鬼課長とのお見合いで

鬼課長とのお見合いで

last updateLast Updated : 2025-02-22
By:   愛月花音  Updated just now
Language: Japanese
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Synopsis

純愛

三人称

ハッピーエンド

OL

上司

一途

お見合い

オフィス

仲直り

松井亜季(28)は、広告代理店で勤めて6年目。  いつか大きなイベントや会社の広告を自らの手で作りたくて この会社に就職した。  仕事が忙しく婚期が遅れる日々。すると、 親の勝手な都合でお見合いする事に……?  しかしお見合い相手は、会社で怖いと評判で鬼課長と呼ばれている 櫻井課長(32)だった!?  最初は嫌がっていた亜季だったが、鬼課長は不器用ながらも一生懸命想う告げてくる。 その表情に、意識をしてしまった亜季は改めて食事をすることに。 そこで見せてくれた誠実で可愛らしい一面に少しずつ惹かれていく。 しかし、そんな純粋な2人に波乱が? 切なく胸キュンな 鬼課長&主人公の純愛オフィスラブ。

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第一話・『課長とのお見合い』

 松井亜季(まつい あき)は、広告代理店で勤めて六年目。 いつか大きなイベントや会社の広告を自らの手で作りたくて、この会社に就職した。 バリバリの働くキャリアウーマンなんて言えないし、失敗も多い。それでも必死に頑張ってきた。 そんな亜季には苦手な人が居る。それは、この人だ。「おい。何でお前の書類には、いつも誤字があるんだ? これで何度目だ?」「申し訳ありません」 必死で謝る男性社員。部下に叱っているのが、櫻井(さくらい)課長。 背が高くて、細身なのに肩幅が広く、鍛え上がった体。その上に眉間にシワを寄せて、鋭くつり上がった目つき。 周りから恐れられて『鬼課長』というニックネームを付けられているほど。(うわぁ~今日も怖い) 櫻井課長の怒鳴り声で亜季は思わずビクッと肩を震わせた。 すると 同期で友人の玉田美奈子(たまだ みなこ)に話しかけてくる。「ねぇ、相変わらず怖いわよねぇ~鬼課長」「……う、うん。そうだね」 思わず亜季も頷いてしまう。真面目で異常に厳しい。 見た目もあって余計に、そう思われていた。亜季も恐れている1人だったが。 直接こっぴどく叱られたことはないが、仕事のことで何度か注意を受けたことならなる。それでも、かなり怖かったが。「聞く話だと課長って独身らしいわよ? まぁ、あれでは結婚なんて出来ないわよねぇー」 美奈子は、クスッと笑いながらそう言ってきた。(櫻井課長って、独身だったんだ? へぇ~) 失礼ながら納得してしまった。だって、あまりプライベートとか想像ができない。そもそも、どんな女性が好みなのかも知らないし、そこまで興味もない。しかし運命とは何とも皮肉なもの。 まさか、この櫻井課長とお見合いをするなんて夢にも思わなかった。 それは、数日後のことだった。 母が突然、一人暮らしをしているアパートに来たと思ったら、お見合い話を持ち出してきたのだ。「はぁっ? お見合い……私が!?」「そう。習い事で知り合った人の息子さんなんだけど、独身らしくてね。優秀で、いい方らしいから引き受けてきたの」 あっけらかんと明るく話す母に呆れてしまう。亜季は思わず。ため息を吐く。(そんな勝手に引き受けないでよ!?) いくら仕事で恋愛を疎かにしているからって、勝手に相談もなく決めないでほしい。 そうではなくても最近忙しいとい...

