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第29話 これからは自分の言動をしっかり注意する

今はちょうど勤務時間で、相手は仕事中のようだったが、すぐに彼女の友達リクエストを承認してくれた。

紅葉は言葉を交わすことなく、二つの動画といくつかの写真を送った。

すぐに相手からメッセージが届いた。

話し終えた後、紅葉はパソコンを使って相手に送金し、二人の協力が成立した。彼女は一安心したが、すぐに背中に冷たい汗が流れた。

輝和がこのカードを渡したとき、彼女が何をしようとしているのかをすでに見抜いていたかもしれない。

今思い返せば、彼女が車に轢かれそうになったときに突然現れた紘や、晩餐会で彼女が動画を使って時久と萌美を辱めたときのことも……

彼女の一挙手一投足を、あの男はすべて把握していたかのようだった。

「じゅ、純平……」

紅葉は緊張しながら純平に尋ねた。

「私、輝和さんを怒らせるようなこと、してないよね?」

純平は少し考え、それから頷いた。

「あるよ、今朝朝ご飯の時に、ちょっと言い合いになったじゃん?輝和さんは結構怒ってたと思うよ」

「……」

紅葉は振り返ってみて、自分を殴りたくなった。

あの男は本当に恐ろしい。これからは自分の言動をしっかり注意して、もうあの人と口論なんかしないようにしないと……

家で昼食をとり、午後1時になると、紅葉と純平は出かけた。

純平は指示に従って車をショッピングモールの駐車場に停め、紅葉に付き添って上層階を歩き回っていたが、とうとう我慢できなくなって言った。

「僕たちは現場を押さえて来たよね?浮気相手が破滅するところを見に来たよね?どうして……服を買い始めた?」

「焦らないの。時久はフィラデルフィアに出張していて、夜にならないと戻ってこないって聞いたの」

紅葉はスーツ店に入って、適当に見回しながら答えた。

「彼がいないと、このショーは成立しないわ」

純平「……」

「うちの店は高級志向ですからね、一着のスーツでも最低400万からです。買えないなら触らないでください」

二人が話しているところに、店員の嫌悪感を隠さない声が聞こえた。

その声に誘われて視線を向けると、店のもう一方に、手袋をした店員がスーツのジャケットを慎重に撫でながら、嫌悪感を露わにしているのが見えた。

店員の向かいには、白髪交じりで質素な服を着た老婦人が立っていた。

老婦人の目元には皺があり、その風貌は歳月を経て徐々に醸成さ
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