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第048話

なぜ振込口座が会社のものに変わったのかはわからなかったが、とにかく、理恵は勝利を収めた!

たかがメイドごときが、自分に歯向かうつもり?

身の程を知らないにもほどがある!

「理恵」

突然、低く落ち着いた男性の声が響き、理恵の思考が引き戻された。

彼女は心の中の高慢さを隠し、涼介に向かって穏やかで謙虚な表情を浮かべた。「涼介さん、どうしたの?」

彼女の熱意に対して、涼介は冷ややかな態度を崩さなかった。

しばらくして、彼は目を細めて彼女を見つめ、「こういうこと、二度と見たくない。自分でしっかり反省するんだな」と静かに言った。

言い終わると、涼介は長い脚を伸ばし、その場を立ち去った。

その後ろ姿を見送りながら、白石は理恵に一瞥を送り、涼介の後を追った。

「白石」

車に戻り、涼介は後部座席の革張りのシートに体を預け、長い指で痛む眉間を揉んだ。「お前、俺の側にどれくらいいる?」

白石は少し戸惑いながらも、エンジンをかけつつ笑みを浮かべて答えた。「もう6年になります、社長」

「そうか」

涼介は体を後ろに傾け、目を閉じた。「確か、お前には彼女がいるんだったな?」

「はい」

彼女の話題になると、白石は自然と口数が多くなった。

「大学の同級生で、付き合ってもう8年になります。つい最近、婚約もしました。

今じゃもう彼女というより、婚約者ですね...」

後部座席で涼介が唇を軽く引き上げ、冷淡な笑みを浮かべた。「で、その婚約者は......

お前が理恵のことをこんなに好いているって知ってるのか?」

「キィーッ!」

涼介の言葉に、白石は思わずハンドルを切り間違え、車は危うく道を外れそうになった。

心臓がバクバクと鳴り響く中、白石は車を路肩に停め、蒼白な顔でバックミラー越しに涼介を見つめた。「社長......」

「サクラ業者に送金したのは、本当に会社の口座だったのか?」

涼介は目を閉じたまま、軽く言葉を投げかけたが、その声は白石に重くのしかかった。

「申し訳ありません」

白石は、涼介の目から何も隠せないことを悟り、深く頭を垂れた。「説明させてください......」

涼介は冷たく目を開け、鷹のように鋭い視線で彼を見つめた。

その視線に、白石は冷や汗を流していた。

息を整え、涼介を正面から見返した。「でも、桜井さんを助けたのは、彼女が可哀そ
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