いつも厳しいお医者様の白川先生。 なのに突然の誘いで、彼の優しい一面を知り、今まで知らなかった男性としての魅力に気づかされた。 総合病院でただ真面目に働いていた私に、たくさんの甘いセリフが注がれるようになり、仕事もプライベートも、白川先生にしつけられているような気がした。 産婦人科医の七海先生や、同僚の歩夢君とも急接近して…… 3人の超イケメンに囲まれて、明らかに今までとは違う日常に戸惑いを隠せない。 恋愛なんて、まだまだ先の話だと思ってたのに…… 私、本当は誰が好きなの? この先……いったいどうなってしまうの? 超イケメン外科医 白川 蒼真 29歳 × 新人看護師 蓮見 藍花 24歳
View More「もっと激しくしてやる。覚悟して」毎回、私を狂わせるくらい、蒼真さんに攻められる。こんなにも激しくしつけられて、私は……あなたという底の無い沼から抜けられなくなってしまった。「蒼真さん、そこ、気持ちいいです」「本当?こんなところがいいんだ。また1つ感じる場所が増えたな。藍花の体はしつけがいがある。触れれば触れる程に敏感になって……。じゃあ、ここは?」どんどんあなたにハマる感覚を、私はこの上ない「幸せ」だと思える。この人だけの物になりたい。私の全部を蒼真さんにあげたい。離れたく……ない。心から強く思った。「ずっと一緒だ」「……はい。嬉しい……です」温かな胸に抱かれ、お互いの肌が触れ、私達は愛に満ちた最高の世界にいつまでも身を置いた。***そして、月日は流れ、私は体の異変に気づいた。すぐに病院に行く。予想は的中していた。私は、蒼真さんとの子どもを授かった――感動で涙が溢れ、止まらなかった。いつかはもしかして……と思っていた。勢いでそのまま抱かれた時もあったし、でも、気をつけようなんて、お互い言わなかった。だから、当たり前と言えば……当たり前だった。私はこの状況をすごく嬉しく思ったけれど、蒼真さんはどうなんだろう?もしかして私はフラレるのだろうか?そう思ったら心底怖くなった。そんなことはない、絶対に蒼真さんは私のことを大事にしてくれる。きっと、大丈夫――それにしてもいつ話そうか?頭の中にいろんな思いが巡る。確かに不安は拭いきれない。私は、蒼真さんの部屋に招かれた日、ちゃんと打ち明けようと決意した。いつものように食事をしてから、ドキドキしながら話を切り出した。「あの……蒼真さん」「ん?」こちらに顔を向け、蒼真さんは私をじっと見た。「あっ、あの。えっと……」かなり不安げな表情だったのか、蒼真さんは心配そうに眉間に皺を寄せた。「大丈夫?落ち着いて。ゆっくりでいいから何があったのか話して」「……は、はい」
そして、とろけるような刺激が私を包む。私の全てが蒼真さんに支配されていく……充分に敏感になった場所を、胸から順番に下に向かって何度も触れられ、私は更に深く高揚する。「あぁっ……ダメっ。蒼真さん……」「まだだよ。まだ……我慢だ」「意地……悪」繰り返される執拗な指の動きに、私はどうしようもなく淫らになる。蒼真さんの前では一切理性が効かない。制御不能になり、2人ともブレーキをかけることができず、ますます激しく震えるほどに乱れていく。私のこんな姿は誰にも想像できないだろう。普段の見た目との違いに、きっと引かれてしまうに違いない。自分でさえも、快楽に溺れる自分を受け入れられずにいるのだから――蒼真さんはお構い無しに私を愛撫する。体の全部の気持ち良いところを1つ1つ丁寧に。そんなところをそんな風にされたら……もうどうしようもなく気持ち良くて、我慢などできない。「もっと声出していいよ。藍花の思い通りにしてやるから」「思い通り……?」「ああ。どうしてほしい?」「……あ、あの……」私の望んでいることは何?こんなに体が熱いのに、まだまだ求められておかしくなりそうだ。だったら止めてほしい?私の本当の望みはいったい何なの?きっと私は……最高に気持ちいい瞬間がほしい――私は、「もっともっとしてほしいんでしょ?」と、悩める自分の心に問いかけた。「もっと……して。お願い、蒼真さん……」気がつけば、そんな恥ずかしいセリフを発していた。これが私の本性なのか?だとしたら、私、確実に……あなたにしつけられてこうなったんだ。ごく控えめだった私の中から、恐ろしい程淫らな部分を蒼真さんが引き出した。1から10まで全部、あなたに調教されて、私は女としてのこの上ない喜びを知ってしまった。不思議だ。もう私は、以前のつまらない自分には二度と戻りたくない――と、心で叫んでいた。
