新妻はエリート外科医に愛されまくり

新妻はエリート外科医に愛されまくり

last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-13
Oleh:  水守恵蓮On going
Bahasa: Japanese
goodnovel16goodnovel
Belum ada penilaian
44Bab
64Dibaca
Baca
Tambahkan

Share:  

Lapor
Ringkasan
Katalog
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi

各務颯斗(34)心臓外科医 × 仁科改め各務葉月(30)元医局秘書 エリート心臓外科医に愛されまくり 夢のような新婚生活のスタート 夫婦になった二人が望むのは可愛いベビー ところが葉月は 妊娠しにくい可能性を指摘され……? *+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。 『エリート外科医の一途な求愛』 新婚続編 今作だけでお楽しみいただけます *+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。:+**+:。.。

Lihat lebih banyak

Bab terbaru

Pratinjau Gratis

結婚、幸せの絶頂に暗雲 1

爽やかな秋晴れに恵まれた、十月の土曜日。 日本では縁起担ぎで、多くの人が人生の門出の日に選ぶ、大安吉日。 私は、今日、結婚式を挙げた。 ここは東京のアクアフロント、お台場にある超高級ホテルのチャペル。 ドアが両側に開いた途端、視界をパアッと薄紅色に染めたライスシャワーが、ひらひらと宙を舞って地面に落ちる。 チャペルの前には、鮮やかな庭園が広がっている。 このホテルの売りでもある、色とりどりの花々が咲き誇るヨーロピアンガーデンに、参列者たちが待ち構えていた。 「おめでとう! 葉月(はづき)、とっても綺麗……!」 「各務(かがみ)、幸せにな〜!!」 昔からの友人たちが、口々に祝ってくれる中。 純白のウェディングドレスに身を包んだ私を、スマートにエスコートしてくれる彼を見上げた。 彼……各務颯斗(はやと)も、同じタイミングで私を見下ろしていて、宙で視線が絡み合う。 私たちは、思わず「ふふっ」と笑い合った。 と、そこに。 「各務ー! 浮気すんなよ〜!」 からかい混じりの声がして、私たちを囲んだ人たちが、ドッと笑う。 どうやら、今のは、颯斗の中学時代の悪友のようだ。 彼はその方向に顔を向けて、「しねーよ、バーカ!」と苦笑いで返している。 結婚式の主役、新郎の一言が、さらに参列者たちの笑いを取った。 颯斗はほんのり頬を染めて、「まったく」と独り言ちた。 ちょっと乱暴に、ガシガシと頭を掻く。 今日の彼は、白いタキシード姿。 いつもは額に下ろしているサラサラの前髪を、後ろに流している。 少しセットが崩れて、形のいい額に一房落ちた。 私は、そんな彼にもクスッと笑った。 遠くに見える青い海に浮かぶ船の汽笛が、チャペルの尖塔の鐘の音に混じって、鼓膜をくすぐる。 潮の香りを運んでくる柔らかいそよ風に、頭に着けたヴェールがふわりと舞う。 無意識に頭に手を遣った時、視界の端に、よく知る顔ぶれが揃っているのが映り込んだ。 「あ、颯斗」 私は、彼の腕にかけた手にキュッと力を込めた。 それに気付いた颯斗が、私の促す方向に顔を向ける。 『あ』という形に、口を開いた。 私は、それを横目に、彼から手を離す。 そちらに向けて、やや小走りで歩を進めた。 そして、左手のウェディングブーケを、一度両手で持ち直す。 花嫁の、ブーケトス。 本...