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第一話・『課長とのお見合い』
 松井亜季(まつい あき)は、広告代理店で勤めて六年目。 いつか大きなイベントや会社の広告を自らの手で作りたくて、この会社に就職した。 バリバリの働くキャリアウーマンなんて言えないし、失敗も多い。それでも必死に頑張ってきた。 そんな亜季には苦手な人が居る。それは、この人だ。「おい。何でお前の書類には、いつも誤字があるんだ? これで何度目だ?」「申し訳ありません」 必死で謝る男性社員。部下に叱っているのが、櫻井(さくらい)課長。 背が高くて、細身なのに肩幅が広く、鍛え上がった体。その上に眉間にシワを寄せて、鋭くつり上がった目つき。 周りから恐れられて『鬼課長』というニックネームを付けられているほど。(うわぁ~今日も怖い) 櫻井課長の怒鳴り声で亜季は思わずビクッと肩を震わせた。 すると 同期で友人の玉田美奈子(たまだ みなこ)に話しかけてくる。「ねぇ、相変わらず怖いわよねぇ~鬼課長」「……う、うん。そうだね」 思わず亜季も頷いてしまう。真面目で異常に厳しい。 見た目もあって余計に、そう思われていた。亜季も恐れている1人だったが。 直接こっぴどく叱られたことはないが、仕事のことで何度か注意を受けたことならなる。それでも、かなり怖かったが。「聞く話だと課長って独身らしいわよ? まぁ、あれでは結婚なんて出来ないわよねぇー」 美奈子は、クスッと笑いながらそう言ってきた。(櫻井課長って、独身だったんだ? へぇ~) 失礼ながら納得してしまった。だって、あまりプライベートとか想像ができない。そもそも、どんな女性が好みなのかも知らないし、そこまで興味もない。しかし運命とは何とも皮肉なもの。 まさか、この櫻井課長とお見合いをするなんて夢にも思わなかった。 それは、数日後のことだった。 母が突然、一人暮らしをしているアパートに来たと思ったら、お見合い話を持ち出してきたのだ。「はぁっ? お見合い……私が!?」「そう。習い事で知り合った人の息子さんなんだけど、独身らしくてね。優秀で、いい方らしいから引き受けてきたの」 あっけらかんと明るく話す母に呆れてしまう。亜季は思わず。ため息を吐く。(そんな勝手に引き受けないでよ!?) いくら仕事で恋愛を疎かにしているからって、勝手に相談もなく決めないでほしい。 そうではなくても最近忙しいとい
last updateLast Updated : 2025-02-20
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第二話。
 しかし結局、何も抵抗ができないまま、お見合いの日を迎えてしまう。 亜季は母に無理やり着物を着せられる。桜色で鶴と菊の花が添えた訪問着。 絞めつけられて苦しいし、気分まで沈む。今すぐにでも帰りたいと思ってしまうほどに。「いい? 亜季。相手が上司なんだから、なおさら失礼のないようにね?」 失礼だと思われたくないなら、辞めさせた方がいいと思う。 お見合いするのは豪華な料亭だった。きちんと手入れされた庭園に、上品で落ち着いた雰囲気。さすが料亭なだけはあって、和が感じられて素敵だ。 お見合いではなければ、どんなにいいところだろうか。「失礼致します。お連れ様がお見えになりました」 案内されて一室に入ると、相手の方は既に着ていて座っていた。 そこで見た男性は間違いなく櫻井課長だったが。 勘違いで終わらなかったようだ。 ビシッとスーツ姿でキメて、背筋が伸びている。しかし表情はムスッとしていて明らかに機嫌が悪そうに見える。 思わず会社に居る時のことを思い出して、亜季まで背筋が伸びた。「まぁ、なんて綺麗なお嬢さんかしら。はじめまして。智和の母の和美(かずみ)です」 ニコッと挨拶してくれる課長のお母様は、上品で優しそうな感じの人だった。 櫻井課長は、お父様似なのだろうか?「は、はじめまして。松井亜季(まつい あき)と言います。よろしくお願い致します」「……櫻井智和(さくらい ともかず)だ。こちらこそ、よろしくお願い致します」 お互いに頭を下げて挨拶をするが、その声がいつもより低く感じてしまう。 