「藍花、好きだよ……」「私もです。蒼真さんとの時間がすごく大切です」部屋の明かりはついたまま。私達はベッド入り、隣り同士並んでる。布団の中ではお互い何もつけていない。肌と肌が触れ合う感覚に、さっきからずっとドキドキしている。「僕もだ。今までは医学のこと以外に費やす時間なんてほとんど無かった。ジムに行ったりするくらいで、食事も簡単に済ませてた」「蒼真さんは勉強熱心ですから、みんな言ってます」だからこそ無敵なんだ。どこまでも外科医として努力する姿がカッコよくて、私は心底尊敬している。「それももちろん大事だ。勉強することは止めない。でも今は……藍花との時間が1番大切なんだ。この時間があるからまた頑張れる。今となっては、もうお前がいないと頑張れない」「そんな、そんなことないですよ。蒼真さんはいつだって……」言葉を続けようとした瞬間、そっと唇を塞がれた。「こんなこと言われたら失望する?」私は首を横に振った。「もし藍花がいなくなったら……俺、そう思うと本気で怖くなるんだ。情けないよな」「蒼真さん……。情けないなんて思いません。失望なんてするわけないです。蒼真さんは頑張り過ぎるくらい頑張ってます。そんなすごい人にそんな風に言ってもらえることは……やっぱり素直に嬉しいです」今度は私のおでこに優しくキスをした。「藍花。お前がもし患者さんのことを思うなら、絶対に一生俺から離れるな。藍花が側にいてくれたら俺はもう何も怖くない」そう言って私を抱き締める腕の強さに、何とも言えない安心感と男らしさを感じた。守られるって……こういうことなんだと。「いいな?絶対に俺から離れるな」私を間近で見つめながら甘く囁くその顔が、あまりにも美し過ぎる。この世にこんな美しいものが存在するなど、理解に苦しむほどだ。「私、離れません。ずっとあなたの側にいさせて下さい」「その言葉を待ってた。藍花……お前の全部を俺の物にしたい。俺だけのものに……」何度も何度も繰り返して押し寄せる甘いセリフの波。その波に飲み込まれて溺れてしまいそうになる。
「藍花さん」「ん?」「……やっぱり僕、あなたのこと……」「……」「ずっと考えてしまいます」歩夢君は、小さな声でそう言った。「……」そう言われて、言葉が上手く続けられない。「でも、藍花さんには好きな人がいるから……僕達は恋人にはなれないんですよね」「歩夢君、ごめん……」「いやだな~。僕は藍花さんの笑った顔が好きなんです。そんなしんみりした顔しないで下さい。好きな人にはずっと笑顔でいてほしいです。あなたが笑顔なら、僕はそれだけで嬉しい。藍花さんが幸せなんだってわかれば……それでいいんです」「そんな……。歩夢君、優し過ぎるよ」七海先生と同じだ。私は、歩夢君にももっと別の世界を見てもらいたい。いろいろな人に出会い、新しい道を進んでほしい。「僕はこれから仕事も頑張っていきます。だけど、あなたを想うことも止めませんから。あなたが誰を好きでも構いません。迷惑だとは思いますけど、もうしばらく……藍花さんを好きでいさせて下さい。今日はそれが言いたくて」「歩夢君。すごく嬉しいけど、でも、私にこだわらず、新しく好きな人ができた時には、必ずその人を大切にしてあげてほしい。私に申し訳ないなんて思わずに、ちゃんと前に進んでね」「……ですよね。ずっと想ってるなんてやっぱり迷惑ですよね」「ううん、迷惑なんかじゃないよ。だけど、あなたの大切な人生だから。歩夢君の未来はキラキラ輝いててほしい。私だって……君に笑っててもらいたいよ」「……笑って……?」「そうだよ。歩夢君の笑顔はみんなを元気にするパワーがあるの。そのパワーで患者さんが元気になるんだよ。歩夢君が悲しい顔をしてたら、みんな元気もらえなくなる……」「……パワーありますかね?」「あるよ!もちろん」「だったら、ずっと笑っていないとダメですね。僕が誰かの役に立てるなら……」「うん」「もし、僕にも誰かを想える時がもし来たら……藍花さんのいうように、その人を大切に……しますね。まあ、もしそんな人が現れたら……ですけど。あっ、駅に着きました。あっという間です、早いですね」歩夢君はつぶやくように言って、口角を上げてニコッと笑った。「ありがとう、歩夢君。君の笑顔で私も元気になれるから……感謝してる。本当に……いろいろありがとう。明日からもまたよろしくね」「はい!藍花さんと一緒に働けるだけで僕は幸せです。
