ついつい、あれもこれもと欲張ってしまい、カートいっぱいになった食品を一度精算して、駐車場の車に戻った。ワンボックスカーの後部座席に購入した品物を置いて、まだ足りない分を買いに、もう一度建物の中に引き返す。「葉月。後はなに?」颯斗が指を絡ませて手を繋ぎながら、訊ねてきた。私は、買い忘れ防止のためのメモを開く。「ええと……」大きな吹き抜けのホールを、大型スーパーに向かって突っ切ろうとした、その時。「わあああっ!」突如、階上のフロアから、複数の悲鳴が聞こえてきた。私も颯斗もハッと息をのみ、反射的に頭上を仰ぐ。繋いだままの彼の手に、ギュッと力がこもった。休日のショッピングセンターは、たくさんの外国人買い物客で混雑している。彼らも、私たちと同じように、不安げに顔を上げていた。頭上で、なにが起きているのか。息を潜めて窺う間にも、金切り声や叫び声が続く。上のフロアがより一層騒然とする様子が伝わってきて、周りでみんながざわめき始めた。なにか不穏な、よくない事が起きている。そんな空気に触れて、緊張が込み上げてくる。「は、颯斗……」私は、無意識に彼に身を寄せた。颯斗も険しい表情だけど、すぐに私の肩を抱き寄せてくれる。その次の瞬間、パンパンパン……!と、乾いた破裂音がショッピングセンターに響き渡った。「きゃああっ!」今度は、私の周りでもたくさんの悲鳴があがった。多くの人が、床に伏せる。銃声だ!と察し、私はとっさに頭を抱え込んだ。「っ……葉月っ!」身を竦めた私に、颯斗が覆い被さる。私は固く目を閉じ、床に這いつくばって、彼の下で身体を強張らせた。心臓が、怖いくらい速く強く、ドッドッと拍動している。悲鳴と怒声が、あちらこちらから反響してくる。どこから湧き上がっているものか、もう判断もできなかった。銃声がやむと、「葉月、こっちに……!」颯斗はサッと身を起こし、強く私の手を引いた。「は、はや……」「早くっ」思わぬ銃撃事件に遭遇して怯える私を、引き摺るようにして走り出す。隠れる場所を探して、エスカレーター下の狭いスペースに、駆け込んだ。そこには、アメリカ人の老夫婦が、不安そうに身を寄せ合っていた。彼らの会話を耳にして、颯斗が英語で割って入る。奥様の方が、興奮した様子で、かなり早口に応じた。私も、その会話に、必死に耳を澄ました。老夫婦は、たった今、二階から逃げてきたようだ。男が暴れて銃を撃ったと話すの
Terakhir Diperbarui : 2025-03-12 Baca selengkapnya