爽やかな秋晴れに恵まれた、十月の土曜日。 日本では縁起担ぎで、多くの人が人生の門出の日に選ぶ、大安吉日。 私は、今日、結婚式を挙げた。 ここは東京のアクアフロント、お台場にある超高級ホテルのチャペル。 ドアが両側に開いた途端、視界をパアッと薄紅色に染めたライスシャワーが、ひらひらと宙を舞って地面に落ちる。 チャペルの前には、鮮やかな庭園が広がっている。 このホテルの売りでもある、色とりどりの花々が咲き誇るヨーロピアンガーデンに、参列者たちが待ち構えていた。 「おめでとう! 葉月(はづき)、とっても綺麗……!」 「各務(かがみ)、幸せにな〜!!」 昔からの友人たちが、口々に祝ってくれる中。 純白のウェディングドレスに身を包んだ私を、スマートにエスコートしてくれる彼を見上げた。 彼……各務颯斗(はやと)も、同じタイミングで私を見下ろしていて、宙で視線が絡み合う。 私たちは、思わず「ふふっ」と笑い合った。 と、そこに。 「各務ー! 浮気すんなよ〜!」 からかい混じりの声がして、私たちを囲んだ人たちが、ドッと笑う。 どうやら、今のは、颯斗の中学時代の悪友のようだ。 彼はその方向に顔を向けて、「しねーよ、バーカ!」と苦笑いで返している。 結婚式の主役、新郎の一言が、さらに参列者たちの笑いを取った。 颯斗はほんのり頬を染めて、「まったく」と独り言ちた。 ちょっと乱暴に、ガシガシと頭を掻く。 今日の彼は、白いタキシード姿。 いつもは額に下ろしているサラサラの前髪を、後ろに流している。 少しセットが崩れて、形のいい額に一房落ちた。 私は、そんな彼にもクスッと笑った。 遠くに見える青い海に浮かぶ船の汽笛が、チャペルの尖塔の鐘の音に混じって、鼓膜をくすぐる。 潮の香りを運んでくる柔らかいそよ風に、頭に着けたヴェールがふわりと舞う。 無意識に頭に手を遣った時、視界の端に、よく知る顔ぶれが揃っているのが映り込んだ。 「あ、颯斗」 私は、彼の腕にかけた手にキュッと力を込めた。 それに気付いた颯斗が、私の促す方向に顔を向ける。 『あ』という形に、口を開いた。 私は、それを横目に、彼から手を離す。 そちらに向けて、やや小走りで歩を進めた。 そして、左手のウェディングブーケを、一度両手で持ち直す。 花嫁の、ブーケトス。 本
Terakhir Diperbarui : 2025-03-11 Baca selengkapnya