Buku bagus disaat bersamaan

Komen

Tidak ada komentar
44 Bab
結婚、幸せの絶頂に暗雲 1
爽やかな秋晴れに恵まれた、十月の土曜日。 日本では縁起担ぎで、多くの人が人生の門出の日に選ぶ、大安吉日。 私は、今日、結婚式を挙げた。 ここは東京のアクアフロント、お台場にある超高級ホテルのチャペル。 ドアが両側に開いた途端、視界をパアッと薄紅色に染めたライスシャワーが、ひらひらと宙を舞って地面に落ちる。 チャペルの前には、鮮やかな庭園が広がっている。 このホテルの売りでもある、色とりどりの花々が咲き誇るヨーロピアンガーデンに、参列者たちが待ち構えていた。 「おめでとう! 葉月(はづき)、とっても綺麗……!」 「各務(かがみ)、幸せにな〜!!」 昔からの友人たちが、口々に祝ってくれる中。 純白のウェディングドレスに身を包んだ私を、スマートにエスコートしてくれる彼を見上げた。 彼……各務颯斗(はやと)も、同じタイミングで私を見下ろしていて、宙で視線が絡み合う。 私たちは、思わず「ふふっ」と笑い合った。 と、そこに。 「各務ー! 浮気すんなよ〜!」 からかい混じりの声がして、私たちを囲んだ人たちが、ドッと笑う。 どうやら、今のは、颯斗の中学時代の悪友のようだ。 彼はその方向に顔を向けて、「しねーよ、バーカ!」と苦笑いで返している。 結婚式の主役、新郎の一言が、さらに参列者たちの笑いを取った。 颯斗はほんのり頬を染めて、「まったく」と独り言ちた。 ちょっと乱暴に、ガシガシと頭を掻く。 今日の彼は、白いタキシード姿。 いつもは額に下ろしているサラサラの前髪を、後ろに流している。 少しセットが崩れて、形のいい額に一房落ちた。 私は、そんな彼にもクスッと笑った。 遠くに見える青い海に浮かぶ船の汽笛が、チャペルの尖塔の鐘の音に混じって、鼓膜をくすぐる。 潮の香りを運んでくる柔らかいそよ風に、頭に着けたヴェールがふわりと舞う。 無意識に頭に手を遣った時、視界の端に、よく知る顔ぶれが揃っているのが映り込んだ。 「あ、颯斗」 私は、彼の腕にかけた手にキュッと力を込めた。 それに気付いた颯斗が、私の促す方向に顔を向ける。 『あ』という形に、口を開いた。 私は、それを横目に、彼から手を離す。 そちらに向けて、やや小走りで歩を進めた。 そして、左手のウェディングブーケを、一度両手で持ち直す。 花嫁の、ブーケトス。 本
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-11
Baca selengkapnya
結婚、幸せの絶頂に暗雲 2
披露宴を終えて、友人たち主催の二次会まで参加して、私たちがホテルの部屋に戻った時、午後十時半を回っていた。 そして、迎えた、結婚初夜――。 アメリカで、一年間の同棲生活を経ての結婚だ。 『結婚初夜』なんて言っても、気分的に、いつもとちょっと違うだけ。 いつだって、颯斗に抱かれると幸せだし、甘く蕩けてしまいそうになることに、変わりはない。 そう思っていたのに。 お互いに、よく知り尽くした身体。 触れ合って、どんな反応をするかも、予想できる。 なのに、肌に馴染んだ体温に、彼の指や唇の感触に、なぜかいつもよりも、猛烈にドキドキして……。気怠い微睡み、覚醒に向かう途中から感じていた、心地よい温もり。 一夜明け、同じベッドで目覚めてみると、すごく特別な朝を迎えた実感が湧いた。 今、私の身体に回っている、彼の逞しい腕。 その左手の薬指には、私とお揃いのマリッジリングが嵌められている。 二人で選んだ、シンプルなデザインのプラチナリングを目にしただけで、私の胸はとくんと淡い音を立てて跳ねた。 ああ――。 私、本当に颯斗と結婚したんだなあ……。 なんだか感無量で、気恥ずかしくて、ほんの少し身を縮めた。 と、同時に、私を囲っていた腕に、グッと力がこもる。 「おはよう。葉月」 「っ」 彼のサラサラの前髪に、頬をくすぐられる。 薄い男らしい唇が耳を直接掠めて、私はドキッとして身体を固まらせた。 