「ごめんなさい。本当に……」頭を深く下げる春香さん。「ありがとうね、そんな風に言ってくれて。でも、自分の責任だから本当に気にしないで」「……あ、ありがとう。私……今日、蓮見さんと話せて良かった。じゃあ、行くね。また……会えるかな?」「うん、必ず会おうね。寂しいけど、元気でね」「白川先生と、お幸せにね」「えっ!?」「恋愛経験が無い私でもさすがに見てればわかるから」春香さんにも、七海先生にも当てられてしまったということは、自然に顔に出てしまっているのだろうか?気づかないうちにニヤけていたのかも知れない。だとしたら、かなり恥ずかしい。「う、うん。ありがとう」春香さんは、ほんの少しだけ手を振って、そのまま去っていった。「あんなに笑顔が素敵な人だったんだ。だから、これから先は大丈夫だよね」春香さんは、これから先の人生、きっと自分らしく前向きに生きていける。背中を見送る私の心は、嬉しさと安心したせいか、ポカポカして温かくなった。ナースステーションに戻ると、歩夢君がいた。「どこに行ってたんですか?」「あ、うん。春香さんと話してた」「そうなんですか……。春香さんが辞めてしまうなんて、寂しいですよね。七海先生もいないし……」「うん。寂しいよね。でも、春香さんはきっとまたどこかで看護師を続けると思うし、元気に頑張ってほしいよね」「はい。本当にそう思います。春香さん、看護師として今まで頑張ってたから……」歩夢君のこの言葉。春香さんが聞いたら嬉しいだろう。「まだまだこれからだよね。春香さんも、そして私達も。患者さんのためにしっかり頑張らなきゃ」「頑張ります!あっ、あの、藍花さん。今日、仕事終わってから少し話せますか?」「えっ、あ、うん。大丈夫だけど……どうしたの?」「藍花さんと2人でちゃんと話すのは今日が最後です。あっ、もちろん僕まで病院を辞めるわけじゃないですよ。ただ……改まって話すのは最後……ってことです」「……うん。わかった。実は私も話したいことがあるの」「そ、そうなんですか……。わかりました。話しましょう」蒼真さんとのこと、ちゃんと言わないと……***そして、夜になり、私は歩夢君と2人、病院を出て駅に向かってゆっくりと歩いた。「ごめんね、歩きながらで……」「いえ、突然僕が声をかけてしまったので、すみません」歩夢君
「蓮見さん……あなたって本当にお人好し」そう言って春香さんは笑った。「素敵だよ、その笑顔。春香さんには笑顔が良く似合う。本当に可愛い」目を細めて微笑む春香さんを見て心からそう思った。「蓮見さん。私、別の病院で看護師続けるから」「えっ」「本当は全て投げ出して逃げたいって思ったけど……。確かに私の輝ける場所は看護師しかないから。患者さんのために何かしたい。あなたに言われて……気持ちが変わった」「本当?だとしたらすごく嬉しいよ。絶対に看護師を続けてほしい」こんな短い時間で気持ちを変えてくれたなら、勇気を出して話しかけて良かったと思えた。すごくホッとして、安心した。「恋なんか、しばらくはしたくない。どこか自分を働かせてくれる病院を見つけて、看護師として絶対に患者さんのために頑張る」その顔は、さっきまでとは違って覇気のある表情に変わっていた。「うん、春香さんなら大丈夫。その笑顔があれば絶対大丈夫だから。新しい病院で頑張ってね。私、ずっとずっと応援してるから」それに、今の春香さんなら、きっと新しい恋だってできる。いつか必ず素敵な人と出会えるに違いない。「……ありがとう。ねえ、蓮見さん」突然、改まった顔で私を見た。「何?どうかした?」私が聞くと、春香さんは下を向いてしまった。「どうしたの?大丈夫?」「あ、あの、この前、蓮見さんが足に怪我したの……あれ、私の責任だから」春香さんから急に笑顔が消えて、真剣な表情に変わった。「……ううん、それは違うよ。あの時はね、私の不注意だったんだ。