その成り行きは単純にして愚鈍。俺は、救いようのない阿呆だったと自覚している。
学友達に、肝試しだと連れてこられた旧王魔団の廃城。肝試しと銘を打っているものの、浅ましい自己アピールの場にすぎない。
女達は俺の容姿と家名を求め群がる。あざとく媚びて、か弱いフリをして見せる。俺の庇護欲を駆り立てようと尽力しているのだ。男共はおこぼれを狙っている。友とは上っ面だけのクソどもに、心底虫唾が走る。
吹き晒しになった最上階。そこで、密かに城を塒《ねぐら》にしていたヴァニルとノーヴァに出くわした。月明かりに照らされて、危うい存在の彼らは透けて見える。それはさながら、噂通りの幽霊の様だった。
その場に居た全員が恐れおののき、パニックになって走り出した。腰を抜かして動けなくなった俺は、無情にも置いてけぼりをくらう。流石、友達ごっこだ。
ぺたっと座り込んだ俺の頬に、ノーヴァが手を添えて微笑む。胸が高鳴り、背筋をゾクゾクと何かが走り抜けた。
俺がマヌケだったんだ。絶世の美男の姿で現れたノーヴァに誘われ、ちょっとばかし見目麗しいからと、ホイホイと奴らの居住区《テリトリー》に立ち入ったのがマズかった。
あれよあれよと犯され、言葉巧みに屋敷へ招き入れてしまったのだから。我ながら、実にちょろかったと思う。
世界に名を轟かせるヴァールス家の嫡男ともあろう俺が、吸血鬼の小僧と変態ジジイに良いようにされる日々を送る羽目になるとは。なんとも不甲斐ない。
かくして、この2匹の生き残り吸血鬼を、格式高い我がヴァールス家にて養う事になった。
奴らは洗脳の様な力で、家の者の意識を操れるらしい。なんの違和感もなく屋敷をうろついているし、俺並みの扱いを受けている。良いご身分だ。
そして、俺は囲われの身。逆らう事もできず、それどころか俺の方が離してやれないというのが本音だ。2人には絶対言わないが。
俺がとっくに快楽の虜と知れば、さらに好き勝手に弄ばれるのだろう。あの、愉悦が全てと宣《のたま》うバカ2人のことだ。俺が毎夜潰されるであろう事は、火を見るより明らかである。
俺の本心が関係しているのか、吸血鬼の能力なのかは知らないが、俺は決して2人に逆らえない。頭と身体が、別々の意識を持っているかの様に。
俺の都合とは関係なく、夜な夜な2人が俺の部屋に訪れる。そして、今宵もこの身を弄ばれるのだ。
俺の身体を差し出すことで、俺の周囲の安寧は守られている。そういう大義名分だと、自分に言い聞かせているわけだが。実際はそうではない。
「──ヴェル、ヌェーヴェル? ヴェル! 聞いてる? もう、またトんでたでしょ」
「ん····いや、トんでない。ちょっと考え事してただけだ」
「へぇ··。ボクのおちんちんねじ込まれてんのに、考え事する余裕あるんだぁ。へぇ~」
「違っ、悪かった。ぼーっとして、余裕なんか··んんっ、ないって──んあ゙ぁ゙ぁ!!」
「これ、本当に潰してあげようか?」
ノーヴァは入り口をこねくり回し、グッと押し込むと前立腺を抉るように潰す。
「痛゙ぁぁっ、待て! 待って! そんなに強く、何度もしたら、痛いんだって。だから、も、やめて····」
悔しいが、俺は涙を浮かべて懇願するしかない。
「痛いの好きだよね? いつも涎垂らして喜んでるくせに」
ノーヴァは、俺の亀頭を指先でこねくり回して言う。
「なっ!? 喜んでな──んぐぁっ!! も、やだ····痛いんだって··んっ」
「声、甘くなってきたよ? ほら、悦くなってきたんでしょ?」
「んぁっ、そんなわけ····ひあぁぁ!!」
「まだまだお漏らししてね。ヴェルが快楽に堕ちれば堕ちるほど、沸き立つ血が美味しくなるんだから」
ノーヴァは俺の首筋を舐め、トドメと言わんばかりに前立腺を押し潰した。