もしかして既に機嫌悪くさせてしまったのだろうか? 親同士は、何やら楽しそうに会話を始める。 亜季は緊張しながらチラッと櫻井課長を見ると、思いっ切りガン見されていた。怖くて前が向けない。 亜季は恐怖でガクガクと体を震わせるが、必死で心を落ち着かせようとする。「亜季さんのご趣味は、何かしら?」 突然、向こうのお母様が話をふってきたので驚いてしまう亜季。いきなりだったので、慌てる。 趣味と言っても自慢するほどのものは何もない。あくまでも楽しむだけの趣味しかないが。「あ、はい。えっと……ガーデニングと映画鑑賞です」「まぁ、素敵な趣味だわ。ガーデニングってどんなのを?」「花とか育てるのが好きで。今、アパートに住んでいるのでベランダに少しだけ」「こ
last updateLast Updated : 2025-02-20
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第三話。
「……何故、謝るんだ?」 急に謝罪されたので、櫻井課長は驚いて聞いてきた。(何故と言われましても。こんな気まずい上に私がお見合い相手だからです) 櫻井課長だって選ぶなら美人で清楚な人がいいだろう。 自分では不釣り合いなことぐらい分かっている。そもそも部下なので論外だろうけど。「私がお見合い相手だからです。ガッカリされたのは承知しています。だからその…申し訳ありませんでした。断って下さってもいいので」 深々と、もう一度頭を下げる亜季。 何故そんなに頭を下げて謝るのかは、亜季自身も分からない。 ただ…気まずいやら怖いやらで、何とか機嫌を損ねたくなかった。 逆に失礼なことを言っているのかもしれないが、今の亜季はそんなことを考えている余裕はなかった。  櫻井課長は、そのまま黙り込んだ。もしかして怒っている? それとも呆れて口に出して言えないのだろうか?「松井」「は、はい」 突然、名前を呼ばれ思わず返事してしまう。全身ビクビクして震えていた。 (えぇ? もしかして怒られる!?) すると櫻井課長は私の腕を掴まえて、そのまま料亭の壁際まで連れて行かれる。 そしてバンッと壁ドンをされてしまう。 あまりの勢いだったので全身硬直してしまう亜季だった。(ひぃぃっ~!?) 普通よく漫画やテレビで観る壁ドンって、胸キュンとしたり、ドキドキするシーンが多いはずだが。 今の亜季には、胸キュンより恐怖が優先していた。これだと逃げることもできないし、追い詰められている。(怖い……誰か助けて!?) 思わず目をつぶりガタガタと震える。すると櫻井課長がボソッと、「お前は、そんなに俺が怖いか?」と小さな声で呟いてきた。「えっ?」 恐る恐る目を開けて櫻井課長を見ると、彼は切なそうな表情で亜季を見ていた。 まるで傷ついたように。「櫻井課長……?」「俺は、お見合い相手が君だと知ったから、お見合いを引き受けたんだ!」(えっ? 今なんて……??) 櫻井課長の突然の言葉に啞然とする亜季。 思わず櫻井課長の顔をジッと見つめると、目線を逸らしてきた。 しかも、ほんのり頬が赤くなっているではないか。(今の……聞き間違いではない!?) 思わない櫻井課長の恥ずかしそうな顔にドキドキしてしまった。 それでも課長は話を続けようとしてきた。「俺は……昔からこ
last updateLast Updated : 2025-02-20
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第四話。
 櫻井課長のお見合いを断る理由が思いつかない。 それよりも、もっと照れた櫻井課長課長を見てみたくなってしまった。 何よりも彼のことを知りたくなった。 そのままお見合いは終わってしまったが、亜季はずっと課長のことを考えていた。 翌日になってもチラッと櫻井課長のことばかり目で追ってしまう。 本人は、相変わらず怖い表情で黙々とパソコンと睨めっこをしていたが。 いつもの櫻井課長に戻っていた。 本当に昨日と同一人物なのだろうか? まだ自分のことを好きで居てくれているのだろうか? まるで、今では夢を見ていたような感覚だ。「どうしたの? さっきから櫻井課長のことばかりチラチラ見て?」 