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第094話

透也はまだ6歳なのに、その言葉はまるで26歳の大人のように成熟していた。

紗月は静かにため息をつき、返信した。「佐藤夫人の誕生日宴が終わったら、青湾別荘を出るつもりよ」

「その後、あかりを一人で残すの?」

「ええ」

「それなら、まず理恵の問題を片付けなきゃ」

透也からの返信は早かった。「今回の火事に関して、爽太がたくさんの重要な証拠を保管してるよ。たとえ涼介が無視したとしても、この資料を警察に提出すれば、理恵は数年間出てこれないだろう」

紗月は再びため息をついた。

透也は、いつもこんなに分別があった。

「この数日、あかりをよく慰めてあげてね。あかりは私が離れるのを嫌がっているから」

「あかりを涼介のもとに戻すように勧めたのは透也なんだから、責任を持って解決してね」

電話の向こうで、透也はしばらく黙っていた。

そして、透也は何も言わずに、「杏奈が帰ってきた」とだけ伝え、紗月との会話を終えた。

さらに時間が経った頃、紗月の携帯に再びメッセージが届いた。今回は響也からだった。

「ママ、あかりのことは僕に任せて」

「あかりは僕の言うことを一番よく聞いてくれるから」

「ママと透也は、理恵の件に専念して」

響也が紗月にメッセージを送るのは珍しいことだった。

その文字を見て、紗月は深くため息をついた。「ありがとうね、響也」

「大したことじゃないよ」

響也もため息をついてから、こう続けた。「ママ、実は......僕自身は、長く生きられなくても構わないと思ってるんだ」

「でも、ママのことが心配だし、透也やあかりのことも気がかりなんだ」

「ママはたくさんの痛みを抱えているのに、結城さんのことも拒んでるし、ママがこのままでは幸せになれないんじゃないかって心配してるさ」

「透也は賢いけど、ちょっといたずらっ子で、全体を見渡す力が足りないさ。いつか大きな失敗をするかもしれないよ」

「あかりはわがままで、感情的だし、よく泣き叫んでるさ」

「本当に、君たち3人のことが心配だからこそ、もっと生きたいと思ってるんだよ」

「でも、もし僕を助けるためにみんなが苦しむなら、むしろ死んだほうがましだよ」

紗月は目を閉じ、しばらく黙っていた。

「そんなこと考えないで。必ず響也を治すわ」

「私たちはみんな、幸せになるのよ」

そのメッセージを送り終えた後、
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