一通の手紙から始まる、溺愛シンデレラストーリー! 魔を祓う力を持つ者が権力と地位を得る時代。 ボロ家の養女、フェリシアは伯母に虐げられながらも下級料理番としてお屋敷で働き、貧乏な地獄の日々を送っていた。 そんなある日、フェリシアの家に一通の婚約の手紙が届く。 お相手は現皇帝に仕え、軍の中で絶対的権力を持つ軍師長、エルバート・ブラン。 フェリシアは逆らえず、エルバートの花嫁になることを受け入れ、ブラン家に嫁ぐことに。 そんな彼女を待っていたのは、絶世の冷酷な美青年で――!? 異世界で地獄の日々を送ってきた貧乏無能少女の運命が変わり始める。
View More――そして、まずはエルバートとアマリリス嬢が踊ることとなり、不安げなフェリシアの袖を掴む手に触れ、見えないように優しく下ろすと、エルバートはアマリリス嬢の元に向かう。すると、エルバートの父が広間に軍楽隊を呼び、その弦楽器の美しく優雅な演奏と共にふたりは踊り始める。エルバートの踊る姿を初めて見たけれど、惚けてしまうくらい美しく、かっこいい。それにアマリリス嬢も引けを取らず、エルバートと息がぴったりと合っている。(雲の上のようなおふたり。ほんとうに絵になるわ…………)やがて、アマリリス嬢とエルバートが踊り終え、フェリシアはエルバートの元まで歩いていき、向き合った状態で足を止める。けれど、緊張で足がすくんでしまう。(せっかくクォーツさんにダンスの特訓をしてもらったのに。こんな足でちゃんと踊れるかしら…………)そう、足に目線を向けながら不安に陥った時だった。「……フェリシア、こちらを見ろ」エルバートに小声で話しかけられ、顔を見る。それだけで不安が一瞬にして消えた。「……私がリードする。だから安心して身を任せろ」「……はい」同じように小声で返すと、エルバートが手を差し出す。フェリシアはその手に自分の手を添えた。それを合図にアマリリス嬢の時と同じ軍楽隊による弦楽器の優雅な演奏が始まり、共に踊り始める。そうして少し慣れた頃、エルバートの手が腰に触れ、顔がぐっと近づく。お互いに見つめ合うと、離れ、踊り続ける。ほんの一瞬顔が近づいただけなのに、顔が熱い。(リードするってご主人さまおっしゃっていたけれど、こんなの身が持ちません)そう思いながらも、不思議と嬉しさの方が勝る。
すると煌びやかな広間のソファーに華やかな女性が座っていた。その女性はエルバートの母から以前見せてもらった新聞のご令嬢に似ており、フェリシアは息を呑む。「アマリリス嬢、なぜここに?」エルバートがそう問いかけ、もしかして、と心の中で一瞬思い浮かべたアマリリスの名が確信へと変わり、本物のアマリリス嬢なのだと理解した。「テオお父様に呼ばれましたの」アマリリス嬢が答えると、エルバートの母の執事が口を開く。「旦那様、エルバート様がご帰省なされました」広間は静寂に包まれ、コツ、コツ、と重い足音が響き渡る。マントを靡かせ、貴族服を着た凛々しき男性、エルバートの父であるテオ・ブランが中に入って来た。髪は長くないものの、エルバートと同じく、美しい銀色の髪をし、顔もエルバートによく似ている。「エルバート、やっと帰省したか」「父上、これは一体どういうことだ?」「私を騙したのか」エルバートは冷ややかな強い気を放つ。しかし、エルバートの父は動じない。「こうでもしないと、お前、帰省しないだろう?」「同じ伯爵の身分だった時はここで共に暮らしていたが、戦闘での活躍が認められ、公爵の位をもらい、家を出て屋敷を構えたきり一度も帰省しなかったお前が悪いのだ、反省しろ」「ご主人さま」フェリシアが声をかけると、エルバートは冷静になる。そして何食わぬ顔をして中に入って来たエルバートの母を一瞬、睨む。「虚言だと分かった以上、すぐにでもこの場を離れたいところだが」「ここまでして私を帰省させた誠の目的はフェリシアだったのだな」(え、わたし……?)「エルバート、さすがは察しが良いな」「フェリシアさんに一度会いたく、お前に連れてこさせたのもあるが、1番はお前の花嫁候補を、この家の当主である、テオ・ブランが正式に決める為だ」エルバートの父の目的を知っ