あんまりにも見るものだから美奈子が亜季に声をかけてきた。(えっ? そんなに見ていた?)「あ、別に。そう? お茶淹れてあげた方がいいか迷っていて」「あぁ、タイミングとか難しいよねぇ~課長の場合は」「……そうそう」 良かった……気づかれていないようだ。 慌てて誤魔化したから、変に思ったかと心配したが。  友人である美奈子でも言いづらい。『鬼課長』とお見合いをしてきたとか……驚かれるだろうし、恥ずかしい。「お茶……淹れてくるわね」 バレないように亜季は、そそくさと席を外した。 そして、そのまま給湯室に向かう。やっぱり櫻井課長にもお茶を淹れよう。 少しぐらい話とかできないだろうか? きっかけになればと思い、櫻井課長と自分と美奈子の分を用意する。 櫻井課長にお茶を淹れる時は、いつも緊張する。他の子達も言っていたが、タイミングが悪いと睨まれてしまうからだ。(何か理由があるのかも?) 昨日の櫻井課長を見ていたら違う気がしてくる。思ったより優しかったからだ。 そう思いながら、お茶を注ぎ終わると、タイミングを見てから櫻井課長のデスクに置いた。 違う意味でドキドキしてくるが。「失礼します。あの……課長。お茶をどうぞ」「うむ……ありがとう」 こちらを見ずにお礼だけ言われる。無愛想に笑いものせずに。(えっ? ……それだけ?) 亜季は、もう少し笑ってくれるか、こちらを見てくれると思っていた。 やっぱり、昨日の姿は幻だったのだろうか?少しでも期待していた分、残念な気持ちになっていく。 亜季は頭を下げて戻ると、すぐに櫻井課長は別の社員を呼びつけていた。 
last updateLast Updated : 2025-02-20
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第五話。
「は、はい」 私のことだよね? と返事をしながら振り向くと櫻井課長は亜季を見ていた。思わずドキッと心臓が高鳴ってしまう。 まさか呼び止められると思わなかったから驚いてしまった。「さっきのお茶……美味しかった。悪かったな。社内で馴れ馴れしいのも嫌だと思ったから」(もしかして気にしてくれたの?) 課長を見ると少し恥ずかしそうにしていた。照れている。 何だか亜季の胸の辺りがポカポカして温かくなってきた。「いえ…お気遣いありがとうございます」「それで……今夜予定が無いなら、一緒に食事でもどうだろうか?」「……えっ!?」「あ、いや…別に強制じゃない。嫌なら断ってくれてもいいから」「いえ。ぜひ、ご一緒させて下さい!」亜季は思わず口から出てしまった。自分でもびっくりしてしまう。 だが、せっかく誘ってくれたのに断るなんて亜季の中では、どうしても考えられなかった。「良かった。なら……そうだな。 仕事が終わったら駅のそばにある喫茶店で待っていてくれ。すぐに行くから。それと、この前の企画書は上手くできていたぞ」「ありがとうございます」 亜季は頭を下げると、そのまま部署に戻る。不思議だ。何だかスキップしたくなるぐらい嬉しい。 少し前なら恐怖だったし、呼び止められたら説教でも言われるのではないかと思って、ビクビクしていたはずなのに。今では口元がニヤニヤしてしまっていた。その気持ちは、顔にも出ていたようで、部署に戻った後に美奈子が亜季の顔を見て「どうしたの?何だか機嫌がいいみたいだけど?」と言ってきた。「そう…気のせいじゃない?」「怪しいわねぇ~何があったか教えなさいよ?」「何でも無いわよ~ほら、仕事をさっさと始めちゃおう」 そんなに顔に出ているのだろうか? でも、こうはしていられない。定時までには終わらせなくては。 急いでパソコンのキーボードを打ちやりかけの企画書を作成させる。 そして何とか仕事を無事に定時までに終わらせると、駅の近くにある一軒の喫茶店に向かった。 ここは通勤の利用者が多い。中に入っていくとサラリーマンや学生などが数人居た。亜季はコーヒーを頼み、窓際の席に座って櫻井課長が来るのを待つことにする。「課長まだかなぁ~忙しい人だから遅れるかしら?」何だか心臓が高鳴って落ち着かない。 キョロキョロと周りを見ると、ま
last updateLast Updated : 2025-02-20
