策士な御曹司は真摯に愛を乞う

策士な御曹司は真摯に愛を乞う

last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
Oleh:  水守恵蓮Baru saja diperbarui
Bahasa: Japanese
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事故に遭い記憶を失ってしまった 役員秘書・美雨 親会社の若き副社長・夏芽が 毎日見舞いに来てくれた 雲の上の御曹司 憧れの人 いつも遠くから眺めていただけ 手が届いてはいけない人 ――のはずなのに 「君を一人にしておけない」 退院後、問答無用で同居開始 当然の抗議も、強引なキスで封じ込み!? あまりに横暴で反発心が湧く だけど時折切なげに瞳を揺らす彼に なにも言えない 何故なのか教えてほしいのに 「俺は、嘘しかつけない」 あなたを傷つけてるのは私? 私はなにを忘れてしまったの?

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御曹司は雲の上の人 1

頭の芯、脳の奥深いところで、不快なノイズが走る。テレビでしか見たことのない、遠い昔の活動写真のような不鮮明な映像が、脳裏で再生されていた。途中、何度も白い光に遮断されてシーンが飛ぶせいで、なにかの映画を観ているのか、それとも自分の潜在意識なのか、それすらも曖昧だ。音声は、ひび割れる。女性が声を荒らげているように聞こえるけど、なぜ、誰に対してなのか。そこに割って入った、緊迫した、鋭く低い男性の声には、聞き覚えがある。そのやり取りは、どこか不穏だ。私まで、とても胸が痛い。締めつけられるような苦しみに襲われ……。『……!』なにかを口走った。でも、やっぱり音声は不明瞭で、なにを言ったのか聞き取ることはできない。一瞬、またしても白い光が射し、ノイズと共に映像がぶれた。『……っ……!!』映像が切り替わり、男性が弾かれたように床を蹴って走り出す。それを観ている私の目線は、なんとも奇妙だ。どこか低いところから、仰いでいるような。口と目を大きく開き、切迫して凍りついた表情で、まっすぐ腕を伸ばす男性は、私の視界の中でどんどん遠く、小さくなっていき……。――暗転。なにが起きたんだろう。誰かがすぐそばで、張り裂けるような声で私の名を絶叫している。身体中が痛い、そんな気がする。でも、それを超えた頭と腹部の痛みが、私の意識を遠退かせていく――。...

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御曹司は雲の上の人 1
頭の芯、脳の奥深いところで、不快なノイズが走る。テレビでしか見たことのない、遠い昔の活動写真のような不鮮明な映像が、脳裏で再生されていた。途中、何度も白い光に遮断されてシーンが飛ぶせいで、なにかの映画を観ているのか、それとも自分の潜在意識なのか、それすらも曖昧だ。音声は、ひび割れる。女性が声を荒らげているように聞こえるけど、なぜ、誰に対してなのか。そこに割って入った、緊迫した、鋭く低い男性の声には、聞き覚えがある。そのやり取りは、どこか不穏だ。私まで、とても胸が痛い。締めつけられるような苦しみに襲われ……。『……!』なにかを口走った。でも、やっぱり音声は不明瞭で、なにを言ったのか聞き取ることはできない。一瞬、またしても白い光が射し、ノイズと共に映像がぶれた。『……っ……!!』映像が切り替わり、男性が弾かれたように床を蹴って走り出す。それを観ている私の目線は、なんとも奇妙だ。どこか低いところから、仰いでいるような。口と目を大きく開き、切迫して凍りついた表情で、まっすぐ腕を伸ばす男性は、私の視界の中でどんどん遠く、小さくなっていき……。――暗転。なにが起きたんだろう。誰かがすぐそばで、張り裂けるような声で私の名を絶叫している。身体中が痛い、そんな気がする。でも、それを超えた頭と腹部の痛みが、私の意識を遠退かせていく――。