「エルバート様、どうなされたのですか!?」「はあ、フェリシア、今日も待っていたのか」「待たなくていいといつも言っているのに」確かに会話が減っている中で、エルバートはその言葉だけは常に口にしていた。きっと自分のことを気遣ってそう言い続けてくれたのだろう。なのに、胸がきゅっと痛む。「エルバート様、それはあんまりです。フェリシア様が毎日どんな想いでお待ちになられていたか分かりますか!?」「リリーシャさん、良いですから」「それより、一体何があったのですか?」「母上から宮殿に通達があり、私の生家であるブラン伯爵邸が魔に襲われ、現在、父上が庭で抗戦中とのことで助けて欲しいと頼まれた」フェリシアは両目を見開く。(ご主人さまの両親の家が魔に!?)「そして、フェリシア、命懸けで私の家を守ったお前にも来て欲しいとのことだ」「え、なぜそれを……?」「帰る際に玄関でラズールから聞いたそうだ」「正直、お前には家にいて欲しい。危ない目に合わせたくはない」「だが、私が必ず守ってみせる。だから共に付いて来てくれるか?」フェリシアは自分の胸に手を当て、強い眼差しをエルバートに向ける。「はい、お供させて頂きます」* * *その後、エルバートがリリーシャにクォーツとラズールを呼びに行かせ、全員に留守の間、ブラン公爵邸を守るように頼み、皆が承諾すると、フェリシアはエルバートと玄関から外に出て、ディアムが御者を務める馬車に乗り、エルバートの生家、ブラン伯爵邸に向けて馬車が動き始める。(どうか、おふたりとも無事でいて)フェリシアはそう馬車の中で強く願い続け、森を抜けて並木道を走り――、しばらくして緩い坂を昇った先にあるブラン伯爵邸の大きな門の前で馬車が停車した。エルバートが差し出した手に自分の手を添え、馬車を降りる。そしてディアムが施錠されていない門を
“婚約破棄はお受け出来ません、ここも出て行きません”フェリシアの強き覚悟の言葉にエルバートは両目を見開く。その直後、パシャッ!机に置かれていたグラスのワインをエルバートの母の手によって掛けられた。(あ、ご主人さまに仕立てて貰ったドレスが汚れて……)「私になんて物言いなの!? 身分をわきまえなさい!」「エルバートのご婚約はこちらで進めますからその心づもりで」エルバートの母は椅子から立ち上がり、居間の扉からスタスタと出て行く。「奥様! お待ち下さいませ!」「ステラ様、玄関までお送り致します!」エルバートの母の執事とラズールの声が廊下から続けて聞こえ、やがて静かになるとエルバートはフェリシアを見るなり、息を吐く。(ご主人さま、確実に怒っていらっしゃるわ。謝らなくては)フェリシアは椅子から立ち上がり、腰に少し痛みを感じながらも床に跪く。「ご主人さま、せっかく仕立てて頂いたドレスを汚してしまい申し訳ありません」「お母さまに対しても、あのようなおこがましい発言をしてしまい、大変申し訳ありません」「ですが、ご主人さまからの婚約破棄ならば仕方ありません」「ご命令に承従(しょうじゅう)し、今すぐここから出て行きます」エルバートは椅子に座ったまま、フェリシアを見据える。「ならば、命じる」(ああ、ついに婚約破棄されてしまう――――)「婚約破棄はしない、ずっとここにいろ」エルバートの命令の言葉に驚いて、声も出ない。「聞こえなかったか?」エルバートは椅子から立ち上がり、跪くフェリシアの前にしゃがむ。「私がフェリシアにここで共に暮らして欲しいんだが?」フェリシアが号泣すると、エルバートはフェリシアを抱き締める。「ご主人さまっ、ワインが付いて……」「問題ない」