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第六話。
 店長がニコッと笑いながら丁重に案内してくれた。奥の席に座ると、亜季はメニュー表を見る。いろんな料理が書いてあった。 チラッと見ると櫻井課長も真剣な表情で選んでいた。(いつも思うけど櫻井課長って、真剣な表情って怖いわよね。あれが素だったのね) 機嫌が悪いだけなのかと思ったが、もともとの表情なのだろう。誤解してしまったことに申し訳なくなる。 そう思っていたら目が合ってしまう。亜季は慌ててメニュー表に目線を戻した。 見つめてしまったことに気づかれてしまっただろうか?「決まったか?」「あ、えっと…この鮭と野菜のホイル蒸しと、後は豆腐サラダにします」「ビールか何か飲むか?」「あ、はい。ならビールも一緒に」 ついでに注文して貰った。注文をすると沈黙が続く。見ていたことは気づかれなかったようだが、どうしよう。 何か話した方がいいだろうか? でも何を話したらいいのか分からない。 そもそも櫻井課長とは世間話をしたことがなかった。「えっと~素敵なお店ですね。上品な感じで。課長もこういうお店によく来るのですか?」「まぁな。料理も美味しいが何より落ち着く。君は、こういうお店は苦手か? あまりお洒落なお店とか知らなくて。悪いな」「いえ、私もこういう落ち着く感じが好きです。ただ、あまり行った事がなくて」 恥ずかしい……。実は小料理屋とかは、行ったことがなかった。行ってみたいと思ったことはあるが、何だか女性1人で行くには敷居が高くて。「普段は、どんなお店に行ったりするんだ?」「そうですね。同僚の美奈……玉田さんとはイタリアンとか居酒屋などに。色々なお店に行きます。ただ安いお店ばかりですが」「そうか…」 櫻井課長はそう言うと、また黙ったままになってしまった。 会話が続かない。櫻井課長は、普段口数が少ないタイプだし、もっと自分から話の幅を広げなくては。「あの~課長は、料理とか作りますか?」亜季はオドオドしながら何故だか、料理関係の話をふってしまった。 あまり作るイメージは無いけど、作ったりするのだろうか?「あぁ、作るぞ。一人暮らしが長いからか結構こだわりが強い方だ」 櫻井課長はあっさりとした表情で、そう言ってきた。作るらしい。こだわりとか強そうな雰囲気ではあったが、意外なことで亜季は驚いた。「君は、料理とか作るのか?」「たまに……で
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第七話。
(あんな嬉しそうな顔をするんだ?)「他にもお薦めのメニューとかあるぞ。今度食べてみるといい」「はい。ぜひ……」「じゃあ、今度また……あ、すまない。つい調子に乗ってしまった」 櫻井課長は、ハッとしたのか慌てだした。彼でも調子に乗ることもあるらしい。 亜季は思わずクスッと笑ってしまった。また櫻井課長の可愛いところを知ってしまったようだ。「いえ…また誘って下さい」そのせいか、不思議と何だかいい雰囲気になれた。素直に言うことも出来た。その後も料理の話をしたりと、会話が少しずつ増えていく。こういう時に、時間が過ぎるのは早い。あっという間に食べてしまい帰ることに。「あの……今日は、ごちそうさまでした」駅のそばで私は、お礼を伝える。。 会計の時に自分の分を払おうとしたが、櫻井課長が全額払ってくれた。 そんなつもりはなかったため申し訳ない気持ちになる。「いや…こちらこそ。今日は楽しかった…ありがとう」「いえ…こちらこそ。ありがとうございました。おやすみなさい」 亜季は深々と頭を下げると、お互い別れてホームに移動する。ハァ~緊張しちゃった。力が抜けてしまう。 こんなに緊張するとは……でも、また新しい櫻井課長が発見できた。 意外と料理を作るのも好きで小料理屋が好き。 今度、また一緒に行ったら新しい課長を発見できるだろうか? (次…いつ誘ってくれるかな?)自分から誘ってみたら迷惑だろうか? するとハッと気づく。いけない。課長の事ばかり考えているではないか!? 何だか胸が締め付けられそうな気持ちになる。不思議な気分だ。 そんな気持ちを抱きながら翌日。会社で仕事をしながら櫻井課長を見ると相変わらずの姿だった。 