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第37話

「葉山様、もう勘弁してください」

坊主頭は必死に命乞いを続けた。

大和は冷たい表情でゆっくりと立ち上がり、その男を死人のように見つめた。

「彼女に手を出した時点で、お前は終わりだ。

もう二度とこいつの顔を見たくない」と、手下に命令を下した。

「かしこまりました、若旦那様」

続けて手下が言った。

「この件、榊さんがあまりに酷すぎます。このこと、雪村さんに伝えますか?」

大和は一瞬迷ったが、首を横に振った。

「いや、伝える必要はない。

こんな汚い話、彼女の耳に入れる価値もない。彼女の残りの人生は俺が守る。絶対にもう二度と彼女に傷を負わせたりはしない」

私はその場をふらふらと飛び出し、ついに耐えきれなくなり、肩を抱きながらその場にしゃがみ込み、声をあげて泣いた。

あんなに結婚を口にしていた拓真が......

私って、本当に見る目がなかった!

人間か犬か、見分けもつかないなんて!

そして、大和......

「馬鹿だ、私は本当に馬鹿だ......」

泣いた後、自然と笑みがこぼれた。

心の中が少し温かくなっていた。

そうか、私は雪村鈴という人間も、ちゃんと誰かに大切に思われているんだ。

ゆっくりと立ち上がり、手の甲で涙を拭い、目には決意が宿っていた。

もう、どうするべきか分かっていた。

私は携帯を取り出し、拓真にメッセージを送った。

「榊さん、全て分かったわ。

坊主頭と一緒に芝居を打って、最初から最後まで私を騙すために利用してたんでしょ。

お見事!

でも、感謝するわ。あんたのおかげで、本当に私を愛してくれる人を見つけられたもの。

もう二度と会わないから」

メッセージを送り終えると、すぐに拓真の連絡先をブロックした。

......

そのメッセージを見た瞬間、拓真は完全に取り乱した。

顔色が変わり、勢いよく立ち上がったせいで、携帯を床に落としてしまった。

鈴が知った?

彼女が全部知ってしまった?!

どうして......こんなことに?

「今生で一番愛している男が......葉山?

彼女が葉山と一緒になるって?!

俺は、もう必要ないのか......!」

胸が強く痛み、拓真の視界が暗くなり、革製のソファに力なく沈んだ。

常の冷静さは消え、顔には影が差していた。

数秒後、彼の目が鋭く細まり、冷たい怒りがそこに宿
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