* * *その夜のこと。ブラン公爵邸の居間は凍りついたような空気に覆われていた。エルバートの母であるステラ・ブランが馬車で執事と共に駆け付けてきたからだ。腰が少し痛むフェリシアとエルバートの真向かいに座るエルバートの母は美しく、キリッとした表情でエルバートを見ている。エルバートの父は公務で忙しい方らしく、執事とふたりでここ に駆け付けてきたのだとエルバートと玄関で出迎えた際に彼女からすでに聞いており、エルバートによると、母だけでも厄介で、マナーに厳しい方らしく、面倒そうな顔をした後、 気をつけろ、良いな? と居間に入る前に念を押された。けれど、令嬢でもない自分がこの場に同席しているだけでも、すでにマナー違反な気がしてならない。「エルバート、ブラン公爵邸が魔に襲われるだなんて、一体、 どういうことなの?」エルバートの母が怪訝な顔で尋ねる。「魔が私の力を上回り、一部の結界が破られ、入り込まれた」「よって、今後は結界をより強化し、ブラン公爵邸を守っていく。それだけのことだ」「母上にご足労頂くことも、もうない」「そう」エルバートの母は冷たく返すと初めてフェリシアを見る。「貴女が花嫁候補のフェリシア・フローレンスさん?」「は、はい」エルバートの母は、にっこりと笑う。「単刀直入に言うわ。エルバートに婚約破棄をさせるから今すぐここから出て行って頂けるかしら?」フェリシアは固まり、エルバートは表情を崩さない。「エルバートには、こちらのアマリリス・シェリー嬢とご婚約して頂きたいの」エルバートの母は鞄から新聞のようなものを取り出し、スッと差し見せる。(わ、綺麗な人……)「よって、こちらの事情も兼ねて、貴女には良い額を支払う
* * *「あの、ご主人さま、今から晩ご飯の支度を……」夕暮れ時になる前に目覚めたフェリシアはベットの上で起き上がりながら、エルバートに話しかける。ドレスは寝ている間にリリーシャに着替えさせたとエルバートから先程聞いたものの、まさかご迷惑を掛けた身でこんな時間まで気を失っていただなんて。魔に髪で縛り上げられていたせいで腰はまだ少し痛むけれど、晩ご飯は作らなくては。「支度の必要はない。晩ご飯ならここにある」「リリーシャが作ったものだ。さあ、飲め」エルバートはミルクと野菜のスープをスプーンですくい、口に運ぶ。「あ、あの!?」「なんだ? 冷ました方が良いか?」エルバートは息を吹きかけようとする。「そ、そのままで大丈夫です」フェリシアが口を開けると、エルバートはスプーンを中に入れ、スープを飲ませる。(雲の上のような人になんて恐れ多いことを!)そう恐縮し、目のやり場に困り、スープの入った器を見ると、隣にブルーの花が添えられていた。「あ、その花……」(ご主人さまがお気に入りの……)「私の寝室の花瓶に飾る花を摘みに中庭に出たそうだな」「は、はい、申し訳ありません」「もういい」エルバートはそう言い、フェリシアの首に魔除けのネックレスを付ける。「魔除けのネックレス、見つけて下さったのですか?」「クォーツがな」「そうですか、ありがとうございますとお伝え下さい」「分かった、伝えておく。それからこれも」エルバートはフェリシアに宝石が上品に輝くリボンのような形をしたシルバーの髪飾りを見せる。その髪飾りには2本の三日月の形をした綺麗な垂れ飾りも付いてい
