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第100話

友美は目を伏せながら話し始めた。「あかりは私の長女が産んだ子供なの。長女は今、生きているかどうかもわからなかった。だから、せめて孫娘とはもっと親しくなりたいの」

「お願いできる?」

紗月は唇をかみしめた。「いいですよ」

本当なら断るべきだった。

しかし、目の前にいるのはかつて自分にとって一番近い存在だった母親だ。どうしても「ダメだ」と言えなかったのだ。

「何で彼女に許可を取るの?」

理恵が目を細めながら不満そうに言った。「ただのメイドじゃない?母さんはあかりの外祖母よ。あかりと一緒に食事するのに、彼女の意見を聞く必要なんてないでしょ?」

友美は振り返り、たしなめるように理恵を睨んだ。「これは彼女の仕事だから、ちゃんと確認しないとね」

そう言うと、再び紗月に向き直り、謝るように言った。「ごめんなさいね、この子は昔から甘やかされて育ったから......」

その場に立ち尽くした紗月はそんな友美を見て、複雑な感情が湧き上がってきた。

かつては自分がその友美に大事にされ、甘やかされて育った。

しかし今や他人のような立場になっているなんて。

紗月から許可をもらうと、友美はあかりを抱きかかえ、レストランへ向かって歩き始めた。

紗月と理恵もその後に続いた。

「あんた、一体何やってるの?」

理恵は腕を組み、高慢そうにあかりの背中を見ながら、冷たく言い放った。「たかがその子のために何度も命を懸けるなんて」

「でも結局、彼女は姉の娘で、母さんの孫よ」

「私たちが本当の家族よ」

「あんた?」

理恵は鼻で笑った。「あなたなんか、家族でもなんでもないわ」

紗月は目を伏せ、黙っていた。

「でも、安心して。まだこの子に何かするつもりはないわ」

理恵は、遠くにいる監視者たちを一瞥しながら言った。「涼介が大事にしてる子だから、手出しできないの」

理恵は今のところ手出しできなかった。

そのことを思うと、理恵は紗月が憎らしくてたまらなかった。

あの忌々しいメイドがいなければ、とっくにあかりなんて始末できていたのに!

こんな面倒なことになるなんて、誰が思っただろう?

紗月は冷静に彼女を見つめ、静かに言った。「あかりはまだ6歳の子供よ」

「だからどうしたっていうの?」

たとえ6歳の子供であっても、理恵にとっては心に刺さった棘のような存在だった。

桜井
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