黙々と眉間にシワを寄せてパソコンのキーボードを打ち込んでいる。 あれは怒っているのではなくて、集中している姿。これも新しい発見だ。 今日もお茶を出したら喜んでくれるだろうか?そう思い席を立った。 給湯室で、お湯を沸かしていると誰かが入ってきた。同じ部署で後輩の澤村梨香(さわむらりか)さんだった。「お疲れ様です。あれ? それ、課長の湯吞みですか?」「えぇ、せっかくだから」 そう言いながら湯のみにお茶を注ぎ終わると急須を片付ける。すると、それを見て不思議に思ったのか、亜季に聞いてくる。「松井先輩ってマメですよねぇ
last updateLast Updated : 2025-02-20
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第八話。
 すると数日後のことだった。「松井。悪いが、これを経理課まで届けてくれ」「あ、はい。承知しました!」 突然の頼みに驚くも亜季は引き受ける。書類を受ける。すると付箋が貼ってあったことに気づいた。何気に見てみると、『今夜食事でもどうだ? いいなら、こないだの喫茶店で待っていてくれ』 と、そう書いてあるではないか。二度目の食事のお誘いだった。まさかの出来事に亜季は嬉しくなる。 課長を見ると少し恥ずかしそうに頬を染めながら「頼んだぞ!」と言ってきた。「はい」 亜季は笑顔で返事をすると部署を出る。付箋を剥がしながら、もう一度見た。 自然と笑みがこぼれてしまう。また、同じ小料理屋に連れて行ってくれるのだろうか? 嬉しくて、その付箋をこっそりとポケットの中に入れた。そして、そのまま経理課に行き、受け取った書類を渡した。 仕事が終わると、私はこの前と同じ駅近くにある喫茶店で待つことに。 二度目でも、まだ心臓がドキドキしていた。会社とは、また違う櫻井課長が見える。 今日は、どんな発見があるのだろうか? しばらく待っていると課長が店内に入ってきた。「すまない。また遅くなった。待ったか?」「いえ、さっき来たばかりだから大丈夫です」「……そうか。じゃあ、行こうか」「はい」 謝ってくる櫻井課長に亜季は笑顔を向ける。そして伝票を持ち会計を済ませた。 連れて行かれたのは、美奈子と行ったことがあるイタリアンのお店だった。「女子社員に人気だと聞いたから、来たことはあるか?」「あ、はい。玉田さんと一緒に」「……そうか。俺と一緒では嫌かも知れないけど、今日は我慢してくれ」「いえ……全然構いません」 何だか照れくさいけど嬉しい。 だが店内に入ると、すぐに澤村梨香を見かけてしまう。 (あ、澤村さん達だわ!? どうしよう) 一緒に居る所を見られたら何を言われるか分かったものではない。 噂が好きな人たちだ。課長に迷惑をかけてしまうだろう。「どうした? 松井」「あ、いえ……その」 どうしたらいいか戸惑っていると課長も澤村梨香たちに気づいてしまう。 戸惑う亜季を察したのだろう。「……店を替えるか」「あ、でも……」 櫻井課長は、そう言うと先に店から出てしまった。 どうしよう。このままだと櫻井課長を見られるのが嫌だと勘違いされてし
last updateLast Updated : 2025-02-20
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第九話。
 泣きそうになっている亜季に、櫻井課長は咳払いをしてきた。でも、まだ耳まで赤くなっているのが分かる。照れいるのだろうか?「とにかく、何処かの店に入ろう。えっと……この前の小料理屋でもいいか?」「あ、はい」 亜季は、すぐさま返事をする。そのまま歩いて小料理屋に向かった。 店に着いても何だか鼓動が高鳴って落ち着かない。この前と違うメニューを頼みビールを飲んでいると、櫻井課長の方から話しかけてくれた。「さっきの……あまり男性に言わない方がいい」「えっ? どうしてですか?」 もしかして気に障ったのだろうか? どうしようと亜季は不安になってしまった。「……男が変に勘違いをしてしまうからだ。俺に気があるのかって」「えっ……?」 その言葉に亜季は。また頬が熱くなってしまう。 