* * *エルバートはしゃがみ、ベットに寝かせたフェリシアの手を握り締める。寝室に勝手に入ってしまったが致し方無い。少しでも帰宅が遅れていたら、彼女の命はなかっただろうと思うと胸が痛む。「フェリシア、今少しの間、このままでいさせてくれ」こうしてエルバートは暫(しば)し彼女との時を過ごした後、ディアム達を書斎(しょさい)に集めた。エルバートは椅子に座り、目の前の机に組んだ手を乗せ、向側(むこうがわ)に立つディアムからフェリシアが中庭に出た経緯をまとめた話を聞く。「フェリシア様自らリリーシャに手伝いをさせて欲しいと申し出て、ラズールに図書室までの案内をされ扉の鍵を開けてもらい、図書室の掃除を終えた後、初対面のクォーツからエルバート様のお気に入りの花を勧められ」「フェリシア様はその花を摘み、リリーシャに渡そうと台所に向かった際に魔除けのネックレスを落としたことに気づき、花だけを長机に置いて中庭へと戻り、ネックレスを探していたところ」「フェリシア様が結界に近づいた事により、結界が何かと干渉をしたのか、フェリシア様がおられる一角だけ結界が弱まり、魔が結界を破ることができ、フェリシア様は魔に襲われてしまったようです」エルバートは右手で顔を覆う。(まさか私の為に花を摘み、命を失いかけたとは)「フェリシア様の手伝いを断ればこんなことには……」リリーシャが謝ろうとすると、クォーツが止め、続けて口を開く。「エルバート様、中庭に落ちていた魔除けのネックレスにございます。花に埋もれておりました」クォーツがそう伝えると、エルバートは顔を覆うのを止め、魔除けのネックレスをクォーツから手渡しで受け取った。クォーツは後ろに下がり、ラ
* * *フェリシアは家を守ろうと必死に魔に抗う。しかし、魔が欲シイ、と最大限にフェリシアの精神に強く声を響かせ、腰を縛る力を更に強くした。そして、ぐあっと嘴(くちばし)を大きく開け、再び体を乗っ取ろうとする。自分の声など届くはずもないと分かっている。けれど、「ご主人さま、帰ってきてっ…………」そう、声を絞り出し、右目から一筋の涙が流れた。すると、その声に答えるように。「フェリシア!!」自分の名を呼ぶ声が聞こえた。月のように美しい銀の長髪。コートを両手を通さずに羽織り、結界を張ったエルバートが、一点の光る道に立ち、こちらを見据えている。今まで一度も自分の声など届くことはなかった。けれど初めて自分の声が届いた。(ご主人さまが帰って来てくれた――――)そう熱いものが込み上げてきた時だった。魔の目線がエルバートに向けられ、外側の両髪をまるで、大きな口を開けて食べるように放った。エルバートは剣に手をかけ、瞬時に鞘から抜き、髪先を素早く斬って浄化する。しかし、魔の左手が首を締めようと、ぐあっと伸び、エルバートに襲い掛かる。エルバートは続けて左手も斬り、浄化した。すると魔は邪気で結界ごとエルバートを潰そうとする。しかし、エルバートは結界で邪気を跳ね除ける。魔はこちらに来させないよう、邪気で道を塞ぐ。その邪気をクォーツが弓矢でラズールが剣で浄化し、ふたりはそれぞれエルバートに声を掛けようとするも、エルバートが放つ冷たい気と冷酷な軍人の顔の、祓いの神のような姿に恐れをなして立ち尽くす。そしてエルバートは駆け走り、祓いの力で高く跳び上がった瞬間、烏の仮面を剣で真っ二つに斬った。すると半面が浄化され、魔は混乱し地面に倒れ込む。「フェリシア様!」ディアムとリリーシャが叫び
