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第039話

涼介は顔を上げることもなかった。

しばらくの間、ただ静かに座っていた。やがて、淡々とした声で言った。「帰ってくれ。少し一人で考えたい」

「わかった」

理恵は深く息を吸い込み、そっとオフィスを後にした。

部屋の外、階段の踊り場では、

爽太と悠太が見張りをしながら、透也に電話をかけていた。

「兄貴、今何を聞いたと思う?

佐藤家のおばあさまが佐藤さんのオフィスに来てさ、婚約解消の話してたみたいだよ......」

電話越しの透也は瞬時に興奮した。「他には?」

「詳しくは聞こえなかったけど、おばあさまが去った後、桜井さんも涼介さんと婚約解消の話をしてた。近いうちに本当に婚約を解消するかもな!」

「やった!」

透也は大きく息を吐き、二人を褒めたたえた後、電話を切った。

彼は興奮のあまり、家の中を歩き回っていた。

最後、携帯を取り出し、持ち帰りの食事を注文せずにはいられなかった。

一時間後、食卓に並んだ豪華な料理を見て、杏奈は驚いた。「このお金、どこから出たの?」

透也は肩をすくめた。「ネットでサクラ仕事をして稼いだんだ」

「サクラ?」杏奈は眉をひそめた。

「そう」

「今朝、響也兄ちゃんと一緒にデマを流す仕事を請け負った」

彼はスマホを取り出し、紗月に送金をした。

「理恵の陰謀に気づいてから、兄ちゃんと一緒にサクラ業者を作って、彼女からしっかり稼がせてもらったんだ。

これが僕らの稼ぎと、理恵がデマを広めるために買ったサクラ業者の証拠だよ。確認してね」

紗月はスマホに映る高額な取引記録と、理恵がサクラを雇った証拠を見て、ため息をついた。「つまり、君たちはそのためにデマを広めたってことね?」

「いやいや、そういうわけじゃないんだよ、ママ」

透也は、紗月が本当に怒っているのではないかと焦り、箸を置いて真剣に説明していた。「写真を撮らせたのも、デマを広めさせたのも、全部理恵の仕業さ。僕たちが手を出さなくても、彼女は他のハッカーやサクラ業者を使ってたはずだよ。

僕たちが手を出したからこそ、こうして証拠を掴むことができたんだ。

それに、ママが金に困っているわけじゃないけど、理恵から少しでも金を巻き上げるのは悪くないだろ?

損して得取れってやつさ」

透也は焦ってスマホに打ち込み続けた。「ママが本当に嫌なら、今すぐ兄ちゃんに止めさせるけど.
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