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御曹司は雲の上の人 2
私を覚醒へと導いたのは、ズキズキとした頭痛だった。なんだろう。片頭痛とか、二日酔いの時の痛み方とは違う。頭の芯から沸いてくるのではなく、外側からじんわりと広がる痛みのようだ。私は、不快な頭痛の原因をぼんやり分析しながら、重い目蓋を持ち上げた。途端に、白い光が、視界に射し込んでくる。眩しさのあまり、眉間に皺を寄せて目を細めた。「う……」無意識に唇から零れた呻き声を、自分の耳で拾った。と、同時に。「美雨(みう)……! 気がついたか」すぐ近くで、ガタンと大きな音がした。私は反射的に目を閉じ、びくんと身体を震わせた。それ以上物音がしないのを確認してから、恐る恐る目蓋を開く。今度は、目を眩ませることもなかった。というのも、私を覗き込む人の身体が、天井からの照明を遮断してくれたからだ。「気分は? どこか痛むところはない?」私に影を落とし、重ねて問いかけてくる男性の姿に、何度も瞬きを繰り返した。さらりとした癖のない黒髪。額に下りた前髪の向こうの、形のいい太い眉。眉根を寄せていて、眉尻がクッと上がっている。ちょっと険しく、鋭く細められた切れ長の目。わずかに下がり気味の目尻が、美しい顔立ちに中性的な印象を含ませる。微かに潤んだ黒い瞳が、なにか不安げに揺れている。切迫して強張っているけど、端整な顔立ちのイケメンだ。私は、その顔をよく見知っていて――。「……えっ?」視界いっぱいに映り込むのが誰かを認識できても、意味がわからない。「か、鏑木(かぶらぎ)さんっ……!?」ギョッとして、裏返った声でその名を叫んでしまった。「なんで鏑木さんがここに。って……」どうして彼が、眠っている私のそばにいるのか。それも十分謎だけど、そもそもここはどこだろう。彼の向こうに見える天井。白い光の発光源は、蛍光灯だった。なにやらとても殺風景で、どう見ても私の部屋ではない。「あの、ここはいったい……っ、痛っ!」慌てて起き上がろうとして、とっさに身体の横についた右腕に、なにか引き攣れたような違和感が走った。「あ! こら、ダメだよ」鏑木さんが短い声をあげて、私の肩を両手で押さえつける。「起きるんじゃない。横になってて」「……え?」眉根を寄せて制止され、私は困惑しながら彼を見つめた。きゅっと唇を結んだ彼に見つめ返され、どぎまぎしながら目線を外して、宙に彷徨わせる。右腕に走った痛みの原因がわかった。私の腕には、なにかの針が
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御曹司は雲の上の人 3
出て行ったきり戻ってこない鏑木さんを、どうしたのかなと気にしているうちに、私はうつらうつらとしていたようだ。「黒沢さん」男性の声に呼びかけられ、ハッとして目を覚ます。無意識にドアの方に顔を向けると、そこから白衣姿の長身の男性が入ってきた。その後に続いた鏑木さんが無言でドアを閉め、その場で足を止める。私の方に歩いてくるのは、白衣のドクターだけ。彼はベッドサイドで立ち止まると、もう一度私を「黒沢さん」と呼んだ。「こんばんは。私はこの病院の脳外科医で、箕輪(みのわ)と申します」丁寧に自己紹介してくれるドクターの胸元には、顔写真入りのネームタグが着けてあって、『箕輪昴(すばる)』と読める。「ご気分いかがですか? どこか痛いところや、おかしいところはありますか?」目元を和らげた、優し気な顔立ちのイケメンドクターが、先ほどの鏑木さんと同じ質問を繰り出してくる。改めて問われてみると、どこがというか、身体中が鈍く痛む気がする。エスカレーターから転落したそうだから、打ち身のせいだろう。素直にそう答えると、箕輪先生は顎を撫でながら相槌を打った。「頭の痛みは? それから、外側ではなく、身体の内部も。