「イ゙ッ··ぎあぁぁぁ!!! 痛゙ぃっ、もう出ないぃ!! やだ、もうやめろって!!」
「ノーヴァ、そろそろ解放してあげなさい。ヌェーヴェルが泣いてしまったじゃないですか」
「本当、ヴェルは泣き虫だなぁ」
「だっ、誰の所為だと思ってんだ! この変態幼──むぐっ」
「まーた言おうとしたね。お仕置きだよ~」
ノーヴァの見目が麗しく、どこからどう見ても女児なので“幼女”と揶揄って殺されかけたことがある。これを言うとノーヴァがキレることは知っているが、腹が立つとつい言ってしまう。
そして、まさに今これから、酷く仕置きをされるのだ。恐怖とともに、ゾクゾクと込み上げるものがある。
しかし、そんなに甘い事は言っていられない。あまりにも容赦のない責めが続くのだから。
「ひぐっぅあ゙ぁ゙ぁぁぁぁ!! お゙え゙ぇ゙ぇぇっ····ごめっ、奥、やめ゙て··くらしゃい····もう、許ひて····」
「ヴェルはおバカだから、ボクが怒るのわかってて言おうとするんでしょ? 何回目? いい加減、こうなるって学習しなよね」
「ノーヴァ、程々にと言ったでしょう。私ができなくなるじゃないですか」
「··ふんっ、いいよ。代わったげる。朝までヴァニルに抱かれたらいいんだ」
「朝··まで··そんなの、死ぬってぇ····。お前、ら··俺の血が目的だったんだろ····」
「貴方の血は勿論。しかし、その躯の全てをむしゃぶり尽くしたくなってしまったのですよ。それほどに、貴方が美味しいという事です」
「ふっざけんな····」
「いい加減慣れなよ。いつまで初々しいフリしてんのさ」
「フリじゃねぇよ! こんなもん、慣れてたまるか!!」
とまぁ、こんなふしだらな関係を、かれこれ1年近く続けている。
毎日、幼女みたいなクソガキに弄ばれ、死ぬ寸前までド鬼畜絶倫イケメンに抱き潰されるのだ。このままでは、本当に身が持たないだろう。
今日も今日とて、俺は嬲られている。 俺の膝に跨ったノーヴァ。太腿に当たる柔らかい感触に玉がキュッと締まる。首筋へ立てられた牙を拒めず、あまつさえ滾らせている自分に嫌気がさす。 小さな手で俺の腰を撫で降ろし、細い指で俺の硬くなったモノを弄ぶ。自分の硬くなったモノを、俺のと一緒にしごきやがって、挙句自分だけ達しやがった。 俺はと言うと、焦らされて焦らされて、爆発してしまいそうな激情を抑えきれず、先走る涎をたらたらと溢れさせてしまう。 達するまで弄ってくれないのが、ノーヴァの意地悪い所だ。血を啜り、自分本位に突っ込んで満足したらそれで終わり。 不完全燃焼に悶える俺の頬を、いやらしい指つきで撫でるヴァニル。隣に腰掛け、ノーヴァに弄ばれている俺を眺めて滾らせている馬鹿は、物欲しそうな表情を隠そうともしない。「ヌェーヴェル、貴方は本当に美しいですね。その美しい顔が歪んで、さらなる快感を求め藻掻く様が····。はぁ··堪らない」「くっそ変態野郎が······」「そのクソ変態野郎のモノを欲しているのは誰です? 」 俺たちを見てクスクスと笑うノーヴァが、ようやくヴァニルへ視線を送る。俺を弄ぶ事に飽きたサインだ。 散々“待て”をされていた忠犬は、主人のゴーサインに勢いよく飛びつく。 それに安堵する俺は、どうしようもない快楽の下僕だ。漸く達することができるのだと、身体が悦ぶのだから仕方がない。 吸血鬼の倫理観など知らない。だが、ひとつ解るのは、親子関係が人間とは随分異なるという事だ。 ヴァニルはノーヴァに対してだけ、やたらとマゾスティックになる。このヴァニルという男は、俺からして見ればノーヴァの忠犬以外の何物でもない。何があったら親子関係がそうなるのだろうか。その辺、厳しく教育された俺には理解し難い。 ノーヴァ以外には必要以上に丁寧なくせに、行為の時は特に変態的なサディストだ。ヴァニルのそれには、上品な戯れの中に図りえない残虐性を感じる。 以前、ヴァニルのいたぶり方が酷い時に聞いた話だ。俺が相手をできない間の事。 薄暗い部屋で2人、ノーヴァがヴァニルを煽り焦らす。決して果てさせない。ヴァニルがそれを望み、ノーヴァは乗り気で応えるらしい。 まったく歪んだ関係だ。どれほど厄介な性癖を持つとこうなってしまうのだろうか。 最悪なのはその後だ。そこで溜まった
