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第2話

私は興奮していた。

でも、潤んだ瞳にはわずかな恐慌が浮かび、手を伸ばして拓真の手を押し返す。「榊さん、奥さんがいらっしゃっています。あなたの手......」

その言葉で、彼は自分の手がまだ私の服の中にあることを思い出し、私の胸を掴んでいたことに気づいた。

彼はすぐに手を引っ込め、「すまない、人違いだ」と謝った。

「雪村さん、もう帰っていい」

彼は私を追い出そうとしたが、私は彼の手首を掴んだ。驚いた顔で、「奥さんは独占欲が強い方です。彼女は他の女性が榊さんに近づくことを許しません。

私が今ここを出たら、きっと誤解されます。

榊さん、どうしましょう?私、死にたくありません!」

「死」という言葉が拓真の何かを刺激したようで、彼の表情は途端に苦しみに満ちたものに変わった。

「カチャ」

ドアが開いた音がした。

由美子が部屋に入ってきた。

拓真が酔っ払っていると聞き、彼女は何かチャンスがあると考えたのだろう。入念に身支度を整えてきたようだ。

お風呂から上がったばかりの彼女は、セクシーな波打つ髪を肩に垂らし、ピタリとしたスリップドレスが体の曲線を美しく強調していた。

彼女は唇を上げ、媚びるように微笑んだ。「あなた、酔っ払ったと聞いたわ。大丈夫?」

由美子の目に映ったのは、ベッドの上で頭を抱え、横たわる拓真だった。彼の下半身は薄いブランケットに覆われている。

でも、彼女は私がどこにいるか気づくことはできなかっただろう。

私はさっき、急いでベッドに飛び込み、拓真の背後に身を潜め、彼と一緒にブランケットをかぶったのだ。

しかし、私の隠れるスペースはとても狭かった。

彼にぴったりと体を寄せるしかなく、艶やかな唇は彼の敏感な腰のあたりに当たっていた。私の温かい息が薄い布地越しに、彼の肌をそっと撫でる。まるで小さな子猫が戯れるように。

その瞬間、彼の体が緊張して硬直するのを感じた。低い声で、「問題ない、君は先に出て行け」と言った。

その言葉を聞いた途端、由美子は涙目になり、悔しそうに唇を噛んだ。「あなた、本当に私にそんなに冷たくしなければいけないの?」

「奥さんという立場はもう与えた。まだ何が足りない?」拓真は冷淡に言った。「人間、欲張りすぎてはいけない」

「私が欲張りだって?」由美子は突然声を張り上げ、感情が爆発した。

冷たい仕打ちには限界がある。今の彼女の姿は、その限界に達しつつあることを示していた。

「私はあなたの妻よ!夫の愛が欲しいのは、間違いなの?」由美子の声は震え、泣き出しそうだった。「お願い......ただ、あなたとの子供が欲しいだけなの。

あなたと私の子供......

それなら、両親も安心するでしょ?

ねえ、お願い......」

その言葉を聞いた瞬間、私の目には冷たい光が宿った。

殺意が沸き上がり、視界を覆った。

私の息子は死んだ。

犯人が自由に生きていて、自分の子供まで望むなんて......許されるはずがない!

由美子にそんな資格はない!

私は怯えたふりをして、顔を拓真の体にさらに近づけた。

可愛らしい表情で、ふわりと彼の臀部に頬を押し当て、薄いズボン越しにそっと吐息をかけた。

こんな挑発に拓真が耐えられるはずがない。

彼の体がビクリと震え、思わず低い呻き声を漏らした。「ん......」

「あなた......」由美子は驚いて動きを止めた。

次の瞬間、彼女は何かに気づいたようで、全身が硬直し、赤くなった。

私は胸の高鳴りを抑えられなかった。

これではまだ刺激が足りないと思い、わざと体を動かし、ブランケットの下で私の姿が一瞬だけ見えるようにした。

由美子はそれを見逃さなかった。

彼女の怒りが爆発し、激しい表情でブランケットの下に隠れている「泥棒猫」を引き裂こうと突進してきた。

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