「……どうした?」 私の反応に、颯斗がやや訝しげに訊ねてくる。 「お、おはよう。颯斗」 慌てて強張りを解き、肩越しに挨拶を返す。 目が合うと、颯斗は綺麗な切れ長の目を細めて、ふんわりと微笑んだ。 「ん」 短く頷いて、背中半分の長さがある、緩く波打つ私の髪に指を通した。 後頭部に回った大きな手に誘われ、軽く触れるだけのキスを交わす。 唇を離すと、 「……んーっ」 颯斗が、私をぎゅうっと抱きしめた。 「わっ。颯斗」 彼の引き締まった逞しい胸板に、顔をムギュッと押しつけてしまい、私の心臓はドクッと跳ねる。 頭上から、クスクスと愉快げな笑い声が降ってきた。 「感無量……」 「え?」 一瞬、心の内を見透かされたのかと思った。 「結婚して、一日目の朝。やっと葉月が、全部俺のものになった。これから先はずっと、俺の人
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-11
Baca selengkapnya
結婚、幸せの絶頂に暗雲 3
今回は挙式のための帰国で、滞在期間は四日間と短い。初日は夕刻に到着し、二日目の昨日は結婚式。明日はもうアメリカに発つ。でも、三日目の今日は一日オフ。颯斗とは、別行動の約束をしていた。結婚式の日取りと日本滞在の日程が決まった時、彼が、『大学時代の恩師に結婚と近況報告に行くついでに、仲間に会っておきたいんだ』と言うのに、もちろん異論はなかった。颯斗は三十四歳、私は四つ違いの三十歳。お互いに、今まで築いてきたバックグラウンドがある。久しぶりの日本だからこそ、行きたい場所があるし、会いたい人がいて当たり前。「行ってらっしゃい」ノーカラーのシャツにジャケットを羽織り、外出の支度を終えた颯斗に、そう声をかけた。「夕方には帰って来れる。葉月も戻れるなら、夕食は一緒にしよう」彼は私の頭をポンと叩いて、ホテルの部屋から出ていった。パタンと音を立ててドアが閉まるまで見送って、私は肩を動かして息を吐く。「さて。私も行こうかな」私は午後から人間ドッグを受けるつもりで、予約していた。どうして、せっかくの帰国時、しかも結婚式翌日に人間ドッグなんて……と言うと、私の英語力が一向に上達しないせいだ。この春から語学学校に通って英会話を勉強しているし、家で颯斗に教えてもらったりもするのに、脳が語学に向いていないのか、怖いくらい身に着かない。アメリカで病院に行って、現地人ドクターの診察を受けても、流暢に相談できる自信はまったくない。体調が悪い時なんかは、颯斗が勤務する大学医学部付属病院に行けば、彼が便宜を図ってくれる。でも、日本にいた頃以上に忙しいのを知っているから、病気じゃなく緊急性がない時に、手を煩わせたくない。となると、日本滞在中、颯斗と別行動の今日がベストだった。メイクをしようと、バスルームの大きな鏡の前に立つ。結婚式は昼間だったから、食事制限もちゃんとクリア。体調に問題はない。でも、昨夜は結婚初夜だったし、颯斗は朝から求めてくるし……。疲れた顔をしてるかと思いきや、意外や意外。妙に肌が潤っているのに、自分でも驚いた。二重目蓋の大きな目には、落ち着いたブラウン系のアイシャドウを入れる。高くはないけど形のいい鼻。下唇がちょっとぽってり厚く、口紅はヌードカラーでも映える。それぞれのパーツがしっかりしていて、わりとバランスがいいから、普段はノーメイクでもぼんやりした顔にならないのがありがたい。その上
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-11
Baca selengkapnya
結婚、幸せの絶頂に暗雲 4