「ヴァニ··ル····息、できね····も、無理だ····」「仕方ないですねぇ。それじゃ、私もそろそろイッてあげますよ。死なないでくださいねっ」「ひぃ゙っあ゙ぁ゙あ゙あ゙ぁ゙っ!!!」 俺が限界だとわかると、ヴァニルは結腸にぶち込んだまま大量に射精して、ずるんと一気に引っこ抜いた。すると、俺のケツから噴き出すように精液が溢れる。「今日もエロいですねぇ。あ、生きてます? 回復しましょうか?」「いい··生きてぅ。··クソ、絶倫め····」 俺はかろうじて息をしている。動けるわけなどない。そんな俺を綺麗に拭き、メイドではなくヴァニルがベッドを整える。 ヴァニル曰く、仕上げ作業のようでこれが楽しいらしい。全く理解できん。「ノーヴァ····やめっ、んっ······」「ノーヴァ、後にしてください。邪魔ですよ」 ノーヴァは、ヴァニルがベッドメイキングをしている横で、身動きできない俺の首を掴んで血を啜る。「ぷはぁっ····。だって、喉乾いたんだもん。ボク、もう寝るから後よろしく」「はいはい。おやすみなさい、ノーヴァ」 ノーヴァが自室に戻ると、ヴァニルは俺の横に腰掛ける。そして、交わっている時とは真逆の顔を見せるのだ。 これが、ピロートークと言うやつだろうか。「ヌェーヴェル、身体は大丈夫ですか? いつも無茶をさせてすみません。貴方を抱くと、どうにも加減ができなくなってしまう」「ばぁーか。今更だろ。··まぁ、そういうのも嫌いじゃないから構わんけどな。回復せにゃならんほど潰すのだけは勘弁してくれ」「······善処します」 これはする気のない台詞だ。だが別に、死ななくて気持ち良ければ何でも構わない。 目下の不安は、コイツらの居ない生活に戻れなくなってしまう事だ。いや、もう既に手遅れな気がする。「お前ら、いつまでここに居座るつもりだ?」「解放してほしいですか?」「····そうだな。俺は嫁をもらってこの家を継がにゃならん。お前らと悦楽を交えるには限りがある」「貴方が嫁を··ねぇ。抱けるんですか?」「だっ····!? 抱くに決まってるだろ。跡継ぎが要るんだ。親父が切に欲してるもんつったらそれくらいなんだよ」「はぁ····。人間は妙なところでおかしな拘りを捨てられないのですね。何百年経っても変わらない、偏屈な生き物だ」「そうだな。俺は今のまま
俺たちは時々、3人で屋敷を抜け出す。宵闇に紛れて散歩をするのだ。散歩と言っても、大半が空を飛んでいるのだが。 勿論、俺には空を飛ぶ能力などない。だから、ヴァニルに抱えられて空を舞う。 初めのうちは、姫の様に抱えられるなど耐えられないと拒否したのだが、抗う事などできるはずがなかった。まず、力で敵うはずがない。吸血鬼共は異常なまでに怪力なのだ。奴らが加減を間違えれば、人間など赤子も同然である。 今では、優しく抱えられる事に慣れてしまった。しかし、俺を連れ出す必要性は未だに感じない。それなのに、毎度わざわざ連れ出される。吸血鬼とやらは、そんなに散歩が好きなのだろうか。 今日のように月が綺麗な夜に散歩をしていた時、何気なく聞いてみたことがある。ヴァニル曰く、ノーヴァは上空から街を見下ろすのが好きなんだとか。 