* * *フェリシアが魔の細く長い両手で包み込まれそうになった時、自分の名を呼ぶ声が聞こえ、弓矢が飛んできて魔の右手に当たり、その手のみ浄化され、三つ編みにして一つに束ねた髪を揺らし、弓矢を放ったクォーツの姿が見え、駆け付けて助けに来てくれたのだと分かった。けれど、その直後、怒った魔は長い髪のようなものを生やし、頭上から自分の腰を両内側の髪で縛り上げ、外側の両髪をまるで、大きな口を開けて食べるようにクォーツを目掛けて放った。その為、クォーツは自分に近づけず、駆け付けてきたリリーシャ、ラズールが剣で両髪をかっこよく斬り裂き、髪先を浄化するも、髪はどんどん増え、攻撃は止まず、ふたりも苦戦を強いられている。そして自分も一瞬でも気を抜ければ、すぐに体を乗っ取られてしまうだろう。中庭に出なければ。魔除けのネックレスさえ失くさなければ。そう、深い後悔の念がぐるぐると脳内を駆け廻(めぐ)る。これはきっとエルバートの言いつけを守らなかった自分への戒め。魔はクォーツ達に攻撃を続けながら目線を自分に向け、欲シイ、と精神に強く声を響かせる。フェリシアの瞳が黒ずんでいく。なぜ、そこまで自分の体が欲しいのだろう?祓いの力も何もないのに。帰るまで待っていろとエルバートに言われたけれど、(もう、諦めるしか…………)「エルバート様からの伝言でございます。“今すぐ家に帰る”とのことです!」飛んで戻ってきたリリーシャの式神らしきものの声が聞こえ、フェリシアの瞳に再び光が灯り、気を持ち直す。(ご主人さまが家に――――きっと、早退されたのだわ)大変なご迷惑を掛けてしまった。謝っても許されず
* * *「この度はご婚約の手紙をありがとうございます」大広間で頭を下げ跪いたまま、続けて、フェリシア・フローレンスにございます、と名乗ろうとした。けれど、名乗らせてはもらえず。「こちらを見ろ」命じられ、フェリシアは頭を上げる。しかし、ショートベールのせいで、椅子に座っているのが分かる程度で、薄らとしか、婚約の相手の顔が見れない。「顔を出せ」言われた通り、ショートベールを恐る恐る上げて後ろにめくる。婚約の相手は、魔除けの耳飾りにネックレスに、軍服を着た月のように美しい銀の長髪の、絶世の冷酷な美青年だった。「晩飯を作れ」「そして」「これからは私の事をご主人さまと呼べ」「かしこまりました」フェリシアは、ただただ一礼をする。一通の婚約の手紙が届いた先に待っていたのは、愛のない主従関係の婚約。けれど、尽そう。例え、一生、幸せは訪れないのだとしても。* * *パリーンッ!ブローチが嫌な音を立てて割れる。手狭な居間に座るフェリシアは編み紐により両手を後ろで縛られ抵抗できず、伯母にブローチを床に勢いよくぶつけて割られるのをただ目の前で見つめることしか出来なかった。フェリシアは床の割れて欠けた鮮やかなブルーのブローチを見て涙を流す。(両親の形見であるブローチ、守れなかった)「あなたみたいな出来損ないを外に出すだけで恥ずかしいっていうのに」「こんな収入しか稼げないだなんて!」「申し訳ありません」激怒する伯母にフェリシアは頭を下げ、謝ることしか出来なかった。此処(ここ)、異世界に存在するアルカディア皇国では魔を祓う力を持つ者が権力と地位を得て、国を魔から守っている。そして、最高地位の皇帝の座は前皇帝が魔に殺されて亡くなったため、現皇帝が若い年齢で継いでおり、アルカディア皇国に勤めが決まった者は命の危険に晒される時があるものの将来安泰。人々の憧れの皇国である。そんな皇国とは無縁の、小さな古びたボロ家に住むフェリシアは、今年で18歳。両親を3歳の時に魔に殺されて亡くし、父には身寄りがなかった為、母の姉にあたる伯母、ローゼ・フローレンスに引き取られ、2人で暮らしている。だが、伯母はロクでもない男と遊び歩き、働かない為、下級料理番としてお屋敷に雇われたフェリシアの収入だけが頼りで、貧乏な暮らしとなっている。それゆえ、...
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