似水
1年前、小松里香は記憶を失った男性を道端で見つけ、自宅に連れて帰った。
広い肩幅と長い脚を持ち、ホストになれば一晩で10万元も稼げそうなルックスの男性に、里香は恥ずかしさを抑えつつも電撃結婚を決意した。
それにもかかわらず、記憶を取り戻した男性の最初の行動は、里香と離婚し、家を継ぐことだった。
もう呆れた。
離婚したければそうすればいい。どうせ金持ちでいい男なんて他にもいるし、この人にこだわっても仕方がないでしょう。
離婚届を出したその日、里香の書いた一言が冬木市のビッグニュースとなった。
【相手の体がしっかりしてないため、満足できない】
離婚後、男に囲まれた日々を送っていた里香は、「再婚する気はないの?」と尋ねてきた親友に、
「再婚を持ちかけた方が犬」と嘲笑した。
深夜、鳴り響くスマホを手に取った里香。
「誰だ」
「ワン!」