俺は誤解をしていた。てっきり、人間が手の届かない上空から見下している様だとか、得体の知れない優越感に浸れるだとか、まさに吸血鬼のイメージ通りの理由なのだろうと思っていた。 だが実際には、平和な街に浮かぶ温かな灯りを眺めるのが好きなんだそうだ。とんだ失礼をかますところだった。いや、心で思っていただけでも同じか。すまん、ノーヴァ。 俺は心の中で素直に謝った。すると、ノーヴァがこちらを見て優しく微笑んだ。····ように見えた。 よく見ると、ヴァニルも穏やかでいて優しい表情をしている。なんだろう、普段あまり見ない表情なので薄気味悪い。なんて思った途端、2人の表情がスッと無に戻った。「なんなんだよ、お前ら。笑ったり真顔になったり忙しい奴らだな」「ふん。貴方が阿呆《あほう》だからですよ、ヌェーヴェル」「はぁ!? お前、喧嘩売ってんのかよヴァニル!」「ったく、煩いなぁ。散歩も静かにできないの?」 俺がヴァニルに食ってかかると、ノーヴァが呆れたように言った。呆れているには俺のほうなのだが。「空飛んで散歩もくそもあるかよ····」「え、なぁに? 早く帰ってボクに弄ら
俺に跨り、首筋へ牙を食い込ませているこの少年の名はノーヴァ。すぐそこで、恍惚な表情を浮かべアソコを滾らせているのが、ノーヴァの養父であるヴァニル。「ちょっとぉ、どこ見てんの? こっちに集中してよ」「ん゙っ、うぁ··」 ノーヴァは俺の血を啜りながら、ケツに凶悪なブツをねじ込んでいる。それを遊び感覚でされているのだから堪らない。 何より、少年の股間に付いているとは思えない、俺のよりもデカい魔羅《マラ》だ。俺のケツの将来が危ぶまれる。 「あぁっ··ノーヴァ、早く私にもくださいよ」「煩いなぁ、ヴァニル。ヌェーヴェルは今、ボクと楽しんでるんだからね。大人しく“待て”しててよ」「はぁ~っ····ノーヴァは意地悪ですねぇ」 俺のことなどお構いなしで、自分たちの世界に引き摺り込んでくる。まぁ、いつもの事だが。 幼顔を快楽に歪める、なんとも背徳感に満ちた情景。オツなものだと思われるのだろうか。否、最悪で最低な気分だ。 この、どうしようもなく欲に忠実なコイツらは、とうの昔に滅びたとされている吸血鬼。俺の血を啜り、快楽の底へと叩き堕とす変質者どもだ。 先の戦争を生き延び、人知れず闇に紛れて生きてきた。我々人間に迫害され、残虐の限りを尽くされてきた種族だ。 100年ほど続いた凄惨な戦いで遺ったのは、ゴミみたいなものだった。人間の醜悪な優越感によって確立された、吸血鬼は悪の暴徒だという印象。それと、人間は崇高だというクソみたいな2種族間の優劣。 だからと言って、憐れだとか庇護すべき対象とは思っていない。生き残りと言えば希少な気はするが、ただ図太くしぶとく人間を貪り喰ってきただけの奴ら。出会った当初は、ただただ忌むべき存在だった。 吸血鬼は特有の能力で若さを保っている。ノーヴァの実年齢は200歳を超えるらしいが、せいぜい12歳程度にしか見えない。 時々大人の姿になるのだが、体力を使うとかで俺の血を大量に吸うから禁止した。超絶美少年で、稀に超絶美男。腹が立つほど見目麗しい。 ヴァニルは20歳そこそこの見た目だが、実際は300歳を超えているらしい。吸血鬼の平均寿命って何歳なんだろう。年齢詐称ジジイのこいつは、銀髪紅眼のくっそイケメン野郎。そして、絶望的な変態だ。絶対に女は喰わないらしい。 俺のような容姿端麗な若い男が好みらしく、選り好みが激しい。俺がノー