すべての検査を終えて、診察室で女性ドクターと向き合った時、私はさすがに疲れていた。「各務葉月さんですね。あら、アメリカにお住まいですか」受診手続き時のカルテに目を通したドクターが、ふっと顔を上げた。「なんでわざわざ、日本で健診なんて」「私、英語がからきしで……アメリカで診察受けるの、ちょっと自信なかったので」苦笑交じりに説明すると、ドクターは「なるほど」と相槌を打った。「それで、一気にこんなに検査受ける羽目に……大変でしたね」私を労いながら、デスクの前のシャーカステンに目を向けた。そこには、レントゲンやCTの画像フィルムが貼ってある。「肺、胃、脳に、画像から判断できる所見はありません」ドクターは、ポインターで示しながら簡単に説明してくれた。ホッと安堵する私の前ですべてのフィルムを外し、新しい物を挿し込む。「これは、婦人科で撮った、腹部エコー。各務さん、新婚さんですね。ブライダルチェックは受けられましたか?」「え?」思わず聞き返したものの、すぐに結婚前の妊娠チェックのことだと合点する。「いえ。受けてません」「婦人科系で、今まで気になることもなかった、ということですか」「はい。多少周期が狂ったり、生理痛があるくらいで」そう答えると、ドクターは「そうですか」と肩を竦めた。その表情が、どこか険しくも見えたから、私は恐る恐る身を乗り出した。「あの。なにか、おかしなところでも……?」シャーカステンのフィルムを見ても、私にはなにがなんだかわからない。私の視線を追うように、ドクターもそこに目を向けた。「子宮や卵巣にも、これと言った所見はないんですが、一度詳しい検査をされることをお勧めします。……もしかしたら各務さん、妊娠しにくい可能性が」「……え?」心臓が、ドクッと嫌な音を立てて沸いた。大きく目を丸くして、その先を求めてドクターを見つめる。「新婚さんということですし。お子さん、お望みですよね?」「は、はい……」困惑しながら、頷いて返す。ドクターも、理解を示すように首を縦に振った。「今のところ、可能性としか言いようがありません。ですが、どちらにしても、精密検査は早いに越したことはありませんよ」滔々と説くように告げる声が、何故か遠くなっていく。『俺たちの最初の子は、男の子がいいな』渡米後初めて帰国した時、颯斗は私の両親に挨拶してくれた。帰りの飛行機で、彼が言った言葉が、胸に蘇ってく
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-11
Baca selengkapnya
結婚、幸せの絶頂に暗雲 5
病院を出た時、東京の空は夕焼けに染まっていた。左手首の腕時計に目を落とすと、午後五時半を指している。人間ドッグを受けるために、朝からなにも食べていない。胃は空っぽのはずなのに、全然空腹を感じない。それどころか、胸焼けすら覚えた。無意識に胃を摩りながら、川沿いの通りを駅に向かってとぼとぼ歩く。ふと顔を上げると、遠くに東都大学医学部附属病院のヘリポートが見えた。なんとなく眺めながら足を止め、橋の欄干にもたれかかる。少し身を乗り出して眼下の川の水面を見つめ、「はーっ」と大きな溜め息をついた。今日の診断結果は、二週間ほどでフィラデルフィアの自宅に送ってくれるそうだ。当たり前だけど、今日の今日で確定診断が出るわけがない。だけど――。『各務さんの生理痛の原因としては、子宮内膜症の可能性があります。こちらは生化学検査の結果ですが、三十歳で生理周期が不規則という点からも、プロラクチンがやや高いのが気になります」パソコン画面で、生化学検査の結果を見せてもらった。異常を示すアスタリスクがついていたけど、私はそれをどう読めばいいのかわからなかった。質問を挟んでみると、プロラクチンは、別名乳汁分泌ホルモン。ブライダルチェックでは、必須の検査項目。この数値が高いと、妊娠しづらいという診断に繋がるという。『幸い、各務さんまだお若いですし、治療も有効ですよ。今回の確定診断と一緒に、英文紹介状をお送りしますので、アメリカで検査されてはいかがでしょう』機械的に頷いたものの、私の思考回路はまともに働いてくれなかった。紹介状。アメリカで、検査。本当に私は、妊娠しにくい可能性があるの――?子供を望み、避妊せずにごく普通の夫婦生活をしていれば、一年で九割の夫婦が授かるそうだ。それでも妊娠の兆候がない時、初めて不妊症が疑われる。『ですが、結婚前提で一年同棲されていたなら、ある意味、普通の夫婦生活と同じ状況下にあったとも言えます。旦那様にもご確認された方がよろしいかと』つまり――。颯斗に、今まで毎回避妊していたかどうか確認しろ、ということだ。一年の同棲期間、『普通の夫婦生活』と同様の状態にあったなら、私はすでに不妊症と定義づけられるのかもしれない。言われた通り、一刻も早く産婦人科に駆け込むべきなんだろう。だけど……だからと言って。「今さらそんなこと、どうやって聞けって……」お腹の底から深い息を吐いて、欄干に額を
