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第040話

しばらくして、紗月の携帯が再び鳴り出した。

画面に表示された「結城智久」という名前を見て、紗月は少し眉をひそめながら電話に出た。

「紗月」

電話の向こうからは智久の低い声が響いた。「桐島市のニュースを見たよ」

彼はため息をついて続けた。「どうして佐藤涼介の家でメイドなんかやってるんだ?」

紗月は肩をすくめた。「説明が難しいわね」

実際、桐島市に戻った前には、涼介に近づくための様々な計画を立てていた。

しかし、計画とは変わるもので、紗月が動き出す前に、透也がすでにあかりを涼介の元へ送り込んでしまった。

そのため、彼女には他の手段がなく、仕方なく佐藤家でメイドとして働くことになったのだ。

全てが当初の予定とは大きく異なってしまった。

だが、なんとか対応できる範囲だった。

「佐藤グループがネット上の噂に対応し始めたのは見たよ」

智久の声が真剣さを増した。「でも、噂を作った相手は手強いようで、佐藤のチームも手こずっているみたいんだ。

手伝おうか?」

紗月は深く息を吐いた。「必要ないわ」

6年前、智久は海に漂い、死にかけていた紗月とお腹の子どもたちを救い出してくれた。

この6年間、智久には多くの迷惑をかけてしまった。

しかし、復讐だけは自分の手で果たしたいと思っていた。

紗月のその意図を察した智久は、一瞬の沈黙の後に言った。「君が中傷されるのは見たくないだけだ」

「慣れてるわ。大丈夫よ」

紗月はため息をつき、話題を変えるように聞いた。「響也は元気にしている?」

「元気だよ」

結城は苦笑した。「ハッキングに夢中だよ。毎日、パソコンに没頭してるくらいだ。

心配いらないよ。響也はここでしっかり見てるから」

......

佐藤グループ本社ビル。

オフィスの空気は重く、息苦しささえ感じられた。

涼介は、何度も再生されるショッピングモールでの映像に眉をひそめていた。

それは彼と紗月が一緒に買い物している動画だった。

涼介は莫大な人力と資源を投入しているにもかかわらず、この映像のネット上での拡散を止められないでいた。

白石は額の汗をぬぐいながら報告した。「社長、どんな手を使っても、この映像が消せないんです。

相手は暗号化処理を施していて、映像のコードにウイルスが埋め込まれています。こちらではどうしても解読できません」

涼介は目
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