ヴァールス家 嫡男の憂鬱

ヴァールス家 嫡男の憂鬱

last updateLast Updated : 2025-03-31
By:  よつば 綴Updated just now
Language: Japanese
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ヴァールスの血を引く者は代々、自身の体内で多量の血液を生成する能力を持って生まれる。本家の者の能力は一族の中でも一層強い。ヌェーヴェルは本家の嫡男であり、一族の中でも極めてその能力に優れている。 吸血鬼と人間の戦で生き残った2人の吸血鬼。ひょんな事から、2人は超優良物件(ヌェーヴェル)に住みつく。 3人の歪んだ関係が織り成す、ちょっとふしだらな日常の物語。 *** 主な登場人物(登場時点の年齢) 身長 ヌェーベル・ヴァールス(17) 178㎝ ヴァニル(300over) 189㎝ ノーヴァ・ドゥラリネ(200over) 150㎝(大人の姿:186㎝) ノウェル・ヴァールス(17) 180㎝

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囚われの俺-1

 俺に跨り、首筋へ牙を食い込ませているこの少年の名はノーヴァ。すぐそこで、恍惚な表情を浮かべアソコを滾らせているのが、ノーヴァの養父であるヴァニル。「ちょっとぉ、どこ見てんの? こっちに集中してよ」「ん゙っ、うぁ··」 ノーヴァは俺の血を啜りながら、ケツに凶悪なブツをねじ込んでいる。それを遊び感覚でされているのだから堪らない。 何より、少年の股間に付いているとは思えない、俺のよりもデカい魔羅《マラ》だ。俺のケツの将来が危ぶまれる。 「あぁっ··ノーヴァ、早く私にもくださいよ」「煩いなぁ、ヴァニル。ヌェーヴェルは今、ボクと楽しんでるんだからね。大人しく“待て”しててよ」「はぁ~っ····ノーヴァは意地悪ですねぇ」 俺のことなどお構いなしで、自分たちの世界に引き摺り込んでくる。まぁ、いつもの事だが。 幼顔を快楽に歪める、なんとも背徳感に満ちた情景。オツなものだと思われるのだろうか。否、最悪で最低な気分だ。  この、どうしようもなく欲に忠実なコイツらは、とうの昔に滅びたとされている吸血鬼。俺の血を啜り、快楽の底へと叩き堕とす変質者どもだ。 先の戦争を生き延び、人知れず闇に紛れて生きてきた。我々人間に迫害され、残虐の限りを尽くされてきた種族だ。 100年ほど続いた凄惨な戦いで遺ったのは、ゴミみたいなものだった。人間の醜悪な優越感によって確立された、吸血鬼は悪の暴徒だという印象。それと、人間は崇高だというクソみたいな2種族間の優劣。 だからと言って、憐れだとか庇護すべき対象とは思っていない。生き残りと言えば希少な気はするが、ただ図太くしぶとく人間を貪り喰ってきただけの奴ら。出会った当初は、ただただ忌むべき存在だった。 吸血鬼は特有の能力で若さを保っている。ノーヴァの実年齢は200歳を超えるらしいが、せいぜい12歳程度にしか見えない。 時々大人の姿になるのだが、体力を使うとかで俺の血を大量に吸うから禁止した。超絶美少年で、稀に超絶美男。腹が立つほど見目麗しい。 ヴァニルは20歳そこそこの見た目だが、実際は300歳を超えているらしい。吸血鬼の平均寿命って何歳なんだろう。年齢詐称ジジイのこいつは、銀髪紅眼のくっそイケメン野郎。そして、絶望的な変態だ。絶対に女は喰わないらしい。 俺のような容姿端麗な若い男が好みらしく、選り好みが激しい。俺がノー...