俺たちは時々、3人で屋敷を抜け出す。宵闇に紛れて散歩をするのだ。散歩と言っても、大半が空を飛んでいるのだが。 勿論、俺には空を飛ぶ能力などない。だから、ヴァニルに抱えられて空を舞う。 初めのうちは、姫の様に抱えられるなど耐えられないと拒否したのだが、抗う事などできるはずがなかった。まず、力で敵うはずがない。吸血鬼共は異常なまでに怪力なのだ。奴らが加減を間違えれば、人間など赤子も同然である。 今では、優しく抱えられる事に慣れてしまった。しかし、俺を連れ出す必要性は未だに感じない。それなのに、毎度わざわざ連れ出される。吸血鬼とやらは、そんなに散歩が好きなのだろうか。 今日のように月が綺麗な夜に散歩をしていた時、何気なく聞いてみたことがある。ヴァニル曰く、ノーヴァは上空から街を見下ろすのが好きなんだとか。 俺は誤解をしていた。てっきり、人間が手の届かない上空から見下している様だとか、得体の知れない優越感に浸れるだとか、まさに吸血鬼のイメージ通りの理由なのだろうと思っていた。 だが実際には、平和な街に浮かぶ温かな灯りを眺めるのが好きなんだそうだ。とんだ失礼をかますところだった。いや、心で思っていただけでも同じか。すまん、ノーヴァ。 俺は心の中で素直に謝った。すると、ノーヴァがこちらを見て優しく微笑んだ。····ように見えた。 よく見ると、ヴァニルも穏やかでいて優しい表情をしている。なんだろう、普段あまり見ない表情なので薄気味悪い。なんて思った途端、2人の表情がスッと無に戻った。「なんなんだよ、お前ら。笑ったり真顔になったり忙しい奴らだな」「ふん。貴方が阿呆《あほう》だからですよ、ヌェーヴェル」「はぁ!? お前、喧嘩売ってんのかよヴァニル!」「ったく、煩いなぁ。散歩も静かにできないの?」 俺がヴァニルに食ってかかると、ノーヴァが呆れたように言った。呆れているには俺のほうなのだが。「空飛んで散歩もくそもあるかよ····」「え、なぁに? 早く帰ってボクに弄ら
「ヴァニ··ル····息、できね····も、無理だ····」「仕方ないですねぇ。それじゃ、私もそろそろイッてあげますよ。死なないでくださいねっ」「ひぃ゙っあ゙ぁ゙あ゙あ゙ぁ゙っ!!!」 俺が限界だとわかると、ヴァニルは結腸にぶち込んだまま大量に射精して、ずるんと一気に引っこ抜いた。すると、俺のケツから噴き出すように精液が溢れる。「今日もエロいですねぇ。あ、生きてます? 回復しましょうか?」「いい··生きてぅ。··クソ、絶倫め····」 俺はかろうじて息をしている。動けるわけなどない。そんな俺を綺麗に拭き、メイドではなくヴァニルがベッドを整える。 ヴァニル曰く、仕上げ作業のようでこれが楽しいらしい。全く理解できん。「ノーヴァ····やめっ、んっ······」「ノーヴァ、後にしてください。邪魔ですよ」 ノーヴァは、ヴァニルがベッドメイキングをしている横で、身動きできない俺の首を掴んで血を啜る。「ぷはぁっ····。だって、喉乾いたんだもん。ボク、もう寝るから後よろしく」「はいはい。おやすみなさい、ノーヴァ」 ノーヴァが自室に戻ると、ヴァニルは俺の横に腰掛ける。そして、交わっている時とは真逆の顔を見せるのだ。 これが、ピロートークと言うやつだろうか。「ヌェーヴェル、身体は大丈夫ですか? いつも無茶をさせてすみません。貴方を抱くと、どうにも加減ができなくなってしまう」「ばぁーか。今更だろ。··まぁ、そういうのも嫌いじゃないから構わんけどな。回復せにゃならんほど潰すのだけは勘弁してくれ」「······善処します」 これはする気のない台詞だ。だが別に、死ななくて気持ち良ければ何でも構わない。 目下の不安は、コイツらの居ない生活に戻れなくなってしまう事だ。いや、もう既に手遅れな気がする。「お前ら、いつまでここに居座るつもりだ?」「解放してほしいですか?」「····そうだな。俺は嫁をもらってこの家を継がにゃならん。お前らと悦楽を交えるには限りがある」「貴方が嫁を··ねぇ。抱けるんですか?」「だっ····!? 抱くに決まってるだろ。跡継ぎが要るんだ。親父が切に欲してるもんつったらそれくらいなんだよ」「はぁ····。人間は妙なところでおかしな拘りを捨てられないのですね。何百年経っても変わらない、偏屈な生き物だ」「そうだな。俺は今のまま
