼさになった。外からしてきた物音に気付き、彼女は呆然としながら、顔を向いてきた——「とわ!どうしたの?!」白紙のような蒼白な顔色をしていたとわこを見て、大奥様の血圧はあっという間に上がった。「何にをどうしたらこんな様子になるの?まさか…奏の馬鹿者に…虐められたの?」そう言いながら、大奥様の声がやや震えてきた。前の会った時より、彼女はすっかりと痩せた。彼女の面には、血色が少しもなく、唇には浅いながらひび割れができてしまった。何かを言いたがっていたそうで、彼女の胸が起伏していたが、声が出なかった。三浦婆やは温まった牛乳を持ってきて、飲ませようとして、彼女の口元に押し付けた。「若奥様、まずは牛乳を。大奥様がきてくれましたから、もう安心してください。ご飯を食べさせてもらえます」大奥様は眉を顰めた。「これはどういうことなの?!奏はとわにご飯を食べさせないの?こんなにも痩せてしまって!とわを餓死させる気か?」大奥様はこのことで、大いに驚かれた。彼女は今までになかった速さでリビングに行き、息子の責任を追究するために、彼の前に立った。「奏、とわは私の決断であなたの妻になってくれたの。こんなふうに扱われたら、お母さん面目ないわ!」「過ちを犯したら、罰を受けて当然だ。あの女を今まで、放置してやったのは、もう十分にお母さんの気持ちを配慮した結果だ」彼の声はそっけなくて冷徹だった。奏にとって、丸二日何にも食べさせなかったという罰は、とわこの腕を折るよりは、相当に軽い処罰だった。彼女は自分が触るべきではなかったものを触ってしまって、彼の逆鱗に触れたから、簡単に許せるはずがなかったのだ。「過ち?とわには一体何の非がある?」大奥様の知っていたとわこは、大人しくて気の利いた女性で、積極的に奏の顰蹙を買うような愚か者ではなかった。奏は口を閉じて、沈黙で母親に返事をした。「お母さんわかってるの…奏くんが結婚して子育てするのを拒む理由を…お母さんちゃんと知っているから、奏くんがこうやって一人になることが許せないんだ…とわはいい子だよ。愛してやれなくてもいい、お母さんただ奏
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第9話

 前回検査を受けた時には、胎嚢はまだ一つしかなかった。たかが一週間過ぎたというのに、お腹の子が双子になったとは。とわこはカラー超音波検査の結果を手に取り、廊下のベンチに座っていて、ぼうっとしていた。双子を授かる確率は極めて低いと、先生から聞いた。今回妊娠中絶したら、もう二度と双子を授かれない可能性があった。とわこは心の中で、苦く笑った。これは全部、常盤家のプライベートドクターたちの傑作だった。当初、受精卵を移植された時には、双子を産ませるという一言も彼女は聞かされていなかった。もしかしたら、彼らの認識の中での彼女は、最初から最後まで、常盤家に後継を産む道具でしかなかった。彼女は先週の出血を生理だったと勘違いして、話したから、常盤家のプライベートドクターは移植が失敗したと判断したようだった。意識を取り戻した奏は彼女と離婚しようとしていたから、常盤家のプライベートドクターたちも、それ以来彼女のところにこなかった。産むのか、産まないのか、これは全部彼女次第だった。病院で一時間ほど居座ったら、カバンの中の携帯が鳴った。彼女は携帯を取り出して、立ち上がって、病院を出た。「とわ、お父さんがやばいの!早く家に戻ってきなさい!」携帯の向こうから伝わってきたのは、母のかれがれで急かされたような声だった。とわこは一瞬ピンとこなくなった。お父さんがもうダメだって?どうしてこんなことになったの?お父さんが会社のことでストレスを受けて、気病みで倒れて入院したから、自分の結婚式にすら出なかったのは知っていた。しかし、ここまでの重病だったとは。とわこは混乱に陥った。父親が不倫したため、彼女は父親とは親しくなかった。とわこは不倫した父のことを一生許すことができなかっただろう。しかし、突然父が重病だと聞かされたら、心臓が強く刺されたように心が痛むのだった。…彼女が駆けつけた三千院家のリビングは、ひどく荒らされた。母親の美香の後ろについて、彼女も主寝室に入った。ベッドの上で寝ていた父親の三千院太郎は、いつでも息の根を絶ってもおかしくなかったようだった。目を細くしていたその老人は、とわこを目にしたら、彼女に向けて腕を上げた。「お父さん、病気だったら、どうして病院に行かなかったの?」父の冷たい手を握った瞬間
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第10話

 ほんの一瞬で、リビングは心臓の鼓動が聞き取れるほど静まった。部屋に戻ったとわこは、強い力でドアを閉めた。「すぽん」と大きな音がした!別荘ごとがその音につれられて、揺れたような感じがした。常盤奏の別荘でドアスラムしたとは、この女は、肝が据わっていた。野次馬はこっそりと奏の顔色を伺った。本人は涼しい顔をしていて、怒ってはいないようだった。普段なら、彼の前でデシベル60を超えるほどの音を出した人物は、必ず彼の顰蹙を買ったのだった。先のとわこがドワをスラムした音は少なくともデシベル90を超えたというのに、なぜ奏は怒らなかった?それより最も問題になっていたのは、とわこに割られたこの四千万もするワインだった。まだ一口も飲んでいなかった。それをとわこは、躊躇せずに割ってしまったのだ。「そういえば…三千院さんのお父上は一昨日に亡くなられたって聞きましたが、今日は真っ黒な召し物で来ていますし、お葬式のお帰りではないでしょうか」なんとかして勇気を出して、沈黙を破った人がいた。白いドレスの女性は三木直美だった。彼女は、常盤グループ広報部でシニア経理職を努めっていた。今日は彼女の誕生日で、奏が目覚めたのを祝うのをも兼ねて、彼女が奏の友達を誘って、飲みにきたわけだった。つい先に、とわことのやり取りで、彼女は面目まるつぶれだった。奏は表では、黙って顔色一つも変えなかったにいたが、彼がいつ尻を巻いてもおかしくなかったというのは、彼のことをよく知っていた直美には、分かっていた。直美は彼の元に戻って、丁寧に詫びをした。「奏君、申し訳ございません。私、とわこさんのお父上が他界したのを知りませんでした」奏はタバコの吸い殻を灰皿に突っ込んで、火をもみ消した。その細くて長い指は、ついでにワイングラスをとった。彼はその勢いで、中にあったワインを飲み干した。ワイングラスがテーブルに置かれた音とともに、彼の低くてセックシーな声が直美の耳に入った。「誕生日おめでとう」直美の耳元が熱くなった。「ありがとう」「それと、三千院とわこに喧嘩を売って、無事に済むとは思わないように」奏は指を走らせ、シャツの襟を調整した。彼の声には、警告の脅しが含まれていた。「仮に彼女がこの常盤家の飼い犬だとしても、彼女に意地悪できるのはこの僕だけだ」直美の胸が詰
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