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-12
Baca selengkapnya
結婚、幸せの絶頂に暗雲 6
その夜――。「ええと……葉月?」私に引き締まった背中を向けた颯斗が、ぎこちなく振り返った。訝し気な瞳に、私もギクッと身体を強張らせる。「な、なに?」「いや、なに?じゃないだろ。なんでそんなに、俺がゴムつけるの、ガン見してんの?」「……っ!」彼の不審はごもっともだ。私は、なんでこんなまじまじと、颯斗が避妊具をつけるのを確認してるんだか……!!「ご、ごめんっ」慌てて彼の背中から離れ、勢いよくベッドに突っ伏した。「別に謝らなくてもいいんだけど。さすがに、そこまでジッと見られると、俺も恥ずかしいって言うか……」苦笑交じりの声に、居た堪れない思いに駆られる。「早く……って、急かしてた?」揶揄するような言葉と同時に、颯斗が私の肩をぐいと掴む。「そんなんじゃ……」「ふふ。ほら、お待たせ」「っ、あっ……!」強引に身体を上に向けられ、次の瞬間、彼が私の中に一気に入ってきた。「んっ……颯斗っ……!」容赦なく最奥を攻められ、身体がビクンと痙攣する。堪らず、彼の首に両腕を回して抱きついた。「ああ……君の中、いい」颯斗が私の耳元で、熱い吐息を漏らす。その、気怠げでしっとりした声に、私もゾクッと背筋を震わせた。「愛してる。葉月……」颯斗は、なにか絞り出すように、切なげに呟いた。中を掻き混ぜるみたいに、ゆっくり腰を動かし始める。「あっ、んっ……颯斗、颯斗っ……」縋るように呼びながら、私は心のどこかでホッとしていた。結婚したのに。私がなにも言わなくても、彼はごく普通に避妊した。だからきっと、聞くまでもない。今までも、それが当たり前だったはずだ。結婚前提で同棲していて、子供ができても困らなくても、まだ結婚前だから。こういうけじめは、ちゃんとつけてくれる。そうよ。颯斗はそういう人。それなら、私はまだ一般的に不妊症と定義づけできる状況ではない。焦ることじゃない。ただ、少しだけ、頭に留めておいた方がいいというだけ。自分にそう言い聞かせて、私は彼に愛される悦びに身を震わせた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-12
Baca selengkapnya
命を繋ぐ彼の手 1
フィラデルフィアに戻ってきて、最初の語学学校の授業が終わった。私は、週に二日、初級クラスを受講している。結婚式で日本に戻っていたのもあり、今週初めは欠席した。そのおかげで、今日の授業もついていけなかった。いや、ついていくどころか、確実に遅れを取っている……。ニットの上から、トレンチコートを羽織る。デニムをインしたブーツの踵を鳴らして、教室を出ると同時に、無意識に溜め息が漏れる。「はあ……」すごすごと廊下を歩き出すと、後ろから「葉月さ~ん!」と声をかけられた。同じクラスの日本人男性が、こちらに走ってくる。「お疲れ様、学(まなぶ)君」そう返すと、彼は私の目の前まで来て、ピタッと立ち止まった。学君……鈴木(すずき)学君は、私と同時期にこの語学学校に入学した、いわゆる『同期』だ。と言っても、三十歳の私と違って、彼は二十二歳の大学生。底抜けに明るく人懐っこい性格もあって、私よりずっと上達が早い。「やっと帰ってきたと思ったら。なんか、死んじゃいそうに暗~い顔してますよ」無邪気に揶揄されて、私は「はは」と乾いた笑い声で返す。「死んじゃいそう、か」彼の言葉を反芻して、再び先に歩き始めた。「先生に当てられて、とんちんかんな返事したことなんか、気にしなくても。