潔生
写真館でウェディング写真を撮るため、夫の名前を伝えた。
スタッフは笑顔で親切にアルバムを二冊差し出してくれた。
不思議に思いながら一冊を開くと、そこには藤堂凌雅の凛々しい姿が映っていた。
一つ目の写真集では、私が花嫁だった。しかし、彼の表情は冷たくて、明らかに面倒くさそうだった。
そして、もう一つの写真集――花嫁は白石美玲。
凌雅は彼女の隣で、信じられないくらい柔らかく微笑んでいた。
スタッフも驚いた様子で、何度も頭を下げて謝ってきた。
私は気丈に笑いながら答えた。
「大丈夫です。ちょうどいいので、二冊とも持って帰ります。夫がまた来る手間が省けますから」
車に乗り、スマホを開くと、タイミングよく美玲が投稿したばかりのSNSが目に飛び込んできた。
【凌雅さんが「美玲がウェディングドレスを着ると世界一きれいだよ」って言ってくれた♡ 本当に幸せ~♪】
写真には、凌雅が片膝をつき、彼女にハイヒールを履かせている様子が映っていた。
その瞬間、私は全てがどうでもよくなった。
彼らがそんなに愛し合っているのなら、私は身を引こう。