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囚われの俺-1
 俺に跨り、首筋へ牙を食い込ませているこの少年の名はノーヴァ。すぐそこで、恍惚な表情を浮かべアソコを滾らせているのが、ノーヴァの養父であるヴァニル。「ちょっとぉ、どこ見てんの? こっちに集中してよ」「ん゙っ、うぁ··」 ノーヴァは俺の血を啜りながら、ケツに凶悪なブツをねじ込んでいる。それを遊び感覚でされているのだから堪らない。 何より、少年の股間に付いているとは思えない、俺のよりもデカい魔羅《マラ》だ。俺のケツの将来が危ぶまれる。 「あぁっ··ノーヴァ、早く私にもくださいよ」「煩いなぁ、ヴァニル。ヌェーヴェルは今、ボクと楽しんでるんだからね。大人しく“待て”しててよ」「はぁ~っ····ノーヴァは意地悪ですねぇ」 俺のことなどお構いなしで、自分たちの世界に引き摺り込んでくる。まぁ、いつもの事だが。 幼顔を快楽に歪める、なんとも背徳感に満ちた情景。オツなものだと思われるのだろうか。否、最悪で最低な気分だ。  この、どうしようもなく欲に忠実なコイツらは、とうの昔に滅びたとされている吸血鬼。俺の血を啜り、快楽の底へと叩き堕とす変質者どもだ。 先の戦争を生き延び、人知れず闇に紛れて生きてきた。我々人間に迫害され、残虐の限りを尽くされてきた種族だ。 100年ほど続いた凄惨な戦いで遺ったのは、ゴミみたいなものだった。人間の醜悪な優越感によって確立された、吸血鬼は悪の暴徒だという印象。それと、人間は崇高だというクソみたいな2種族間の優劣。 だからと言って、憐れだとか庇護すべき対象とは思っていない。生き残りと言えば希少な気はするが、ただ図太くしぶとく人間を貪り喰ってきただけの奴ら。出会った当初は、ただただ忌むべき存在だった。 吸血鬼は特有の能力で若さを保っている。ノーヴァの実年齢は200歳を超えるらしいが、せいぜい12歳程度にしか見えない。 時々大人の姿になるのだが、体力を使うとかで俺の血を大量に吸うから禁止した。超絶美少年で、稀に超絶美男。腹が立つほど見目麗しい。 ヴァニルは20歳そこそこの見た目だが、実際は300歳を超えているらしい。吸血鬼の平均寿命って何歳なんだろう。年齢詐称ジジイのこいつは、銀髪紅眼のくっそイケメン野郎。そして、絶望的な変態だ。絶対に女は喰わないらしい。 俺のような容姿端麗な若い男が好みらしく、選り好みが激しい。俺がノー
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 俺たちは時々、3人で屋敷を抜け出す。宵闇に紛れて散歩をするのだ。散歩と言っても、大半が空を飛んでいるのだが。 勿論、俺には空を飛ぶ能力などない。だから、ヴァニルに抱えられて空を舞う。 初めのうちは、姫の様に抱えられるなど耐えられないと拒否したのだが、抗う事などできるはずがなかった。まず、力で敵うはずがない。吸血鬼共は異常なまでに怪力なのだ。奴らが加減を間違えれば、人間など赤子も同然である。 今では、優しく抱えられる事に慣れてしまった。しかし、俺を連れ出す必要性は未だに感じない。それなのに、毎度わざわざ連れ出される。吸血鬼とやらは、そんなに散歩が好きなのだろうか。 今日のように月が綺麗な夜に散歩をしていた時、何気なく聞いてみたことがある。ヴァニル曰く、ノーヴァは上空から街を見下ろすのが好きなんだとか。 俺は誤解をしていた。てっきり、人間が手の届かない上空から見下している様だとか、得体の知れない優越感に浸れるだとか、まさに吸血鬼のイメージ通りの理由なのだろうと思っていた。 だが実際には、平和な街に浮かぶ温かな灯りを眺めるのが好きなんだそうだ。とんだ失礼をかますところだった。いや、心で思っていただけでも同じか。すまん、ノーヴァ。 俺は心の中で素直に謝った。すると、ノーヴァがこちらを見て優しく微笑んだ。····ように見えた。 よく見ると、ヴァニルも穏やかでいて優しい表情をしている。なんだろう、普段あまり見ない表情なので薄気味悪い。なんて思った途端、2人の表情がスッと無に戻った。「なんなんだよ、お前ら。笑ったり真顔になったり忙しい奴らだな」「ふん。貴方が阿呆《あほう》だからですよ、ヌェーヴェル」「はぁ!? お前、喧嘩売ってんのかよヴァニル!」「ったく、煩いなぁ。散歩も静かにできないの?」 俺がヴァニルに食ってかかると、ノーヴァが呆れたように言った。呆れているには俺のほうなのだが。「空飛んで散歩もくそもあるかよ····」「え、なぁに? 早く帰ってボクに弄ら