私がフワフワしてて、仕事に集中してなかったから。私が悪いの、だから気にしないで」私はニコッと微笑んだ。気にしてくれていただけで十分だ。「私……すごく意地悪だったと思う。突然声をかけてしまったから蓮見さんがびっくりして。それなのに私は……」「だから違うって。もう足も全然治ってるしね」「本当に?ちゃんと治ってるの?」「本当だよ。もう痛くないよ」「あの時は……痛かったと思う」「……白川先生にね、落としたのが患者さんの足だったらどうするんだって言われてハッとしたよ。本当に私で良かったよ。それに…他に良かったこともあったから」そう、あの怪我のおかげで私は……蒼真さんとの距離が嘘みたいに近づいたんだ。
「あなたにそんな風に言われるなんて思ってなかった……。私は、今までずっと誰にも相手にされずに生きてきました。でも来栖さんは違って、こんな私に笑いかけてくれたんです。気づいたら、私、来栖さんのことを……。初めて人を好きになったんです。大好きなんです、歩夢君のことが。でも恋愛なんてしたことがないから、どうしたらいいのか全然わからなくて……」春香さん、今、歩夢君って……本当はそう呼びたかったんだ……「歩夢君の笑顔、素敵だもんね。あんなに優しく笑える人、他にいないよね」春香さんはうなづいた。「私は全然ダメだから、歩夢君に振り向いてもらえない。フラれるに決まってる……そう思うと何だか悲しくなって。いつしか蓮見さんに対してイライラして……あなたにあたってしまってました」言葉のトーンが明らかに今までとは違って穏やかになっている。それが何だかとても嬉しく感じた。「春香さんは全然ダメなんかじゃないよ」「えっ?」「自分に自信がないのは私だって同じなんだから」「は、蓮見さんが!?う、嘘でしょ?みんなから好かれているあなたがどうして?」春香さんはものすごく驚いた顔をしている。私が自分に自信のある人間だと本気で思っていたようだ。「本当だよ。ずっとずっと昔から自信がなくて苦しかった。どうしてって聞かれても理由とか理屈とかじゃなくて、そうだから仕方ないんだよね。でもね、やっと好きな人ができて、今はほんの少しだけ前向きになれたし、その人を信じようと思えてるの」「蓮見さんみたいに可愛い人が自信がないなんて……信じられない」「可愛いくないよ、別に。私もずっと上手く恋愛できなくて悩んでたから」「やっぱり信じられない。もし私が蓮見さんみたいに可愛いかったら、絶対に自信持つと思う。ねえ、蓮見さん。私なんかがこれから少しでも前向きに変われるのかな?」春香さんの言葉は、いつの間にか敬語ではなくなっていた。なんかいいな、こういうの……心が自然に温かくなる。「大丈夫、もちろん変われるよ」「ほんとに?」前のめりに私に訊ねる春香さんがとても可愛く思えた。「でもね、笑顔を忘れないで。春香さん、絶対ニコニコしてた方が可愛いから。誰かを好きになったら……笑ってて。そしたら自然に優しい気持ちになれるよ。きっと、春香さんらしく輝けるから。イライラなんかしてたらもったいないよ」
「ありがとうございました」その言葉だけを置いて、春香さんはナースステーションを去った。七海先生に続いて春香さんまで……しかもあまりに突然で驚いた。私は、帰ろうとしていた春香さんを追いかけた。少し話したいと言うと嫌な顔をされたけれど、結局、中庭で話すことになった。「ごめんなさい。無理やり引き止めて」今日で最後だと思うとどうしても聞いておきたかった。春香さんが辞める理由を――「いったい何ですか?あなたと話すことなんて何もないです」冷たい表情に一瞬心が揺らぐ。「は、春香さん、看護師辞めてこれからどうするの?この仕事、好きな仕事だったんじゃ……」「あなたには関係ないです。もう、はっきり言います。私はこの病院にいたくないんです。あなたのいるこの病院に」胸に何かがグサッと刺さったような気がした。「春香さん……私のせいで辞めちゃうの?」そうなら、本当に悲しすぎる。「はい。これ以上、あなたの顔を見たくないですから。それに……来栖さんの顔も……」「歩夢君のことも?」「すごくつらいです。あなたを好きな来栖さんを見てるのが」「……」「来栖さんはあなたのことを好きなのに、あなたは違う人が好きで。