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第38話

私の荷物は多くなく、簡単にまとめるとスーツケース一つだけだった。

大和がそのスーツケースを片手で引きながら、もう一方の手で私の手をしっかり握って外に向かって歩き出す。

肩を並べ、私たちは互いに微笑み合った。

今夜が過ぎ、海の彼方へたどり着けば、私たちは新しい人生を始めることができる。

素晴らしい!

そう考えると、自然と笑みが深くなっていく。

しかし、その笑顔が完全に咲ききる前に、突然の爆発音が響き、私は驚いて身を震わせた。

大和の顔が一気に険しくなり、すぐに私を抱きしめて守るようにかばった。

別荘の扉が爆破され、破壊音と共に煙が立ち上る中、黒い高級スーツを身にまとった拓真が、殺し屋たちを引き連れてゆっくりと現れた。

彼の視線が私たちの繋がれた手に落ち、拓真の目が危険に細められ、その目には激しい殺気が宿っていた。

「鈴、こちらに来い!」

彼は歯を食いしばりながら命令した。

「行かない!」

私は即座に拒絶した。

「榊さん、もうあなたとは何の関係もないの。

この人生、私は私が大切に思う人としか一緒に過ごさない」

そう言って、私は無意識に大和を見上げ、笑みを浮かべた。

今になって、誰が本当に大切か、誰が信じられるかを分からなかったら、私は何も学ばなかったことになる。

大和は優しく私の頭を撫でてくれた。

その光景に拓真は激しく動揺し、声はさらに冷たくなっていた。

「鈴、死んでもその男と一緒にいたいのか?」

「......」

「鈴!」

私が「そうだ」と言おうとした瞬間、大和がそれを遮った。

彼は思わず私の頬に手を添え、その指先には深い愛情が込められていた。

しかし、数秒後、その手を急に引き下げ、私を見つめながら感情を抑えるように言った。

「行け、鈴。彼の元へ行け」

「葉山さん......私を追い払うつもり?」

驚いて私は問い返した。

大和は目を逸らし、低い声で言った。

「ああ、鈴。君は行くんだ」

そう言いながら、彼は私を強引に押し離し、私に背を向けたまま、その体は緊張で固くなっていた。

「ふん!」

私は苦笑した。すべてが分かった。

大和は私を守るために、あえて手を放そうとしているんだ。

まったく、この男は......何て言えばいいのだろう。

私は迷わず再び大和の手を取り、強い決意を込めて言った。

「私は行
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