お腹が痛いとか、気持ち悪いとかは?」質問につられて、なんとなくお腹に手を当ててみる。「大丈夫……です」首を傾げ、自分に確認しながら返事をすると。「そうですか。よかった」箕輪先生は、ニコッと笑った。「でも、頭部を受傷すると、直後は症状がなくても、後になって異常が出てくることもあるので、念のために精密検査を行います。せっかくだから、全身くまなくしちゃいましょうか。一週間、入院してください」「え。全身? 一週間も……」思わず言葉を挟んだ私に、彼は眉尻を下げて苦笑した。「お仕事が気がかりですか? それなら、あちらの鏑木さんが、心配しなくていいと」そう言いながら、肩越しにドア口を見遣る。彼の視線の動きにつられて、私も鏑木さんに目を向けた。私と先生の視線を受け、彼はなにか硬い表情で、黙って頷く。「鏑木さん……は、ご存じですね?」箕輪先生は私の方に目線を戻し、やや低い声で訊ねてきた。それには、「はい」と返事をする。「私が勤めている会社の、親会社の副社長さんです」「すごい方と面識があるんですね」「面識……というか」私は、箕輪先生の語尾を繰り返しながら、少しだけ首を傾げた。「私はこの春に秘書室に異動して、役員
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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御曹司は雲の上の人 4
入院から、今日で五日。これまで連日、頭部CTやらMRIといった精密検査を受けてきた。『せっかくだから』と勧められ、脳とは関係ない腹部CTやエコーなどもある。一週間で、詰められるだけ詰め込んでるみたいだ。昨日の午前中に脳血管造影と脳波測定を終え、今日、午後になって、箕輪先生が、結果と詳しい説明をしに病室に来てくれた。最初の日に先生が口にした『可能性』――。私は、この一年ほどの記憶が欠落しているそうだ。逆行性健忘……つまり、記憶喪失の診断を受けた。頭を打ったりした後は、よく見られる症状だと言われたけど、『記憶喪失』なんて、ドラマかなにかだけの世界の話だと思っていた。それが、現実で自分の身に降りかかるなんて、信じられない。私自身は、二十六歳になったばかりという認識でいるのに、箕輪先生は『黒沢さんは二十七歳です』と言う。秘書室に異動してまだやっと半年なのに、鏑木さんは『もうすぐ丸二年になる』と言う。寄ってたかって、『私』を否定してるみたい。なんだか、狐に化かされてるようで、現状をすんなり受け入れられない。でも、テレビや新聞、雑誌などを見ると、私の記憶がおかしいのは、認めざるを得ない。なにせ、齟齬がありすぎる。総理大臣が誰かとか、芸能人の誰と誰が結婚したとか離婚したとか……。上書きしなきゃいけない情報が過多になるばかりで、完全に浦島状態だ。こうなると、記憶を失っているという状況を、受け入れるより他なかった。私一人のことなら、名前も勤め先も覚えているし、日常生活にそれほど支障はないと思うけど、いざ、戻るとなったらどうなるのか……。説明を終えた箕輪先生が出て行ってすぐ、まるで入れ替わるように、外からドアがノックされた。「はい」ベッドに足を投げ出して座っていた私は、その上にスマホを置いて返事をした。「黒沢さん、こんにちは。気分はどう?」ドアがスライドして、鏑木さんが入ってくる。「あ。鏑木さん! こんにちは」私は条件反射でドキッと胸を弾ませながら、挨拶を返した。彼は私にニコッと笑うと、躊躇うことなくベッドサイドに歩み寄ってくる。「はい、これ。お見舞い。君が好きなミックスベリーのパイ」どこか悪戯っぽく目を細め、有名な洋菓子店の小さなギフトボックスを顔の高さに持ち上げた。「わ! ありがとうございます!」思わずはしゃいだ声をあげて、彼の手からボックスを受け取った。早速箱を開け、色合いも華
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御曹司は雲の上の人 5
