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息子の死後、私は権力の道具に
息子の死後、私は権力の道具に
著者: 小宝顔美

第1話

診療所で、六歳の息子は震えながら、涙でいっぱいの目で、無力に「ママ、助けて......ママはまだ家で待ってるんだ」と泣き叫んでいた。

でも、この悪党どもは、そんな彼を容赦なく手術台に引きずり上げた。

しかも......麻酔すらも惜しんだのだ。

私は携帯を握りしめ、知らない誰かが送ってきた動画を見ながら、泣き崩れた。肝が裂けるような苦しみに、痛みで息ができなかった。

私は孤児で、そしてシングルマザーだった。

十八歳の時、私はあるクラブでアルバイトをしていた。VIPルームで、客に襲われた。

その男の顔はよく見えなかった。

八ヶ月後、私は息子を産んだ。

息子はいつも私に寄り添い、甘えた声で「ママ、怖がらないで。僕が大きくなったら、ママを守るよ」なんて言ってくれていた。

息子は私のすべてだった。

だから、榊由美子が許せなかった。

彼女のせいで、息子を失ったのだ。

復讐を誓い、私は由美子の夫、榊拓真に目をつけた。

由美子はまさに恋愛脳そのもので、彼を必死に追いかけていた。

だが、拓真には「忘れられない人」がいた。

彼とその女の子は、深い愛で結ばれていた。

だから、由美子がどれだけ努力しても、彼の心を手に入れることはできなかった。

ところがある日、突然その人が事故に遭ったのだ。

その事故現場は、惨たんたるものだった。

拓真は赤い目で、何も言わず、ただそこに立ち尽くしていた。その姿は、周りの人を怯えさせるほど恐ろしいものだった。

彼は半月ほど何も言わず、絶望の淵にいたが、最終的に家族の意向を受け入れ、由美子と結婚した。

だが、そんな結婚に、愛があるはずもない。

私はその隙を見逃さなかった。

さらに、私とその人が八割も似ているという偶然があったのだ。

......

私は榊グループに入って、拓真の秘書となり、彼に近づいた。

その夜、彼は酔っ払い、私に迎えに来るように言った。

私はクラブの前で少し躊躇った。

ここは、六年前に私がアルバイトをしていた場所で、知らない男に襲われた場所だった。

すべての幸運も、不幸も、ここから始まった。

気を取り直し、クラブの中に入ると、部屋に座っている拓真が目に入った。

彼は足を組み、ソファに深く腰掛け、片手で顔を覆っていた。

どう見ても酔っ払っている。

物音に気づくと、彼は手を下ろし、複雑な表情で私を見上げた。

若く、ハンサムで、その瞳は深い光を放っていた。

アルコールのせいで、その顔立ちはさらに上品で美しく見えた。

私は彼に歩み寄り、彼を支えながら外に連れ出した。

部屋を出たところで、クラブのマネージャーと出くわした。

彼は驚いたように目を見開き、拓真と私を交互に見つめたが、何も言わずにその場を去った。

......

榊家の寝室で、私は拓真をベッドに横たえ、優しく彼のネクタイに手を伸ばした。

「榊さん、ネクタイを解きますね。これで楽になるはずですよ」

声は柔らかく、まるで甘い蜜のように響いた。

指先は軽やかに、彼の喉元をなぞり、挑発的に動いた。

彼の体がピクリと硬直するのを感じた。

彼は顔を上げ、ちょうど私の低く開いた胸元に目を落とした。

そこに見え隠れする白い肌。

彼の呼吸が少し荒くなった。

その視線が変わっていくのを感じたが、私はまるで気づかないふりをし、さらに彼に寄り添った。

手のひらで彼の額に触れ、さらに甘い声で囁いた。

「どうしました?榊さん、お顔が少し赤いですよ。

お酒が過ぎたんじゃないですか?どこか具合が悪いんですか?」

二人の体は密着していた。

彼の体温がじわじわと上がっていくのがはっきりと分かる。

やがて、彼の大きな手が私のシャツの下に潜り込み、強く握りしめた。

「真希......」彼はかすれた声で囁いた。

そう、真希、あの人の名前だ。

私は冷笑しながら、演技を続けた。

「榊さん、やめて......」私はわざと抵抗するように、彼の胸に柔らかく手を押し当てた。

その声に、彼は一瞬、動きを止めた。

少しだけ正気を取り戻したようだ。

その時、ヒールの音が廊下に響いた。

由美子が来たのだ。

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