秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない

秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない

last updateLast Updated : 2025-01-23
By:   ひなの琴莉  Updated just now
Language: Japanese
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4 ratings. 4 reviews
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Synopsis

純愛

泣ける

アーティスト

OL

むずきゅん

妊娠

初恋

「過去に私はあなたの子を妊娠・流産しました」元カレは誰もが知っている芸能人。 紫藤大樹 <しどう だいき>は、COLORというアイドルグループのメンバー。 今は番組の司会・ドラマにも出ている。 初瀬美羽<はせ みう>は、甘藤-amafuji-というフルーツメーカーのOL。 しっかりして見えそうだけどピュア。 10年前、2人はだんだんと仲良くなり恋人に。彼は芸能人として才能開花。ところが妊娠が発覚し芸能事務所から身を隠してほしいと依頼を受け、一人で子供を産んで育てようとしたが流産。美羽は社会人になりフルーツメーカーの広報部に配属。CMを作ることになりタレントとして起用されることになったのが大樹だった。

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プロローグ

プロローグ 「ハァー……」 時計は午前四時。 目が覚めると、瞳が涙で濡れていた。 玉のような汗をかいていて、額には前髪が張りついている。 また、あの日のことが夢に出てきたのだ。 ベッドから降りると『はな』の元へ行く。 そして、手を合わせた。たんぽぽの押し花しおりを胸の前でそっと抱きしめる。 「はな……」 ……はな。 ……はな。 私はその場で横になり悲しみの中、 入社してまだ間もない頃の会話をふっと思い出す――。 『ねえ、果物言葉って、知ってる?』 『くだものことば? 知らないです』 『誕生花や花言葉みたいなものよ。果物言葉は、時期や外観のイメージ・味・性質をもとに作ったものでね。果物屋の仲間が作ったんだって』 入社したばかりの頃、同僚が上司のいない時にホームページを開いて見せてくれた。 スクロールして調べた日は十一月三日。 誕生果は『りんご』で相思相愛と書かれていた。 誰かの誕生日ではない。 私と大くんが付き合った記念日だ。 二十一歳で入社した時は、すでに大くんと別れて二年以上が過ぎていたのに、自分にとっては忘れられない日だった――。 なぜ果物かというと……。 大学を卒業後、大手フルーツメーカーの甘藤-amafuji-に入社し、果物は身近な存在だったから。仕事に一生懸命取り組み順調に年齢を重ねていた。 一般的な悩みはあるだろうけどそんなに不幸なこともなく、普通の人生を歩んできたと人には思われているかもしれない。 私は過去のことを、誰にも打ち明けないで生きてきた。 十九歳の時。 恋は、愛は、果物のように甘いだけじゃないと知った。 人は傷つき、大人になっていく。 『あなただから乗り越えられる試練なのよ』 励ましてくれた母の言葉を信じて、悲しみを胸に抱えながら歩み続けて来たのだ。 傷は、いつか癒えるはず。 辛かった日々は、笑える日が来るはず。 そう思っていたのだけど、深い、深いところで傷ついていて、なかなか楽になれない。 相反して、あなたはいつもキラキラとした笑顔を振りまいていて、アイドルとして生きてとても楽しそうだ。 熱愛報道もされていたみたいだし。 電車や街にあふれる広告や、コマーシャルや雑誌で見るあなたのキメ顔をいつも...

