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第098話

しかし、不思議なことに、この数日間、理恵はまるでこの世から蒸発したかのように姿を消していた。

ニュースでは、彼女が体調を崩し、いくつかの映画契約をキャンセルして自宅で療養していると報じられていた。

最も大事にしていた授賞式さえも欠席していた。

そして、智久の情報によると、理恵は最近ずっと自宅にいるといった。

涼介の部下が彼女を守っているらしい。

紗月はこの知らせを見て、一瞬呆然とした。

涼介の部下が理恵を守っている?

なぜ彼女を守る必要があるのか?

まさか、誰かが理恵に危害を加えることを心配しているの?

冗談じゃない、今までずっと他人を操っていたのは彼女自身じゃないのか?

そう思うと、紗月は苦笑し、顔に一筋の嘲笑が浮かんだ。

結局、涼介が本当に愛している人に対しては、こんなにも慎重なんだな。

理恵があかりを裏切り、何度もあかりを危険にさらしたとしても、理恵の安全を気にかけ、彼女の公の活動を中止させ、自宅周辺に警護を付けた。

そんな姿は、かつて理恵のために自分を犠牲にしようとした涼介と重なって見えた。

そうだ。

六年前も、彼は同じだった。

今更何を驚くことがあるだろう?

「紗月」

突然、病室のドアがノックされた。

紗月は慌てて携帯をしまい、顔を上げた。

病室のドアの前には、白い服を着た白石が立っていた。

彼女は眉をひそめ、「何か用?」

「明日は佐藤夫人の誕生日宴ですよ」

白石は軽く咳払いをしながら言った。「佐藤さんが伝えてほしいとのことですよ。今日は外に出て、買い物でもして、明日のためにあかりのスタイルを整えておいた方がいいと」

「明日、佐藤さんと夫人はみんなの前であかりの正体を公表するので、きちんとした格好をしておく必要がありますよ」

「わかった」

確かにあかりの準備をきちんとしてあげる必要があった。

何しろ、明日からあかりは佐藤家で一人で生活することになるのだから。

明日の誕生日宴は、あかりが公に名乗りを上げる日であり、独り立ちする日でもあった。

紗月はあかりを連れてショッピングに行くことにした。

これまで外出のたびに問題が起きていたので、今回はあかりと一緒にただ簡単にショッピングモールに行くだけだったが、後ろには10人以上のボディガードが付き添っていた。

かつて海外にいた頃、紗月はいつも忙しくて、あか
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