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第一章 過去と現在が交差する6

last update Last Updated: 2025-01-09 15:50:38

「俺のこと、見たことある?」

はて?

紫藤さんの顔をじっと見るけど、こんなイケメンな知り合いはいない。

「その様子だと知らないみたいだね」

「ごめんなさい」

「仕方がないさ。深夜番組にやっと出られるようになったんだ」

「テレビ……ですか?」

コクリとうなずいた紫藤さん。通りでイケメンなわけだ。芸能関係の仕事をしているということになる。

COLORっていう……一応ダンスができるアイドルグループなんだ。まだまだだけどね」

「へぇ、踊れるんですね。すごいなぁ」

「まあね」

「サインもらっておかなきゃなぁ」

カレーライスを食べ終えて外を見ると雨は落ち着いてきたようだった。ということは、紫藤さんとお別れの時間になる。ちょっと、寂しいかも。

食器を洗ってくれた紫藤さんは、振り返ると軽やかにステップを踏み出した。体の動きにキレがある。すごいと言いながら手を叩くと、満面の笑みをくれた。

「この家の前に来ると……なんだか、兄貴に会える気がしてさ。でも、びっくりさせてしまったね。もう、ここはキミの家だから来ないことにするよ」

「え……」

私は、紫藤さんにわかるくらい悲しそうな顔をしてしまったのかもしれない。

真剣な表情で私を見つめてくる。誤解を与えたくないと思って咄嗟に考える。

「実は私、お兄ちゃんが欲しいってずっと思っていたんです。一人っ子で……。お母さんにお兄ちゃん作ってと無理なお願いを小さい頃はしていました。ハハ……」

そうだ。この寂しいと思う感情は、紫藤さんをお兄ちゃん的存在に感じているのだ。

「お兄ちゃんか。そう言えば、俺も妹が欲しかったよ。女の子の気持ちを知りたくてね。女の子は俺のことを何も知らないクセに『カッコイイ。好きです』って言ってくるんだ。外見だけで人を好きになるなんて、なんか、違くない?」

私は深くうなずいた。

今まで恋らしい恋をしたことがなかったけど、外見だけで人を好きになったりはしないだろう。一目惚れをしたと話している人のことを否定するつもりはないが、私はその人の性格を知らなければ絶対に好きにならない気がしていた。

「人を好きになるなんて、簡単なことじゃないと思います。私、一生恋愛なんてしないんじゃないかな?」

「俺も」

クスクスって笑い合う。

「気が合いそうだな、俺とキミ。また、兄代わりで遊びに来てあげる。抜けているところもあるから心配だしね」

「はい。妹にしてください。いつでもお気軽にどうぞいらしてください」

フフって笑った紫藤さんの笑顔が温かくて脳裏に焼きついた。

「キミ、名前は?」

そういえば、名乗ってなかったっけ。

「初瀬美羽です。美しい羽と書いて……みう」

「たしかに。キミ、真っ白な羽みたいだね」

色だけは白い。だから、貧弱に見えるのがコンプレックスだったりする。でも、褒めてもらえた気がした。

「今日はありがとう。じゃあ」

「はいっ。また」

玄関のドアを開けて帰ってしまった

紫藤さん。

連絡先は交換していないから、今度はいつ会えるか……わからない。また、会えるよね……?

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    久実を愛しすぎて、彼女のウエディングドレス姿ばかり、想像する日々だ。世界一似合うと思う。純白もいいし、カラードレスも作りたい。もちろん結婚がゴールではないし結婚後の生活が大事になってくる。つらいことも楽しいことも人生には色々あると思うが彼女となら絶対に乗り越えて行ける自信があった。ただ……俺も黒柳も結婚をすると、COLORは解散する運命かもしれない。三人とも既婚者のアイドルなんてありえないよな。大事なCOLORだ。ずっと三人でやってきた。大樹だけ結婚をして幸せに過ごしているなんて不公平だと思う。あいつが辛い思いをしてきて今があるというのは十分に理解しているから、祝福はしているが、俺だって愛する人と幸せになりたい。グループの中で一人だけが結婚するというのはどうしても腑に落ちなかった。だから近いうちに事務所の社長には結婚したいということを伝えるつもりでいる。でもそうなるとやっぱり解散という文字が頭の中を支配していた。解散をしても、俺は久実を養う責任がある。仕事がなくなってしまったら俺は久実を守り抜くことができるのだろうか。不安もあるが、久実がそばにいてくれたら、どんな困難も乗り越えられると信じていたし、絶対に守っていくという決意もしている。

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章7

    赤坂side音楽番組の収録を終えた。楽屋に戻ると、大樹は美羽さんに連絡をしている。「終わったよ。これから帰るから。体調はどうだ?」堂々と好きな人とやり取りできるのが、羨ましい。俺は、久美の親に結婚を反対されているっつーのに。腹立つ。会うことすら許してもらえない。大きなため息が出てしまう。私服に着替えながらも、久実のことを考える。久実を幸せにできる男は、俺だけだ。というか、どんなことがあっても離さない。俺は久美がいないと……もう、生きていけない。心から愛している。どんな若くて綺麗なアイドルなんかよりも、世界一、久実が好きだ。どうして、久実のご両親はこんなにも反対するのか。俺に大切な娘を預けるのは心もとないのだろうか。なんとしても、久実との交際や結婚を認めてほしい。一生、久実と生きていきたいと思っている。俺のこの真剣な気持ちが伝わればいいのに……。日曜日に実家まで押しかけるつもりでいた。 強制的に動かなければいけない時期に差し掛かってきている。 苛立ちを流し込むように、ペットボトルの水を一気飲みした。「ご機嫌斜め?」黒柳が顔を覗き込んでくる。「別に!」「スマイルだよ。笑わないと福は訪れないよ」「わかってる」クスクス笑って、黒柳は楽屋を出て行く。俺も帰ろう。「お疲れ」楽屋を出てエレベーターに乗る。セキュリティを超えて ドアを出るとタクシーで帰る。一人の女性をこんなにも愛してしまうなんて予想していなかった。自分の人生の物の見方や思考を変えてくれたのは、間違いなく久実だ。きっと彼女に出会っていなければ、ろくでもない人生を送っていたに違いない。

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