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第3話

「美奈、早くこっちに来なさい。もうすぐ雨が降るよ」

スーパーの入り口に立っている母を見つめながら、私はゆっくりと歩いていった。

目の前にはスーパーの階段がある。高くはなく、たった四段だけ。

この高さがちょうどいい。母に大きな怪我をさせずに、お腹の中の悪魔を取り除くことができる。

完璧な計画だ。でも、私の手は思うように動かない。

母の横顔はとても優しい。

手は震え続け、まるで重い石を抱えているかのように、腕を持ち上げることができない。

タクシーがゆっくりと近づいてくる。ぼんやりと見ていると、それが弟の運転するおもちゃの車に見えてきた。

彼の顔には陰険な笑みが浮かんでいて、母にまっすぐぶつかっていく。母が足を押さえて倒れ、苦しむ様子を見ると、弟はさらに嬉しそうに笑った。

私は迷うことなく手を押し出した。驚きの声が響き、母は見事に地面に倒れた。

彼女のスカートの裾はすぐに血に染まっていく。

だから、この悪魔は死ぬのだろうか。

母の痛みに満ちた叫び声が、私を現実に引き戻した。

「美奈......あなた......」 母の顔は恐怖で歪んでいた。

その時初めて、自分が口元に微笑みを浮かべていることに気づいた。

私は慌てて笑みを抑え、口では慌てて助けを求めた。

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