今のとわこはまるで背中に棘が刺さられいたかのようで、いても立ってもいられない気分だった。「とわこさんはまだ大学生だよね?こんな大事な時期に妊娠したら、勉学に支障が出ることになるでしょう…」と悟の妻が言った。悟も相槌を打った。「そうだ、そうだ。とわこさんはまだお若いだし、彼女的にも勉学をやめて、家で子供を産んで育つのがさぞ嫌だろう!」大奥様は長男とその嫁の腹の中をちゃんと把握していた。これも老婆であった彼女が意地を張っても奏の血筋を残すことを押し通す理由なのだった。「とわ、奏くんの子を産んでくれるか?」という問いを投げてすぐ、大奥様は何も隠さずに、率直にとわこに言い聞かせた。「あなたも知っているはず、あなたと奏くんの子供は、将来奏くんの遺産を継ぐことになる。奏くんの莫大な遺産で、あなたと子供は贅沢に生きていけるでしょう」とわこは何も躊躇なく、「ええ、喜んで」と答えた。常盤弥が奏の家業を奪うのを阻止することさえできれば、彼女は何でも喜んで試したことだった。それだけではなく、自分が拒んだとしても、常盤家従来の強腰のやり方からして、強引に子供を産ませるだろうと彼女が判断した。彼女から良い返事を聞けた大奥様は、満足そうな微笑みを顔に浮かんだ。「いい子だ。さすが私が見込んだだけ、外の愚かの女どもとは違うだと分分かっていた。あの連中は奏くんがもうすぐ死ぬので、奏くんから何にももらえないと踏んでいて…愚か者ども!」お茶のおもてなしを終えて、屋敷から出たとわこは、奏の別荘に帰ろうとしていたところを、途中で弥に引き止められた。汗ばむ炎天下で、蝉の声は次々と高まった。常盤弥のを顔を目にしたら、とわこはやけに虫唾が走った。「三浦さん、先にお土産を持って帰ってきてちょうだい」と彼女は三浦婆やに言いつけた。頷いた三浦婆やは、お土産を持って、先立った。周りは誰人もいなかったのを確認して、安心した弥はとわこに向けて、こう言った。「とわちゃん、俺だって傷つくんじゃない!もうあんなにも長く付き合っていたのに、とわちゃんは一度もくれなかった…けど、今は自らの意志で叔父さんの子産むだなんて」「奏さんの子を産めば、遺産がもらえますし。これ以上都合のいい話ないじゃないと思いませんか?」彼女はわざと軽い口で返事して、弥の心を抉った。思った通り
続きを読む