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第028話

ピンク色の小さなベッドに横たわる紗月は、大きな目をぱちぱちと瞬かせながら、真剣な表情で涼介を見つめていた。「ずっとあかりと一緒にいてくれてたけど、そろそろお仕事に行かなきゃダメだよ」

「おばさんにお話をしてもらえればいいんだよ!」

涼介は絵本を手に取りながら、「パパが話す童話は、すごく面白いんだぞ」

あかりは少し不機嫌そうに言った。

「うそつき!もう知ってるもん!」

小さな手で涼介の袖を掴んで軽く揺らしながら、「おばさんがいいの!パパはお仕事してて......」

あかりのしつこいお願いに、涼介はやや不満そうに子供部屋を後にした。

ドアの外では、紗月が廊下で彼が出て行くのを待っていた。

涼介がドアを開け、少し不機嫌そうに紗月を一瞥した後、ようやく立ち去った。

紗月は軽く頭を振ってため息をつき、部屋に入った。

「ママ」

あかりは小さな声で紗月に寄り添いながら、「今日のパパ、なんだか優しすぎじゃない?」

「パパは、私たちを失うのが怖いんだよね」

「失うのが怖いのは、あかりのことだよ」

紗月はあかりをベッドに戻し、優しく布団をかけてあげた。「ママはもう彼に対して何の感情もないわ。彼との関係は、君たち三人だけなの」

「だから」

紗月はあかりの頭を優しく撫でながら言った。「ママが彼を好きになることは期待しないで、いい?」

あかりは少し罪悪感を抱きながら、「うん......」

......

西区の屋台。

透也は椅子に座り、屋台で賑やかに動き回る人々を眺めながら、雑多な騒音に心地よい興奮と喜びを感じていた。

海外にいた頃、ママはいつも忙しくて、子供の三人が家に閉じこもっていた。お義父さんと使用人さん以外の友達はいなかった。

外食に出かけることもあったけれど、こんな風に屋外のテーブルに座り、多くの人たちと一緒に賑やかに過ごすことは一度もなかった。

これが、いわゆる「庶民的な雰囲気」ってやつかな!

「兄ちゃん、俺は爽太で、そっちのは悠太。お前はなんて呼べばいいんだ?」

両側に立つ二人の警備員は、まるで護衛のように透也を囲んでいた。「俺たちが出世できたのは、お前のおかげだ!」

名前は......

透也は眉をひそめ、「僕は透也って言うんだ」

「透也?」

爽太は首を傾げ、「その名前、ちょっと言いづらいな。

これからは俺たちが兄貴って
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