俺たち、初級クラスなんだし。今のうちに目いっぱい掻いときましょうよ、赤っ恥」人の気も知らずに、随分と軽い調子で笑い飛ばしてくれる。いつもなら、羞恥のあまり憤慨するところだけど……。「そのくらいじゃ死なないよ」苦笑で返して、先を急ぐ。「えー」と、学君が後からついて来た。「じゃあ、日本でなにかあったんですか?」隣に並んだ彼にツッコまれ、私は返事に窮した。学君は、答えを待って瞬きをしている。「……なんにもない」私はふいっと顔を背け、意識して歩を速めた。「ちょっ……葉月さん」それでも、彼は私を追ってくる。「先週日本に帰国してたのって、結婚式挙げるためでしょ?」そう言いながら、いきなり私の左手首を掴んだ。「きゃっ……!」「旦那さん、医者でしたっけ。これ、マリッジリングでしょ。さっすが~。シンプルだけど、いかにも高級そうで、神々しいったら。授業中、光が反射してましたよ」「ちょっ……やめて」私は慌てて手を引っ込めた。学君は悪びれずに、「へへへ」と笑っている。「新婚ホヤホヤってヤツでしょ? 相当浮かれてんだろうな~と思ってたのに。逆に暗いから、心
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-12
Baca selengkapnya
命を繋ぐ彼の手 2
寄り道せずにまっすぐ帰ってきたおかげで、いつもの倍、四人分の夕食も余裕を持って支度できた。今日は、颯斗にオペの予定はない。帰宅時間が読みやすいのもあり、彼のアメリカでの同僚、ブラウン博士夫妻をホームパーティーに招いていた。午後七時。二人は颯斗の車で、病院から一緒にやって来た。「こんばんは、ハヅキ。お招きありがとう」シックなダークグリーンのイブニングドレスに身を包んだメグさんが、相変わらず流暢な日本語で挨拶してくれた。透き通ったエメラルドのような瞳。髪はブロンドで、サラサラのボブスタイル。才女といった印象の、すらりとした美人だ。去年の夏、ブラウン博士が東都大学の視察に訪れた際、彼女も個人秘書として同行していて、私もその時出会った。「これ。結婚、おめでとう」両手いっぱいに抱えていた艶やかな花束を、私に渡してくれる。「わあ、ありがとうございます!」私は花束を受け取り、声を弾ませた。軽く顔を埋めただけで、花の蜜の甘い香りが鼻腔をくすぐる。「やあ、ハヅキ。今夜も麗しいね」メグさんの隣の、光沢ある素材のブラックスーツ姿の男性が、やや片言の日本語で言って、私に手を差し出してくれた。彼はレイモンド・ブラウン博士。颯斗と同じ心臓外科医で、彼が東都大学に来る前からの同僚で親友。この夏、大学時代からの付き合いのメグさんと、めでたく結婚した。彼らも新婚さんだ。身長百八十センチ近い颯斗と、同じくらい背が高い。ふわっとしたプラチナブロンドの髪に、深く澄んだ青い瞳。超エリート外科医のわりに、結構やんちゃで気さくな性格で、颯斗の親友というのも納得だ。『麗しい』と言ってもらえた私は、ベビーピンクのロングドレスを身に纏っていた。新婚同士のホームパーティーだから、ちょっと優雅に、長い髪も結い上げている。「レイさんも、相変わらず素敵です」私は、花束を左腕に寄せて、彼に握手を返す。レイさんに負けないシックなスーツに着替えた颯斗が、ダイニングに入ってきた。「また、レイは……」彼は、ニコニコしているレイさんの耳を、ギュッと引っ張る。「いて。いてて、ハヤト!」「メグの前だっていうのに、どうしていつもそう軽々しく、女性を褒めるんだ」やや呆れ顔で眉根を寄せる彼に、メグさんがクスクス笑う。「あら、ハヤト。私を気遣ってくれるの? ありがとう」「メグは慣れてるだろうし、気遣うってのとも違うんだけど」「ふふ。本音は、大事な奥
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-12
Baca selengkapnya
命を繋ぐ彼の手 3
