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第32話 萌美の秘密

紅葉は大量のデリバリーを注文し、純平と一緒にホテルリソハの向かいにあるカフェに座って、楽しそうに食事をしていた。

しばらくして、彼女はホテルの前にタクシーが停まるのを見た。

そして、車から降りて陰鬱な顔でホテルに向かう時久を見て、紅葉は微笑み、スマホを手に取りメッセージを送信した。そして立ち上がる。

「純平、行こう、面白いのことが始まるよ!」

時久はエレベーターに乗り、すぐに2588号室の前に到着した。半月前の出来事が頭をよぎり、その顔はさらに険しくなった。

これは紅葉の仕業か?

彼が疑念を抱きながらも、2588号室から微かに女性の声が漏れ聞こえてくるのを感じた。そして、顎を固く引き締め、ドアを力強く蹴り始めた。

数回蹴った後、ドアは開き、時久は大股で部屋に入った。

ベッドにいる二人は、ドアが壊される音に気づくことなく、時久が近づいても変わらなかった。

時久は怒りを込めた顔で、すぐ隣のナイトスタンドにあるスタンドを掴み、それをベッドの上の男の頭に激しく叩きつけた。

「ああぁ!!」

男は苦痛に叫び、同時に萌美も少し意識を取り戻した。

「と、時…」

時久がここにいるとは思ってもみなかったため、萌美は恐怖で顔が青ざめ、急いで布団を引き寄せて体を覆った。

時久はベッドに横たわる男を一瞥し、すぐに彼の身元を判明した。そして萌美の髪を乱暴に掴んで引っ張りながら言った。

「萌美、お前は従兄を森吉グループに入れたのは、こうやって浮気しやすくするためか?」

「ち、違うの…」

萌美は髪を引っ張られて痛みに震えながらも言い訳をする。

「彼が私を無理やり…」

その瞬間、時久は容赦なく平手打ちを喰らわせた。

「気持ち悪い女!」

萌美はその一撃でベッドに倒れ込んだが、手足を使って再び立ち上がり、一方の手で布団を握りしめ、もう一方の手で時久のズボンの裾を掴んだ。

萌美は泣きながら懇願した。

「彼が無理やりしたの…健司が、彼と寝なければ、時が他人に賄賂を渡していたことをばらすって言ってたの。時の為だったのよ…」

その言葉に時久の表情が少し和らいだ。

飛行機を降りた途端にそんなメッセージを受け取ったのが、紅葉の仕業だと疑ったこともあったが、まさかすべてこの男の仕業だったとは…

彼女への疑念を抱かなくなったのを感じた萌美は、ほっと息をついた。時久がど
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