櫻井課長に気があると想われちゃったのだろうか? だけど亜季は、それが嫌だと思わなかった。それよりも、ドキドキと鳴っている心臓の方がうるさい。「もちろん勘違いだと分かっているが、あまり男性を刺激しない方がいい。トラブルになったりするから。君は、もう少し警戒心を持った方がいい」「……はい。すみませんでした」 ちょっと説教気味に注意をされてしまった。謝るが、今度はズキッと心が痛む。 やっぱり怒らせてしまっただろうか? 勘違いさせられたって。しゅんと亜季は落ち込んでしまう。「あ、すまない。またいつもの癖で説教をしてしまった。 別に君を叱りたいわけではないんだ」「……はい。大丈夫です……すみません」 何だか空気が重くなってしまった。これでは、会社に居る時と変わらない。 そうしたら店長が間に入ってきた。「おいおい、櫻井さん。あまり女性に説教したら嫌われちゃうぞ?」「べ、別にそういうわけでは」「すまないねぇ~櫻井さんは君を想って言っただけだから。他の男性に言い寄られたら自分が嫌だからって」 代わりに謝罪をしてきた。それを聞いて課長は慌てだした。 他の男性に言い寄られたら嫌だから……?「あの……それって本当ですか?」 思わず口から出てしまう。すると、また課長は目線を逸らしてきた。 さらに耳まで真っ赤になっていた。「あ、あぁ…まぁ。 今回は俺だったから良かったが……」「私は櫻井課長だから言ったんです。他の人には言いません」 それだけは勘違いされたくない。
last updateLast Updated : 2025-02-20
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第十話・『課長との初デート』
 亜季と課長は、それからメッセージアプリでやり取りをするように。 話題は、たわいのない出来事だけど。顔が見えないせいか、お互い話が進んでいく。 そこでも櫻井課長の意外な素顔や新しい発見をする。『櫻井課長。今何をしているのですか? 私は今日借りてきたⅮⅤⅮを観ています』『さっきまでジョギングをしていた。汗をかいたからシャワーを浴びていたところだ』 ジョギングとは、いつもこの時間帯で走っているのだろうか?それに何キロを? 気になりメッセージをしてみた。『いつも何キロ走っているのですか?』『大体五キロぐらいだな。多くて十キロ。ジムも行ったりするが』 多くて十キロとは驚きだ。趣味がトレーニングと言っていたけど。 なかなか走れる距離ではないだろう。亜季は思わず感心する。『凄いですね。私は運動音痴なので、そんなに走れません』『そうなのか? 鍛えると運動音痴も改善するかも知れないぞ。今度いいトレーニング道具を貸してやる』『ありがとうございます。機会がありましたらぜひ』 トレーニング道具か…どんなのだろうか? 亜季はハァッ~と深いため息を吐いた。メッセージで、こんなに話せるなら直接もっと話がしたい。 櫻井課長の前だと緊張してしまい上手く話せない。無口な人だし。 亜季は口下手な方だ。そう思いながらスマホを眺めていた。 櫻井課長は、どんな気持ちでメッセージを打っているのだろうか?同じ気持ちならいいのに。と、ⅮⅤⅮを観ずに、ずっとスマホを眺めていた。 そして待ちに待った日曜日。櫻井課長と映画を観ることになったのだが。 初デートと言ってもいいのだろう。 気合いを入れて最近購入した白色のトップスにジャケット。 藍色のコットンスカート。 会社の時と違って服やメイクに気を使った。 ちょっと、気合い入れ過ぎただろうか? そう思いながら待ち合わせ場所の駅に電車に乗って向かう。 目的地の駅に着くと、既に改札口のそばで櫻井課長が待っていた。 いつものスーツ姿と違って私服姿。グレーのシャツに黒色のジャケットとジーンズ。 意外とお洒落な感じだ。「あの……遅れて申し訳ありません」「大丈夫だ。今さっき着いた」 慌てて謝罪をしながら課長のところに行くと、櫻井課長は何故だか驚いた表情をしていた。そして何も言わずに黙り込んでしまう。(あれ……? もし
last updateLast Updated : 2025-02-22
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