楽しいホームパーティーは、午後十時半まで続いた。レイさんとメグさんが送迎のハイヤーに乗るのを見送って、颯斗はシャワーを浴びにバスルームに向かった。私は、キッチンで片付けをした。食器洗浄機のボタンを押してから、手の甲で額を拭い、「ふうっ」と声に出して息を吐く。ワインでちょっとほろ酔い。脱力して、リビングのソファにドスッと腰を下ろす。クッションを抱きしめ、先ほどまでの楽しい時間を思い出しながら、ずっと気になっていたことをぼんやりと考えた。四人で食事をしたのは、日本にいた時が最初。その後、私たちが渡米してからも、何度か賑やかに食事を楽しむ機会はあった。記憶を手繰る限りでは、メグさんも結構お酒はいける口だったと思う。でも今日は、最初の乾杯のシャンパンも『今日はちょっと』と遠慮した。旦那様のレイさんも特に気にする様子はなかったから、なんとなく流してしまったけど。あれって、もしかしたら……。改めて深読みしかけた時、リビングのドアが開いて、寝巻き姿の颯斗が、髪をタオルで拭きながら入ってきた。「葉月、今日はお疲れ。夕食の準備、ありがとな」「っ! う、うん」弾かれたようにソファから背を起こすと、隣に腰かけた彼が、「ん?」と首を傾げる。「あの……颯斗」私はクッションを脇に置いて、お尻の位置をずらして彼に向き直った。「メグさん……」最後まで口にせず、言い淀む。だけど颯斗は、私がなにを匂わせたか合点した様子で、「ああ」と軽い相槌を打った。「メグ、昔からすごいザルなんだけど、今夜は一滴も飲まなかったな」「それって、やっぱり」「俺もなにも聞いてないけど……多分、そうだろうな」顎を撫で、思案顔で呟くのを聞いて、私は無意識にゴクッと唾を飲んだ。「だったら、こんな時にホームパーティーなんて、申し訳なかったかな」思わず独り言ちたのを、颯斗が聞き拾う。「酒は飲まなかったけど、食事は普通に取ってたし。つわりがほとんどない女性もいるし、葉月が気にすることじゃない。第一、酷かったら本人が断わるだろうから」淡々と医師の顔で言われて、私は口を噤んだ。黙って何度か頷き、そのまま俯く。隣で颯斗が、「ハネムーンベビーかな」とボソッと零した。「え?」反射的に聞き返すと、彼は唇に人差し指を当てて、目線を天井に上げていた。「勘繰るわけじゃないけど、なんとなく。レイって、そういうとこ外さない男だから」私にちょっと悪戯っぽい目を
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-12
Baca selengkapnya
命を繋ぐ彼の手 4
その翌週、週末。颯斗が車を出してくれて、私たちは買い物に出かけた。フィラデルフィア最大のショッピングセンターは、我が家から車で三十分ほどの距離にある。ここは日本の食材も豊富だけど、車じゃないと来れないので、普段は家の近くのスーパーを利用する。だから、いつも颯斗が休みの時に来て、日本食中心に大量買いしている。昨夜、患者さんの容体が悪く、明け方近くに帰宅した彼は、ほんの少し眠そうだった。カートを押しながら、「ふわああ」と生欠伸を噛み殺している。私は醤油のビッグボトルをカートに乗せながら、目尻に涙を滲ませる彼をチラ見した。「たまの休みなのに、ごめんね」ひょこっと肩を竦めて謝ると、颯斗が瞬きを返してくる。「買い物。いつも付き合わせちゃって」「ああ」口に当てていた手をカートに戻しながら、クスッと笑った。「全然? 買い物デート、楽しいからいいよ」「でも。私が運転できれば、休日はもっと別のところに行けるのに」「アメリカは日本と比べて運転荒いし、危ないから。葉月は俺の助手席でいいよ。どこにでも、俺が連れて行ってやるから」彼の大きな手が、私の頭にポンと乗せられる。私は思わず、その手を捕まえた。きゅんとときめく胸の反応に、自分で照れる。「……うん。ありがとう」ほんの少し頬を染めて、はにかんだ笑顔を向ける。彼も、柔らかく微笑み返してくれた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-12
Baca selengkapnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status