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第093話

夫人が去った後、あかりは泣きながら紗月の病室に飛び込んできた。

あかりは病室のドアに鍵をかけ、紗月の胸に顔を埋めて涙を拭いながら言った。「ママと離れたくない......」

「ひいおばあちゃんの言うこと、聞かないでよ。何とかしてママをここに残せるようにするから!」

紗月は無力に首を振った。「無駄なことはしないで」

そう言いながら、あかりの小さな顔を手に取り、優しく言った。「あなたもいつかは大人になるのよ、わかるでしょ?」

あかりは涙をこらえ、黙っていた。

「安心して。あかりを危険な目に合わせたりしないよ。あと数日すれば、すべてが解決するわ。そしたら、安心して佐藤家にいられるわ」

「涼介は、あまり良いところがないけど、あかりにはいつも優しい」

「それに、夫人も、あかりだけは可愛がっているみたいね」

あかりは唇を噛んで不満げに言った。「全然可愛がってなんかないわ」

「本当に可愛がってくれるなら、どうしてママをそばに置いてくれないの?」

「大人だから、いろいろ考えることがあるのよ」

実際、紗月は夫人の気持ちを理解できた。

あかりは佐藤家の大切な存在であり、そんな重要な人がメイドに依存することは、大家族にとって受け入れがたいことだろう。

「あかりは気にしないもん。彼女が嫌いの」

あかりはわがままそうに唇を突き出して言った。「もし彼女がママを追い出すなら、もう二度と彼女と仲良くしない!」

そのわがままな様子を見て、紗月はため息をつき、小さなあかりをなだめながら最後には送り出した。

あかりが去るころには、外はもう暗くなっていた。

看護師が紗月に夕食を運んできた。

食事をセットしてくれた後、看護師がリモコンを取り出してテレビをつけた。「退屈じゃない?」

紗月は特に返事をせず、軽く微笑んだ。そしてふと見上げると、テレビ画面には理恵の偽善的な笑顔が映し出されていた。

理恵はカメラに向かって微笑みながら言っていた。「最近、ネットで私の婚約者、涼介が意識不明だって噂がありますが、それは全くのデタラメですわ」

「涼介はとても忙しくて、行動が神秘的なので、病院にいると誤解されただけですよ」

「もちろん、私たちの関係はとても順調ですし、結婚も近々発表する予定ですわ」

「そういえば」

理恵はカメラに向かって右手の薬指にある指輪を見せた。「この指輪は
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