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第050話

しかし、この件に関して、響也が謝る必要はなかった。

ただ、理恵と涼介の間にある溝を早く深めたいと考えただけだった。

だが、紗月も響也も透也も予想できなかったのは、涼介の理恵への肩入れが、善悪の区別すらつかなくなるほどだったということだ。

そんなことを思いながら、紗月は長くため息をつき、手を伸ばして響也にメッセージを送った。「ママは何も怒っていないから、しっかり自分の体を大事にしなさい」と。

実は、これが桐島市に戻って、初めて響也から送られてきたメッセージだった。

前回、観覧車の件ではあかりのペンダントを通じて彼女に連絡を取ってきたが、あのときは緊急事態で仕方なかった。

彼女が桐島市に戻るのを決めたとき、響也は強く反対していた。

そのため、彼女と軽い冷戦状態に入っていたのだ。

「ママ、どうか桐島市に戻らないでくれない?

もっといい方法があるはずだ、あの男に頼らなくてもいいんだ。

あの男の元に戻るのは嫌だ。ましてや、僕のためにまた彼の子を産むなんて、絶対に嫌だ。

もしそんなことが必要だというなら、僕は死んでも構わない。ママがその男と関わるくらいなら、自分を犠牲にするさ。

お願いだから、あの男と関係を持たないでほしい......

僕は死んでも構わない。でも、ママがあの男に苦しめられるのは絶対に見たくないし、ママがつらくて、苦しむ姿なんて見たくないんだ......」

彼女が出発したとき、響也が言ったその言葉一つ一つが、心に深く響いてきた。

紗月は目を痛そうに閉じた。

おそらく、彼女が妊娠していた当時、体が弱すぎたのが原因なのだろう。

生まれた三人の子どものうち、あかりは幼い頃から病弱で、響也は5歳のときに白血病と診断された。

透也の骨髄は響也と一致せず、あかりは服薬が多く骨髄が不健康になって、骨髄提供ができなかった。

智久があらゆる骨髄データセンターを調べたが、響也に適合するドナーは見つからなかった。

最終的に、涼介の元を訪れることが紗月の唯一の選択肢となった。

「ちゃんと自分のことを大事にするよ」

まもなくして、響也から再びメッセージが届いた。「ママも、弟や妹をしっかり守ってね。

そして、何よりも自分自身を大事にしてね。

もしつらくなったら、いつでも帰ってきていいよ。この病気は治らなくてもいいからさ」

息子のこの思いやりあ
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