それなのに、あなたに微笑みかけてる来栖さんを見たら……私はとても苦しくなります。これ以上ここにいて、仕事に支障が出て迷惑かけるのも嫌なんです」「春香さん……ごめん……なさい」つらそうな春香さんの顔を見ていたら、なぜだか涙が出てきた。「えっ……。どうして泣くんですか?」春香さんは、私の突然の涙にびっくりしたようだった。「ごめん。私、春香さんの気持ち、今なら少しわかるよ。つらいと思う……好きな人が別の人を見てるのって。私もやっと本当に好きな人ができて、その人がもし……って考えたらやっぱり悲しいから」「……」「春香さんが歩夢君を想う気持ちが深いのはわかる。だからこそ私が許せないんだよね。でもね、私にはこの状況をどうすることもできない。私には好きな人がいて、歩夢君のことは仲間だと思ってる。ただそれだけなの。私はこの仕事が好き。だから春香さんが辞めてしまうのは……すごく残念だよ」
「元気でいないとね。でも、君と次に会えた時にはもっともっと腕の良い産婦人科医になっていたいから、つい頑張ってしまうかも知れないな」七海先生はまた、ニコッと微笑んだ。その笑顔があまりにも眩し過ぎて、私は、七海先生のことを絶対に忘れたくないと思った。「ダメですよ。無理は禁物です」「はいはい、わかったよ。君は本当にいい奥さんになるね。僕は、君を忘れない。ずっとずっと一生忘れないよ。藍花ちゃんは、僕の全てをかけて愛した女性だからね。たとえ、僕が誰かと結婚したとしても、君との思い出は決して消えることはないから。じゃあ、ここで……」先生はそう言って椅子から立ち上がった。胸が熱くなるセリフに心から感謝が溢れた。誰か素敵な女性と結婚して幸せになってもらえたら……私はそれが一番嬉しい。「先生、お元気で」「藍花ちゃんも元気でね。またね」「はい、また……。本当にありがとうございます」「ありがとう」私達は笑顔で手を振って別れた。これで、本当に最後かも知れない……七海先生、素敵な思い出をありがとうございました。私は、心の中でもう一度お礼を言って、先生と本当のさよならをした。グレースホテル東京を出た瞬間、ふと見上げた空は、まるで七海先生の新しい人生の出発を見守るかのように、とても爽やかに晴れ渡ったっていた。
「おはようございます、前田さん。どうですか?傷口痛みますか?」「あっ、蓮見さん、おはようございます。ええまあ、傷はずいぶん良くなったと思います」病室の窓から穏やかな秋の朝日が優しく差し込む。今日も、看護師としての1日が始まる――私の名前は、蓮見 藍花(はすみ あいか)、24歳。160cm、自分では普通の体型だと思っているけれど、たまにスタイルいいねって……恥ずかしいけど褒めてもらえる時がある。看護師である以上、常に笑顔は心がけていて、化粧もあまり派手にならないようナチュラルにしている。茶色でボブスタイルの髪型は、昔からあまり変わっていない。「おはようございます。前田さん、傷口、どうですか?」「ああ!白川先生。おはようございます」病室に後から入ってきたのは、我が「松下総合病院」の外科医、白川 蒼真(しらかわ そうま)先生。白川先生は、前田さんの主治医だ。まだ若手の先生だけど、周りからの信頼はとても厚く、医師としての腕はかなり評判がいい。いづれはこの病院のエースになる人だ。老若男女を問わず、患者さんにダントツ1番人気の理由は、腕が良いだけでなく、超イケメンな美しい顔と、このモデルのようなスタイルも関係しているだろう。180cmで細身、髪型はアッシュグレーのナチュラルショート。前髪は少し長めのセンターパートで、前髪からサイドに流れをつけている。整えられた眉に二重で切れ長の目。艶のある大人っぽい薄めの唇、高い鼻。その端正な顔立ちに、初めて見た人はみんな驚く。あからさまに赤面する人や、急にお喋りになる人、逆に恥ずかしくて緊張してしまう人……女性なら興味をひかれるのは仕方がないだろう。私だって、最初は「こんな素敵な男性が世の中にいるんだ」と、とても驚いたから。学生時代にオシャレ雑誌のモデルも経験済みらしいけれど、そんな華やかな世界には進まずに、医師になるなんて、少しもったいない気がした。...
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