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Comments

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ヨッシー
続き気になります。ありますか?
2025-01-26 22:37:37
0
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sasaki0503yo
面白くて感動的で素晴らしい小説です!
2025-01-26 14:30:19
2
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貴子
甘酸っぱさが伝わる。 続きが気になる
2025-01-24 06:38:19
2
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Molay
読んでいて、ドキドキ・はらはらしながらも、心が温まるストーリーでした!
2025-01-22 16:00:55
1
287 Chapters
プロローグ
プロローグ 「ハァー……」 時計は午前四時。 目が覚めると、瞳が涙で濡れていた。 玉のような汗をかいていて、額には前髪が張りついている。 また、あの日のことが夢に出てきたのだ。 ベッドから降りると『はな』の元へ行く。 そして、手を合わせた。たんぽぽの押し花しおりを胸の前でそっと抱きしめる。 「はな……」 ……はな。 ……はな。 私はその場で横になり悲しみの中、 入社してまだ間もない頃の会話をふっと思い出す――。 『ねえ、果物言葉って、知ってる?』 『くだものことば? 知らないです』 『誕生花や花言葉みたいなものよ。果物言葉は、時期や外観のイメージ・味・性質をもとに作ったものでね。果物屋の仲間が作ったんだって』 入社したばかりの頃、同僚が上司のいない時にホームページを開いて見せてくれた。 スクロールして調べた日は十一月三日。 誕生果は『りんご』で相思相愛と書かれていた。 誰かの誕生日ではない。 私と大くんが付き合った記念日だ。 二十一歳で入社した時は、すでに大くんと別れて二年以上が過ぎていたのに、自分にとっては忘れられない日だった――。 なぜ果物かというと……。 大学を卒業後、大手フルーツメーカーの甘藤-amafuji-に入社し、果物は身近な存在だったから。仕事に一生懸命取り組み順調に年齢を重ねていた。 一般的な悩みはあるだろうけどそんなに不幸なこともなく、普通の人生を歩んできたと人には思われているかもしれない。 私は過去のことを、誰にも打ち明けないで生きてきた。 十九歳の時。 恋は、愛は、果物のように甘いだけじゃないと知った。 人は傷つき、大人になっていく。 『あなただから乗り越えられる試練なのよ』 励ましてくれた母の言葉を信じて、悲しみを胸に抱えながら歩み続けて来たのだ。 傷は、いつか癒えるはず。 辛かった日々は、笑える日が来るはず。 そう思っていたのだけど、深い、深いところで傷ついていて、なかなか楽になれない。 相反して、あなたはいつもキラキラとした笑顔を振りまいていて、アイドルとして生きてとても楽しそうだ。 熱愛報道もされていたみたいだし。 電車や街にあふれる広告や、コマーシャルや雑誌で見るあなたのキメ顔をいつも
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  *   *   *はっと顔を上げて時計を確認するともう二十時だ。パソコンに向かって集中して仕事をしていたので気がつけばこんなに遅い時間になっていた。明日は、COLORのマネージャーとの打ち合わせだ。私が交渉するわけじゃないのに緊張している。新しい部署に来て一週間が過ぎたけれど、覚えることとやることがいっぱいあってストレスがかかっていた。他の社員はすでに退社して私は一人だった。ふぅーっと息を吐きだし、右手で肩を揉み首を回す。「揉んでやろうか?」コーヒーの香りと一緒に聞こえたのは杉野マネージャーの声だ。誰もいないと思ってリラックスしていたのに突然登場したので慌てる。「え、いえ……! けっこうです」「初瀬って案外ピュア?」「……え」「彼氏とかいるの? あ、こういうのってセクハラになっちゃうのかな……」ぼそっとつぶやいた杉野マネージャーは、私のデスクの隣に腰をかける。足が長いと感心してしまう。「彼氏なんていません。私みたいな地味な女は一生独身でしょうね」「ずいぶん、自虐的だな。可愛いのに」か、可愛いなんて。大くんに言われてから言われてない。ということは、もう何年も言われてないことになる。私はこの先、恋愛はしないつもりだ。もう、あんなに悲しい思いをしたくない。「交渉は俺がするから、初瀬はそんなに緊張するなって。早く帰ってしっかり寝て明日に備えろ。な」諭すように言われたので私は素直に頭をさげた。杉野マネージャーは自分のデスクに戻ったのを見届けて、私は帰る準備をはじめる。容姿がよくて気配りもできる杉野マネージャーなら、綺麗な彼女がいるんだろうなぁ。まだ独身で過ごしているのが珍しいと女性社員が噂しているのを聞いた。「お先に失礼します」「お疲れ様」部署を出てエレベーターホールに向かう。もし、あの時――。大くんを部屋に入れていなければ今とは違う人生を歩んでいたかもしれない。恋に怯えることなく、オフィスラブをして、結婚をして子供を産んで。忙しいけれど充実した毎日を送っていた可能性だってある。タラレバだ。過去に戻ることはできないし、その時自分で選んできた道なのだからこれからもその道の続きを歩き続けなければならない。
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家に戻ってテレビをつけると、大くんが司会をしているバラエティー番組がやっていた。いつもなら、すぐにチャンネルを変えるけど、今日はすごく大くんを思い出してそのまま見てしまった。相変わらずカッコイイ。美しい滑舌で話していて聞きやすい声だ。キラキラしている。CMに入ると、大人気モデルの宇多寧々(うだねね)さんが可愛い笑顔で映っている。大くんと熱愛報道が出た人だ。あの時、私は心から大くんを愛していたけど、今は別世界の人。ふたをしていた悲しくて苦しい気持ちがあふれてできそうになったので、テレビを消してソファーに横になる。「ふぅ」大くんは、はじめて家を訪れてから一週間後にふたたび来た。たしか、手作りのお弁当を持参して。お母さんが作ってくれるような、カラフルなお弁当だった。まだ会って二回目なのに顔を見た途端すごく安心したのを覚えている。本当にはじめは男性ということを意識してなかった。大学時代にいつも心配して仲良くしてくれていた真里奈〈まりな〉には、大くんのことは話していなかった。そうだ。真里奈に久しぶり電話をしてみようと電話を手に持った。番号を選んでコールを鳴らすとすぐ出てくれる。『もしもし? 久しぶり!』明るく元気な声だ。最近は、お互い仕事が忙しくて会えていない。「元気だった?」『うん! まあ、仕事は忙しいけどね。美羽はどう?』「実は部署が変わっていろいろと大変なんだ。CMとか作る部署でさ……」『すごいじゃない。かっこいい!』イメージキャラクターに大くんを使うことになったとは、まだ外部に情報公開できないのでいうことができなかった。「最近すごく昔のことを思い出すんだよね」過去にあったすべてのことを唯一知っている友人だ。『忘れるのはなかなか難しいよね。毎日のようにテレビにも出てるし。街を歩けば広告に使われていて記憶からなかったことにするっていうほうが難しいよね』「うん……。私のことなんてもう忘れてしまってるのかな」『忘れられるわけないじゃない。もし忘れていたら人として最低ね』大くんのことを、最低なんて言わないで。いまだに、大くんをかばってしまうのだ。『近いうちに呑みに行こうよ』「ありがとう」久しぶりに真里奈の声を聞いて元気が出た。大くんは、私を恨んでいるだろうか。憎んでいるだろうか。今でも、私を思い出してくれることはあ
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