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第036話

杏奈の電話を切った後、紗月は急いでLINEを開いた。

やっぱり。

トレンドのトップには「理恵の生配信で号泣」というタイトルが載っていた。

紗月はそのトレンドをタップし、理恵の生配信を見た。

画面では、理恵が椅子に座りながら涙を流し、わざとらしく悲しげな表情を浮かべていた。「皆さん、あの噂を信じないでください......涼介と私は本当に愛し合っています。彼を信じたいんです。

皆さんが見たものは真実ではありません。どうかデマを広めないでください。涼介はそんな浮気をするような人ではないんです」

理恵の偽りの涙を見て、紗月は内心で嫌悪感を覚えた。

この女、さすが女優だ。演技の腕前は一流だ。

涼介が浮気をしなかった?

それなら、彼が理恵と一緒になった理由は何だったのか?

「ママ、何見てるの?」

あかりが最後の服を着て部屋から出てきたとき、紗月が冷笑してスマホを見ているのに気づいた。

あかりは興味津々に近づいてきた。

紗月は素早くスマホの画面をロックし、「なんでもないわ」と微笑んだ。

それから、あかりが着ている黄色のトップスとキャラクターのサロペットを見て、「可愛いね」

その言葉で、あかりの注意は完全に自分の服装に移った。

あかりは鏡を見ながら興奮気味にうなずいた。「ほんとに可愛い!」

「パパ、センスいいじゃん!」

紗月はわずかに笑みを浮かべながら、あかりの興奮した様子を見つめたが、本当はこの服を選んだのが自分だとは言わなかった。

二人がクロークを出ると、紗月の視線は涼介が彼女に買った二着の服に向かった。

心に一抹の苦さが広がった。

かつて三年間、無償で涼介を愛した。

その三年間、彼は一度も彼女を気にかけることはなく、服を買ってもらうことなど夢のまた夢だった。

今はただのメイドという立場でありながら、彼の手から以前は考えられなかったものを手に入れた。

結局、涼介は優しさを知らないわけではなく、女性に優しくしないことは言うまでもなかった。ただ桜井紗月という女にはその優しさを見せなかっただけなのだ。

彼女は気持ちを整理し、あかりを落ち着かせてから、キッチンに向かった。

その途中で杏奈からのメッセージが届いた。「紗月、どうするつもり?

私たちみたいな普通の人間は、デジタル暴力に巻き込まれやすいわよ!」

紗月は淡々と返事を送った。
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