いただいたミックスベリーパイを食べていた時、ドアの前になにか落ちているのに気付いた。「……?」私は首を捻りながら、そっとベッドから降りた。スリッパを足の爪先に引っかけ、カーディガンを胸元に手繰って掴んで、ドアの前まで歩いていく。なんとも高級感漂う万年筆だ。胴軸はシックなダークブラウンで、拾い上げてみると上品な重みを感じる。もちろん、私の物ではない。午後になってここに来た、箕輪先生か鏑木さんの物に違いない。鏑木さんは帰ってしまったし、まずは箕輪先生に確認してみようと思い、万年筆を手に病室を出た。ちょうど、廊下がT字に交わる位置に、大きな姿見が据えてある。何気なく覗き込んだ私は、鏡に映った自分を確認して、がっくりとこうべを垂れた。今日も鏑木さんが来てくれるかも……と予想して、午前中の検査が終わった後、入院患者として不自然じゃない程度に、薄いメイクを施したけれど……。「もっとしっかりメイクでも、よかったかも……」普段、オフィス仕様の私しか知らないはずの鏑木さんにとって、今の私は相当貧相に映ったはずだ。ベースメイクしかしていないせいで、もともと凹凸に乏しい顔立ちが、ますます地味に見える。ちょっと大きめの丸い目は、普段なら辛うじてチャームポイントだけど、マスカラとアイライン無しだと際立たない。形は悪くないけど高くはない鼻と、下唇の方がやや厚めの小さな唇は、可もなく不可もない。なにを取っても平均すれすれの顔が、ますます冴えない。茶色くカラーリングした髪は、肩甲骨を覆う長さ。パーマっ気はなく、オフィスではダウンスタイルだけど、入院中の今は、頭の後ろ、ちょうど中間くらいの高さで一つに結んでいる。それがまたひっ詰めた印象を強め、女らしさにはほど遠い。それでなくても、病院から貸し出してもらってるツーピースの病衣と、カーディガンという服装……。「明日はちゃんと、身支度しておこう……」肩を落として鏡の前から離れ、先に進んだ。ナースステーションまでの廊下の途中に、病院関係者が『サンルーム』と呼んでいる談話スペースがある。「……ん?」そこから鏑木さんの声を聞こえた気がして、足を止めた。『次の予定が迫っている』と言ってたのに、大丈夫なんだろうか?私は、少しだけ廊下を小走りして……。「鏑木さ……」「美雨になんの用だ。帰ってくれないか」聞いたことがないくらい、冷たく低い鏑木さんの声が耳に飛び込んで
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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横暴すぎる同居命令 1
入院から一週間。予定通り退院許可が下り、朝食後、私は身支度を始めた。突然の事故で救急搬送され、そのまま入院した私の荷物は少ない。必要に駆られて売店で購入した下着や洗面、入浴用品に化粧水くらいで、紙袋一つに収まっている。搬送された時身につけていた服は、鏑木さんが持ち帰り、クリーニングに出してくれていた。おかげで、どうってことないニットとロングスカートが、まるで新品のように綺麗に畳まれ、透明な袋に入っている。退院して仕事に復帰して、次に彼が来社されたら、きちんとお礼をしないとな……。ドアの向こうの廊下には、患者さんのケアに回る看護師が行き交っている。賑やかな話し声や物音を聞きながら着替えを済ませ、髪を後ろで一つに纏めた時、「黒沢さん。箕輪です」ノックと同時に、声がした。「はい。どうぞ」私が応答すると、ゆっくりドアがスライドして、箕輪先生が入ってきた。彼は、「あれ」と目を丸くする。「もう出発ですか? 早いですね」「先生、一週間お世話になりました。私の方から、ナースステーションに伺おうと思ってたんですけど」ペコリと頭を下げて挨拶すると、先生は「いいえ」とはにかんでから、人差し指でポリッとこめかみを掻いた。「鏑木さんを、待たなくていいんですか?」