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──ガチャ「ヌェーヴェル····ああ、僕のヌェーヴェル、可哀想なヌェーヴェル····」 普段は血色の良いヌェーヴェルの顔が蒼白く、今にも死にそうな顔をしている。いつもは飛び掛りたくなるほどの美しい寝顔なのに、今日は抱き締めたくなるほど弱々しく見える。 そんな心情を瞳に映しながら、ノウェルはそっとヌェーヴェルを覗き込んだ。「お前、また寝込みを襲う気だったろ」「お、起きていたのかい? 意地悪だなぁ····。そんな事はしないよ。君の安眠を妨害するつもりはなかったんだ」「よく言う······」 ノウェルは時々、寝ているヌェーヴェルのもとを訪れては、起こさないようそっと指を這わす。 髪や睫毛、鎖骨など、いちいち厭らしい触れ方をするノウェル。ノーヴァとヴァニルの所為で敏感になっているヌェーヴェルは、少し触れただけでも目が覚めてしまうのだ。 先日、ヴァニルに抱き潰され深い眠りに落ちていた時には、瞼にキスをされ目が覚めたヌェーヴェル。咄嗟にノウェルを殴ったが、ノウェルは喜んだだけだった。「お前、薔薇の匂いがキツイんだよ。吐きそうな、くらい····甘い匂いだから··目も覚めるわ。····そこに居ていいから、静かに··してろ····」 ヌェーヴェルは再び眠りについた。 すぐに悪態をつくヌェーヴェルは、決して誰にも心を許さない。だが、ノウェルの純粋な好意は受け止めている。 それが劣情を孕んでいようと、自分に害がない限り構いはしない。純粋に好かれている事に、ヌェーヴェルだって悪い気はしないのだから。ヌェーヴェルもまた、吸血鬼程で
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「お待たせ、ヌェーヴェル。医者は呼ばなくていいのかい? 僕にできることはあるかな····。ああっ、まだ横になっていなくちゃ」 起き上がろうとする俺を、わたわたと手のやり場に困りながら制止するノウェル。「横になったままでどうやって水を飲むんだよ。ったく··、そんなに|急《せ》くんじゃない」「あぁ····ごめん。ごめんよ、ヌェーヴェル····」「ふはっ、まるで仔犬みたいだな」 起きがけから喧しい奴だが、俯き肩を落とす様は、叱られた仔犬そのものだ。どうにも、こういう所があしらい難い。まったく、面倒くさい奴だ。「なんだよ、そのショボくれた顔は。俺なら大丈夫だから、焦らなくていいって事だ」「ヌェーヴェル····! やはり君は私の天··んぐっ──」 ノウェルの煩い口を、手で叩くように塞いでやった。俺は小さい頃から『天使』と呼ばれるのが嫌いなんだ。 周囲の大人は、見目麗しい俺を持て囃して取り入ろうとする。容姿が麗しいのは仕方のない事だが、下心があるのは許せない。 なのに、コイツはそれを知ってなお、俺を『天使』だと言う。コイツの場合、本心で言っている辺り質が悪い。流石の俺も、正面切って本心からそう言われると照れる。「うっっわ! てめ、舐めやがって! 気持ち悪ぃな!」「美しい手を差し出す君がいけないんだよ」「何言ってんだお前····。救いようのない気持ち悪さだな。お前の喧しい口を塞いだだけだろ」「どうせなら、その柔らかい唇で塞いで欲しいな」 なんで柔らかいって知ってるんだよ。触らせた事なんてないはずなのに。 「お前、さっさと帰れ」「まったく、君は酷いヤツだね。こんなに君を愛してる僕を追い返すなんて
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