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第097話

透也は真剣な眼差しで涼介を見つめた。「どうか僕を失望させないでくださいね」

そう言い終えると、透也は決意を込めてスマートフォンを取り出し、クラウドに保存していた証拠データをすべて削除した。

透也は賭けに出たのだ。

涼介があかりのために、そして紗月のために、理恵を排除してくれると信じて。

あの日、涼介のパソコンで見た内容が、ずっと透也を悩ませていた。

今回の件で、彼は涼介が本当に母に対して深い愛情を持っているのか、それとも自分自身を欺いているだけなのかを確かめたかった。

透也が証拠を消すのを見届けた涼介は、薄く笑みを浮かべた。「それほどまでに俺を信じているのか?」

透也は涼介を見上げ、狡猾な目つきで答えた。「まさか、佐藤さんご自身が信頼できない人間だとでも思っているのか?」

「ただ気になったの」

「もし俺が嘘をついていて、理恵を何もしないなら、どうするの?」

透也は果汁を一口飲み、「もしそうなったら、佐藤さんは多くの大切なものを失うと思うよ」

そして、空のグラスをテーブルに置き、椅子から軽やかに飛び降りた。「それじゃ、これでね」

そう言い終えると、透也は後ろに手を振り、振り返ることなくカフェを後にした。

涼介の背後に立っていた白石は、少年が去る姿を見て驚愕した。「あの子、本当に6歳なんですか?」

彼は自分よりも成熟していると感じた。

恐ろしいほどだと思った。

透也が紗月の息子だと思うと、白石は紗月までが少し怖く感じた。

涼介は淡々とコーヒーを一口飲み、「俺も6歳の頃、あんなもんだった」

白石:「......」

やはり天才は同じで、凡人はそれぞれ異なった。

白石は深呼吸し、テーブルに置かれたタブレットを見た。「これ、今すぐ警察に持って行きますか?」

「急ぐな」

涼介は骨ばった手でタブレットを手に取り、じっと見つめながら言った。

「しばらく理恵を監視しておけ、今は動かないさ」

白石は驚いた。「動かないんですか?」

これまで、白石は理恵の側に立っていたが、それは彼女が涼介の五年間の婚約者だったからだ。

だが、今や証拠は揃い、理恵は二度もあかりを危険にさらした。

そのような状況で、涼介が彼女を放っておくとは?

「何か意見があるか?」

「い、いえ......ありません」

白石はしばらく迷ったが、結局言わずにはいられなか
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