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第23話 3分前に婚姻届を出したばかりだ

紅葉は結婚証を見て何かに気づき、急に目が覚めたように輝和に向き直った。

「吹石さん、は、私より…」

「ああ、9歳年上だ」

輝和は彼女の言葉を補完し、冷ややかな表情を崩さなかった。

「……」

紅葉は結婚証に書かれた年齢を見て、そして半月前のホテルでの出来事を思い出し、頭の中に突然「年齢にふさわしくない振る舞い」という言葉が浮かんだ。

まさにその通りだ。

これほど年を取っているのに、あの夜、彼も騙されたとはいえ、酔っていたわけではなかった。それなら、彼は自分を押し返すこともできたはずだ。

紅葉の顔色が悪いことに気づいた輝和は、眉をひそめた。

「何か不満でも?」

「いいえ、ただ少し驚いただけです」

紅葉はすぐにその不満を心の中から消し去った。彼と本当の夫婦になるわけではないのだから、年の差なんて気にする必要はない。

二人は並んで歩き、市役所を出た。

突然、紅葉は何かを思い出し、軽く唇を噛んだ。

「吹石さん…」

彼女が数語を口にした瞬間、輝和は突然彼女に近づき、彼女の顔に息を吹きかけた。

「すまない、君にキスするかもしれない」

何?

紅葉が驚いている間に、顎が彼に掴まれ、無理やり顔を上げさせられた。そして、温かいキスが降りてきた。

紅葉は一瞬呆然としたが、その後、体が完全に硬直してしまった。

彼のキスはただ唇に触れるだけの軽いものではなく、とても情熱的で、彼の男性的な香りが紅葉全身に充満していた。

どれくらいの時間が経ったのか分からないが、輝和はようやくキスを終え、彼女の腰に手を回して支え、彼女が倒れないようにした。

紅葉は赤く染まった目で彼に寄りかかり、ただ息を整えるだけだった。

「お坊ちゃま、お元気ですか?」

中年の男が二人に近づいてきた。彼の髪型は整っており、どうやら執事のようだった。

輝和は軽くうなずいた。

「奥谷さん、どうしてここに?」

「市役所に用事があって」

奥谷はすぐに輝和の腕の中にいる女性に気づいた。

「お坊ちゃま、こちらの方は…」

輝和は彼女をさらにしっかりと抱き寄せ、少し柔らかな表情を見せた。

「彼女は妻の紅葉。3分前に婚姻届を出したばかりだ」

奥谷はすぐに笑顔になり、

「おめでとうございます、お坊ちゃま。ご祖母様も喜ばれることでしょう」

「結婚したばかりで、彼女にも少し時間が必要だ。
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