今日も今日とて、俺は嬲られている。 俺の膝に跨ったノーヴァ。太腿に当たる柔らかい感触に玉がキュッと締まる。首筋へ立てられた牙を拒めず、あまつさえ滾らせている自分に嫌気がさす。 小さな手で俺の腰を撫で降ろし、細い指で俺の硬くなったモノを弄ぶ。自分の硬くなったモノを、俺のと一緒にしごきやがって、挙句自分だけ達しやがった。 俺はと言うと、焦らされて焦らされて、爆発してしまいそうな激情を抑えきれず、先走る涎をたらたらと溢れさせてしまう。 達するまで弄ってくれないのが、ノーヴァの意地悪い所だ。血を啜り、自分本位に突っ込んで満足したらそれで終わり。 不完全燃焼に悶える俺の頬を、いやらしい指つきで撫でるヴァニル。隣に腰掛け、ノーヴァに弄ばれている俺を眺めて滾らせている馬鹿は、物欲しそうな表情を隠そうともしない。「ヌェーヴェル、貴方は本当に美しいですね。その美しい顔が歪んで、さらなる快感を求め藻掻く様が····。はぁ··堪らない」「くっそ変態野郎が······」「そのクソ変態野郎のモノを欲しているのは誰です? 」 俺たちを見てクスクスと笑うノーヴァが、ようやくヴァニルへ視線を送る。俺を弄ぶ事に飽きたサインだ。 散々“待て”をされていた忠犬は、主人のゴーサインに勢いよく飛びつく。 それに安堵する俺は、どうしようもない快楽の下僕だ。漸く達することができるのだと、身体が悦ぶのだから仕方がない。 吸血鬼の倫理観など知らない。だが、ひとつ解るのは、親子関係が人間とは随分異なるという事だ。 ヴァニルはノーヴァに対してだけ、やたらとマゾスティックになる。このヴァニルという男は、俺からして見ればノーヴァの忠犬以外の何物でもない。何があったら親子関係がそうなるのだろうか。その辺、厳しく教育された俺には理解し難い。 ノーヴァ以外には必要以上に丁寧なくせに、行為の時は特に変態的なサディストだ。ヴァニルのそれには、上品な戯れの中に図りえない残虐性を感じる。 以前、ヴァニルのいたぶり方が酷い時に聞いた話だ。俺が相手をできない間の事。 薄暗い部屋で2人、ノーヴァがヴァニルを煽り焦らす。決して果てさせない。ヴァニルがそれを望み、ノーヴァは乗り気で応えるらしい。 まったく歪んだ関係だ。どれほど厄介な性癖を持つとこうなってしまうのだろうか。 最悪なのはその後だ。そこで溜まった
その成り行きは単純にして愚鈍。俺は、救いようのない阿呆だったと自覚している。 学友達に、肝試しだと連れてこられた旧王魔団の廃城。肝試しと銘を打っているものの、浅ましい自己アピールの場にすぎない。 女達は俺の容姿と家名を求め群がる。あざとく媚びて、か弱いフリをして見せる。俺の庇護欲を駆り立てようと尽力しているのだ。男共はおこぼれを狙っている。友とは上っ面だけのクソどもに、心底虫唾が走る。 吹き晒しになった最上階。そこで、密かに城を塒《ねぐら》にしていたヴァニルとノーヴァに出くわした。月明かりに照らされて、危うい存在の彼らは透けて見える。それはさながら、噂通りの幽霊の様だった。 その場に居た全員が恐れおののき、パニックになって走り出した。腰を抜かして動けなくなった俺は、無情にも置いてけぼりをくらう。流石、友達ごっこだ。 ぺたっと座り込んだ俺の頬に、ノーヴァが手を添えて微笑む。胸が高鳴り、背筋をゾクゾクと何かが走り抜けた。 