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第33話

ドアの外は静まり返っていた。

長い沈黙が続く。

微かに、荒い呼吸がドアの隙間から聞こえてきた。

顔は見えなくても、私は大和の苦しみと葛藤を感じ取ることができた。

由美子は彼の実の妹だもの、彼が彼女に手を下すことなんてできるわけがない。

「すまない、雪村。こればかりは......俺にはできないんだ」大和の声はかすれており、痛みが滲んでいた。「でも、君を諦めることもできない」

「結局のところ、葉山家が君にしたことは許されることじゃない。その埋め合わせは、俺が一生かけてしていく。君を幸せにするために」

私を追い詰めないようにと、大和はしばらくして立ち去った。

安堵の息をつく一方で、私の心は決まっていた。

スマホを手に取り、拓真に電話をかける。

「もしもし?鈴、考えはまとまったか?」彼の声には期待の色がにじんでいる。

「うん、決めたわ」

「本当か?鈴、全てが終わったら、俺は必ず君を娶るよ......」

喜びを隠せない彼の言葉を、私は一言一句で遮った。

「私は同意しない。葉山さんとは一緒にならない」

電話の向こうが一瞬静まり返った。

数秒後、拓真が低く怒鳴り声を上げた。

「雪村、まさか本気であの男に惚れたんじゃないだろうな?」

「ふん!」

冷たく笑みがこぼれる。

かつては拓真を愛していた。でも、私が警察に連行されたとき、彼は何もせず、そして今度は私を大和に送り込もうとした。

その愛情は、時間と共に消え去っていた。

「彼はいい人よ。彼の気持ちを利用することはできない」私は静かに言った。

「気持ちだと?大和が君に本気だなんて、まさか信じているのか?馬鹿なことを言うな!彼はただ君を騙してベッドに連れ込みたいだけだ。

飽きたら、君を捨てるに決まっている。

その時、お前はどうするつもりだ?君を受け入れる男なんていない!俺だけなんだ、俺だけが君を知っているんだ!」

私は顔が青ざめ、無言のまま電話を切った。

全身が強張り、肩は震えて止まらない。

胸の奥が苦しく、塞がっていた。

ふん!

これが私がかつて愛した男だなんて!

何も見えていなかったんだ。

でも、愛だけが人生の全てじゃない。私はもっと強く生きていかなきゃいけない。

その第一歩として、仕事を探し直すことだ。

......

翌日、私は面接のために家を出た。

しかし、
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