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第024話

電話の向こうで、透也はベンチに腰掛け、救急車が去っていく方向をじっと見つめていた。「それは良かったね」と、彼は沈んだ声で言った。

最終的にママとあかりが助かったにもかかわらず、心には罪悪感が渦巻いていた。

理恵があかりに対してこんなに残酷な方法を使うとは思わなかったのだ。

もし彼が提案してあかりをあのクズ男、佐藤涼介の元に戻らせていなければ、今日の出来事は起こらなかったかもしれなかった。

そんなことを考えると、気分は一層沈んでいった。

透也の落ち込みには気づかず、二人の警備員は依然として喜びに満ちて報告してきた。「お前のおかげだ! 明日から佐藤グループで働けるぞ!」

「これから何かあったら遠慮なく頼ってくれ!」

佐藤グループで働ける?

透也の目が一瞬輝いた。

確かに佐藤グループの内部に協力者が必要だった。

......

病院。

涼介は病室のドアをそっと開けた。

ドアの開く音を聞いて、紗月が振り返った。

来たのが涼介だと気づくと、彼女は思わず眉をひそめた。

紗月はベッドで眠っているあかりを一瞥し、涼介に「シーッ」と合図して病室を出た。

「あかりの様子は?」

廊下で、涼介は低い声で尋ねた。

「過度のショックで薬を飲んで、もう眠ってたよ」

紗月は眉を少しひそめ、彼の包帯でしっかりと覆われた手のひらを一瞥し、「大丈夫?」

「大丈夫」

涼介は彼女を見つめ、「ありがとう」

紗月がどんな目的であれ、今日は命がけであかりを守っていたことは確かだった。

この「ありがとう」は彼女に相応しい。

「感謝なんて必要はないわ」

紗月は冷ややかに彼を見つめ、「あかりのメイドだから、これくらいは当然のことだわ。

あかりの父親として今すべきことは、私に感謝を伝えることじゃなく、事故の背後にいる黒幕を調査するんだよね」

紗月の目は冷たく光っていた。

涼介は淡々と彼女の言葉を遮った。「まだ調査中だ。誰かが仕組んだと断定することはできないし、もしかしたら単なる事故かもしれない」

心の底では、涼介はこれが誰かの陰謀ではなく、単なる事故であってほしいと願っていた。

「事故?」

紗月は冷笑を浮かべた。「これが事故だと信じてるの?

こんな偶然がある?遊園地には大勢の人がいたのに、一番高い所にいた時だけ故障が起き、そしてゴンドラの扉が壊れるなんて!

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