「え?」「十時頃、迎えに来ると言ってましたけど……」そう言いながら、白衣の袖からゴツい腕時計を覗かせる。私も、自分の左手首の時計に目を落とした。現在、九時十五分。この後、入院費の精算をして、薬局で薬をもらって……やることを全部済ませても、鏑木さんが来る前に、病院を出るのは可能と計算していた。「ええと……この後、会社の方にも挨拶に行こうと思っているので」私はぎこちなく笑って、コートに袖を通した。「申し訳ありませんが、鏑木さんがいらしたら、私が謝っていたと伝えていただけませんか」「それは構いませんが……」箕輪先生は顎を撫でながら、なにか思案顔をする。「今日会わなくても、業務上、顔を合わせる機会はあります。その時直接、これまでのお礼をするつもりです」私が言葉を重ねると、先生も何度か頷いてくれた。「わかりました。では、お気をつけて」背筋を伸ばし、姿勢を正して言ってくれる先生に、私も「はい」と返事をする。「退院しても、しばらくの間は、指示通りに通院してくださいね。なにか異常があれば、予約がなくても、すぐに来てください」「はい。お世話になりまし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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横暴すぎる同居命令 2
駐車場に入ると、鏑木さんは出入口近くに停めてあった黒いベンツのドアを開けた。右の座席。国産車なら運転席だけど、外車だから助手席だ。「どうぞ。乗って」なんとも優雅な仕草でエスコートされて、否が応でも胸が弾んでしまう。「あ、ありがとう、ございます……」なにに気圧されたのか、私はすっかり抵抗を忘れて、シートに腰を下ろした。鏑木さんは私が乗るのを確認して、静かにドアを閉めると、車のフロントを回って、左側、運転席に乗り込む。助手席との間から後部座席に軽く身を乗り出し、私の荷物をそこに置くと、シートベルトを締めてエンジンをかけた。「黒沢さん。君も、シートベルト締めて」なんとなく彼を目で追っていて、当たり前のことを失念していた私を、短く促す。「! は、はい」焦ってシートベルトを締める私の隣で、鏑木さんはブレーキを解除してアクセルを踏み込んでいた。駐車場内は徐行運転して、やがて広い公道に出ると、車はグンと加速する。シートに背を吸い寄せられる感覚に身を委ね、私はそっと彼の横顔を窺った。――本当に、意味がわからない。私が思う以上に、彼は強い責任を感じているのかもしれないけど、それにしたって。いつも忙しい鏑木ホールディングスの副社長が、私の退院に合わせて、わざわざ休暇を取ってまで迎えに来てくれるもの……?無意識に唇を結び、首を傾げながら、私はハッと我に返った。いや……わざわざ、とかじゃなくて、ただの偶然に決まってるじゃない。きっと鏑木さんは、もともと休暇を取っていて、それにたまたま私の退院が重なっただけ。勘違いも甚だしい。なにを自惚れてるんだ、私は。――でも。私を『美雨』と名前で呼んだ、薄い男らしい唇に目が行ってしまう。思わずきゅんとした次の瞬間、脳裏を過ぎったのは、網膜に焼きついている、『多香子さん』と鏑木さんがキスをしていた光景……。「っ!」私は反射的に目を逸らし、彼に向けていた視線を正面に戻した。すると。「くっ……」小さくくぐもった笑い声に耳をくすぐられ、「え?」今度は窺うんじゃなくて、しっかりと運転席の彼に顔を向けた。「いや、ごめん」鏑木さんはまっすぐ進行方向を見据えたまま、ハンドルから離した右手で口元を覆い、小気味よく肩を動かしている。「さっきから、俺のなにを観察してるのかって、気になってね」くっくっと声を漏らして笑いながら、どこか意地悪に横目を流してくる。「そうかと思うと、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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横暴すぎる同居命令 3
