第041話

白石がコーヒーを持ってきたとき、涼介はまだコンピュータと向き合い、奮闘していた。

画面に映し出されたプログラムコードを見て、白石はまるで暗号を見ているかのように呆然としていた。

彼はコーヒーをテーブルに置き、「社長、何年も自分でこういうことを処理していませんでしたよね」

涼介は軽くうなずき、コーヒーを飲み干した。

彼は長い間、これほどの挑発を受けたことも、これほどの怒りを感じたこともなかった。

コーヒーカップを置き、骨ばった手で再び相手とのデジタル戦争を続けた。

一層、二層......そして、五層目のファイアウォールが破られたとき、病室にいる響也はすでに汗だくだった。

相手が凄腕だと認識していたが、これほどまでとは思わなかった。

彼が誇りに思っていたハッカー技術が、この相手の前では全く防御にならなかったのだ。

「ピーピー！」

コンピュータが不快な警告音を鳴らし始めた。

システムは、相手が響也のIPアドレスを特定し、さらにはカメラや音声機器まで操作しようとしていることを知らせていた。

この人、響也を完全に暴こうとしている！

響也は額の汗を拭い、最終的な攻撃を受ける前に、コンピュータを完全に初期化した。

画面に初期化完了のメッセージが表示されると、彼は即座に電源を切り、病室内のネットワーク接続を切断した。

涼介の攻撃は失敗に終わった。

最後の瞬間、相手は防御を放棄し、すべてを初期化した。

初期化は、コンピュータ内のすべてのデータを削除することを意味し、敵に大打撃を与えつつ自分も大きな犠牲を払う行為だ。

「くそっ！」

涼介の目に怒りが浮かび、鋭い表情が部屋全体を冷やしていた。

あと少し、あと少しで相手を捉えられたのに！

一方、大洋の彼方にある病室では、響也も同じように追い詰められていた。

彼のコンピュータには、これまでの重要なデータが大量に保存されていたが、それらはすべて初期化され、失われてしまったのだ。

ベッドの枕にもたれ、響也は荒い息をついていた。

やっぱり、あの父親はただ者じゃないな......手下にこんな凄腕のハッカーがいるとは！

軽々しく透也の言うことを聞いてしまった自分を後悔していた。

「響也」

先ほどのコンピュータの警報音に驚いた金髪碧眼の看護師が、病室のドアを開けて優しく声をかけた。「大丈夫？」

響也