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第28話 それ以外何がある

紅葉は何かに気づいたように目を見開き、輝和を見つめた。

「輝和さん、もしかして昨日私を主寝室に呼んだのは、この件のためだったの?」

「それ以外何がある?」

輝和は微笑を浮かべながら問い返した。

「俺に髪を洗わせるためだとでも?」

「……」

紅葉は昨夜の浴室での出来事を思い出し、輝和がベッドでもあんな態度なのかと考えると、恥ずかしくて地面にでも消えたい気持ちになった。

輝和が彼女の専攻を尋ねたのは、彼女に仕事を手配するためだったのか。

「輝和さんはCEOに向いていないな」

純平は饅頭をかじりながら、もぐもぐと言った。

「自分の妻を会社で働かせるなら、裏口から入れてしまえばいいじゃないか。それなのに面接を受けさせるなんて?小説に出てくるような傲慢な社長の方がずっと魅力的だよ!」

輝和は鼻で笑い、

「彼女にその実力がなければ、裏口なんて意味がない。中恒に入ったとしても、3分も経たずに追い出されるだけだ」

「普通に面接すればいいんです。私はやって見せます」

紅葉は言い、昨夜の輝和の皮肉を思い出しながらさらに続けた。

「必ず中恒に入って、自分が無能じゃないことを証明してみせますから」

吹石グループには天才が沢山いることを彼女は知っている。

しかし、彼女もD国で何年も勉強してきた。遊んでいたわけではなかった。

自信に満ちた紅葉の姿を見て、輝和の薄い唇がわずかに上がった。そしてすぐに紘を連れて出かけていった。

朝食を終えた後、紅葉はノートパソコンを抱えてリビングに座った。

彼女は簡単に履歴書を書き、その後、修正と手直しをして純平に見せた。

「ここ」

純平は婚姻関係の欄を指差し、堂々と言った。

「夫の名前は輝和さんだって書けばいいよ。吹石グループの取締役兼CEOで、資産は数千億って」

「……」

紅葉は呆れたように彼を見つめた。

2時間以上かけて、紅葉はようやく履歴書を満足のいく形に仕上げ、紘のLINEを探し出して送った。

向かいに座っていた純平も作業を終え、彼女に携帯を渡した。

「俺はもう萌美とその愛人の携帯にハッキングして、LINEと通話プログラムを改ざんしておいたぞ」

「お疲れ様」

紅葉は携帯を受け取り、すぐに萌美の携帯プログラムにログインした。

純平が萌美とその愛人を突き止めたことで、紅葉の脳裏にはある計画が浮かん
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