鏑木さんが運転するベンツは、国際色豊かな赤坂の街をひた走っていた。車窓を流れるのは、世界中で展開しているホテルグループの大型ホテルや、スタイリッシュな高層ビル。フロントガラスの向こうに、東京タワーのてっぺんが見える。三車線の広い国道は、観光バスや大型トラックも多く走行している。時折派手なクラクションが響き、なんとも騒々しい。ところが、一本逸れて脇道に入ると、意外にも緑豊かな住宅街だった。大通りの喧騒が嘘みたいな、閑静な街並み。赤坂周辺には、世界各国の大使館が建ち並んでいるため、外交官など、ハイソサエティな外国人居住者が多い。文化、著名人の家も多数あり、セレブ感漂う高級住宅街。一際高く聳えるタワーマンションの横で再び道を曲がり、鏑木さんは地下に向かうスロープに車を滑り込ませた。地下に広がる駐車場で車を停め、居住フロア直結のエレベーターに乗り込む。彼の部屋がある三十階まで、もちろんノンストップ。降り立ったエレベーターホールは、どこかのランドマークタワーの展望デッキのようだった。全面ガラス張りになっていて、東京の街並みを一望できる。予想通り、ではあるけど、あまりにもゴージャスなマンション。ここまでですでに度肝を抜かれ、ポカンとしていた私を、「黒沢さん、こっち。どうぞ」鏑木さんが、一つのドアの前で、手招きした。「あ、はいっ……」スマートにカードキーで開錠してドアを開け、私を玄関先に誘ってくれる。ここでもジェントルマンなエスコートにドキドキして、私は変な汗を掻きそうになりながら、玄関に入った。鏑木さんは私の背中で施錠すると、スリッパを勧めてくれた。自分は先に廊下に上がり、ズンズン奥に進んでいく。玄関先とは思えないほど広い廊下を、私は妙に縮こまって、彼の背を追った。そして、辿り着いた先、視界いっぱいに飛び込んできたのは――。「……っ」開放感溢れる、広々としたリビングだった。壁一面窓ガラスになっていて、エレベーターホールと同じく、東京の街が広がる。『TOP OF THE WORLD』という言葉が、頭にポッと浮かんだ。「うわあ……」無意識に一歩踏み出し、そこで足を止めて、大きく見渡す。絶対上質で一級品に違いない家具は、ダークブラウンと白を基調に統一されていて、なんとも言えずシックで落ち着いた空間。リビングの片隅に六畳ほどの和室があるのも、和風モダンでセンスがある。その逆サイドに、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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横暴すぎる同居命令 4
「すみません。この間、お二人が病院のサンルームでお話してたところを、見てしまいました」何故だか後ろめたい気分になって、今度は私が目を逸らした。「話も聞きました。でも、いったいなんのことだかわからず……」言い訳みたいに続ける途中で、鏑木さんは口元に手を遣って顔を背けていた。きっと、私が、二人のキスシーンを見たことに、合点したのだろう。だけど私は、構わず畳みかける。「余計な情報、でしょうか。彼女は、私のことを……私がエスカレーターから転落した経緯も、ご存じのようでした。だったらむしろ、お会いしたいです」「っ……」鏑木さんが、弾かれたように顔を上げた。彼の強張った表情に、私も一瞬怯む。だけど……。「ダメだ」鏑木さんが、私の肩をぎゅっと掴んだ。「痛っ……」指が食い込むほどの強い力に、私は片目を瞑って顔を歪めてしまう。「ダメだ。多香子には、絶対に会わせられない」鏑木さんは、苦い口調で繰り返す。そんな彼を、私は上目遣いに見据えた。「だったら、鏑木さんが教えてください」なんとか虚勢を張って言葉を重ねると、鏑木さんは息をのんだ。「一番詳しく知っているのは、きっと鏑木さんです。だから……」勢いに任せて口走る私の肩を、グイと引き寄せる。