俺がマヌケだったんだ。絶世の美男の姿で現れたノーヴァに誘われ、ちょっとばかし見目麗しいからと、ホイホイと奴らの居住区《テリトリー》に立ち入ったのがマズかった。 あれよあれよと犯され、言葉巧みに屋敷へ招き入れてしまったのだから。我ながら、実にちょろかったと思う。 世界に名を轟かせるヴァールス家の嫡男ともあろう俺が、吸血鬼の小僧と変態ジジイに良いようにされる日々を送る羽目になるとは。なんとも不甲斐ない。 かくして、この2匹の生き残り吸血鬼を、格式高い我がヴァールス家にて養う事になった。 奴らは洗脳の様な力で、家の者の意識を操れるらしい。なんの違和感もなく屋敷をうろついているし、俺並みの扱いを受けている。良いご身分だ。 そして、俺は囲われの身。逆らう事もできず、それどころか俺の方が離してやれないというのが本音だ。2人には絶対言わないが。 俺がとっくに快楽の虜と知れば、さらに好き勝手に弄ばれるのだろう。あの、愉悦が全てと宣《のたま》うバカ2人のことだ。俺が毎夜潰されるであろう事は、火を見るより明らかである。 俺の本心が関係しているのか、吸血鬼の能力なのかは知らないが、俺は決して2人に逆らえない。頭と身体が、別々の意識を持っているかの様に。 俺の都合とは関係なく、夜な夜な2人が俺の部屋に訪れる。そして、今宵もこの身を弄
俺に跨り、首筋へ牙を食い込ませているこの少年の名はノーヴァ。すぐそこで、恍惚な表情を浮かべアソコを滾らせているのが、ノーヴァの養父であるヴァニル。「ちょっとぉ、どこ見てんの? こっちに集中してよ」「ん゙っ、うぁ··」 ノーヴァは俺の血を啜りながら、ケツに凶悪なブツをねじ込んでいる。それを遊び感覚でされているのだから堪らない。 何より、少年の股間に付いているとは思えない、俺のよりもデカい魔羅《マラ》だ。俺のケツの将来が危ぶまれる。 「あぁっ··ノーヴァ、早く私にもくださいよ」「煩いなぁ、ヴァニル。ヌェーヴェルは今、ボクと楽しんでるんだからね。大人しく“待て”しててよ」「はぁ~っ····ノーヴァは意地悪ですねぇ」 俺のことなどお構いなしで、自分たちの世界に引き摺り込んでくる。まぁ、いつもの事だが。 幼顔を快楽に歪める、なんとも背徳感に満ちた情景。オツなものだと思われるのだろうか。否、最悪で最低な気分だ。 この、どうしようもなく欲に忠実なコイツらは、とうの昔に滅びたとされている吸血鬼。俺の血を啜り、快楽の底へと叩き堕とす変質者どもだ。 先の戦争を生き延び、人知れず闇に紛れて生きてきた。我々人間に迫害され、残虐の限りを尽くされてきた種族だ。 100年ほど続いた凄惨な戦いで遺ったのは、ゴミみたいなものだった。人間の醜悪な優越感によって確立された、吸血鬼は悪の暴徒だという印象。それと、人間は崇高だというクソみたいな2種族間の優劣。 だからと言って、憐れだとか庇護すべき対象とは思っていない。生き残りと言えば希少な気はするが、ただ図太くしぶとく人間を貪り喰ってきただけの奴ら。出会った当初は、ただただ忌むべき存在だった。 吸血鬼は特有の能力で若さを保っている。ノーヴァの実年齢は200歳を超えるらしいが、せいぜい12歳程度にしか見えない。 時々大人の姿になるのだが、体力を使うとかで俺の血を大量に吸うから禁止した。超絶美少年で、稀に超絶美男。腹が立つほど見目麗しい。 ヴァニルは20歳そこそこの見た目だが、実際は300歳を超えているらしい。吸血鬼の平均寿命って何歳なんだろう。年齢詐称ジジイのこいつは、銀髪紅眼のくっそイケメン野郎。そして、絶望的な変態だ。絶対に女は喰わないらしい。 俺のような容姿端麗な若い男が好みらしく、選り好みが激しい。俺がノー