私に落ちる彼の影が色濃くなった、次の瞬間……。「!?」鏑木さんが背を屈め、私の唇を奪った。唇に強引に重ねられる温もりに、大きく目を見開く。ひゅっと喉の奥を鳴らし、そのまま息を止めた。近すぎて輪郭がぼやける鏑木さんの顔が、私の視界を覆い尽くしている。言いかけた言葉の先はのみ込まれ、代わりに、私と彼の舌が絡まる、くちゅっという淫らな水音が零れた。「っ……やめてっ……!」抗いようもなく吸い込まれる……そんな感覚に怯え、私は必死に首を捩じって、彼の唇から逃げた。無我夢中で両手で厚い胸板を押して、身体の間隔を開く。「い、いきなり、なにを……」無意識に手の甲を唇に当てた私に、「俺は、嘘しかつけない」鏑木さんは、苦しげに顔を歪めた。「っ、え?」想像もしていなかった返事で、私は言葉に詰まった。「君が忘れているのをいいことに、事実を捻じ曲げたことしか教えられない。それは、俺にとっても本意じゃない」「え……」私から顔を背け、睫毛を伏せる横顔が切なげで、それ以上問うことができない。「知りたければ、自分で思い出して。他人の言葉に導かれることなく、自分で」どこか突き放した言い方
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-04
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煽られる胸の鼓動 1
リビングで鏑木さんを見つけられず、私は闇雲に走り回った。まだ、どこになんの部屋があるかもわからないから、彼の名を呼びながら、片っ端からドアをノックして回っていると。「黒沢さん、こっち」リビングの奥、螺旋階段の中ほどまで降りてきた鏑木さんが、ひょいと身を乗り出していた。私は反射的に大きく顔を上げて、彼を仰ぐ。「どうしたの。賑やかだね」きょとんとした顔で首を傾げるのを見て、急いで螺旋階段を上った。「か、鏑木さんっ……!」「俺の書斎とメインベッドルーム、この上にあるんだ。在宅中はリビングにいなければ上にいるから、そんなに捜し回らなくていいよ」「あのっ! 服。し、下着……!」鏑木さんの説明に反応する余裕もなく、私は息を切らして、自分の言いたいことだけ口にした。「え?」「服はともかく……どうして下着のサイズまで完璧なんですか!?」息を乱し、慌てふためいて質問をぶつける私に、彼はパチパチと瞬きをして……。「完璧だった? それならよかった」「よかった、じゃなくて、意味不明です!」私は真っ赤な顔で言い募る。さすがに鏑木さんも、私の勢いの前で、わずかに背を仰け反らせた。そして。「……くっ」小さく吹き出し、肩を揺すって笑い出す。「俺が君の下着のサイズを知ってたら、そんなに不思議?」からかい混じりに言われて、私はさらに顔を火照らせた。「当たり前です! だって、どうして……」「服のサイズと、目測からの判断。それ以外、答えようがないかな」口元に手を遣って、愉快気にくっくっと声を漏らす彼に、私は呆気に取られてしまった。それだけで、ブラのサイズまで見抜けるもの?私はまだ不信感を拭えず、無意識に自分の胸元を見下ろした。だけど、鏑木さんまで同じところに視線を向けているのに気付き、「……っ!」反射的に両腕で胸を抱きしめ、彼の視線から隠した。「そ、そういうことなら、納得します。えっと……ありがとうございました!」なんだか、私のすべてを透視されているような、妙な感覚に陥る。私は慌てて彼に背を向け、中ほどまで上ってきた螺旋階段を駆け下りようとして……。「っ……美雨っ」弾かれたような、鋭い声。同時に強く肘を引かれて、一段下りただけで振り返った。「鏑木さん……?」見上げた彼が、顔を強張らせているのに怯み、おずおずと呼びかける。鏑木さんは、ハッとしたように息をのみ、私から手を離した。「っ、ごめん。つい……」大き
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