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第15話

ああ、惜しかったわね。

部屋の緊張した雰囲気は少しだけ和らいだ。

「美奈!!!」

怒りに満ちた顔で父が飛びかかってきて、手を高く振り上げたが、母が必死にその腕を抱き止めた。

母は涙で顔を濡らし、苦しそうに言葉も出せず、ただ黙って父に向かって首を横に振り続けた。

前世で死ぬ間際、この家で一番恨んでいたのは母だった。弟が生まれてから、彼女の愛はすべて弟に向けられたからだ。

どれだけ母を愛していたか、その分だけ憎んでいた。再び生き直した今になって、盲目的だった私の目はようやく本当のことを見抜いた。

本当に恨むべき相手の第一位は「悪魔」俊一、そしてその次が「透明人間」みたい父だ。

弟が生まれる前から、おばあちゃんが母に嫌味を言っても、父はすべてを見て見ぬふりだった。

おばあちゃんがくだらない理由で私を叱りつけても、父は私を擁護することもなく、むしろ偽善的に説教をした。

彼はまるで舞台裏の人物のようで、舞台で誰が騒ごうと、ただ静かに眺めているだけだった。

もし父が怒りを表すとすれば、それは「役者」が彼に影響した時だけだ。

今、私はちょうど彼に「石」を投げつけたのだ。

彼は私を叱ろうとしたが、警察に阻まれた。

結局、俊一と私はそれぞれ容疑者と通報者として連行され、事情を聞かれることになった。

証拠は明白で、俊一も自白したため、大きな罰ではなかったものの、少しでも苦しむことができれば良しとした。

自分の賢さに満足していたその時、私は思いもよらぬ展開で打ちのめされた。
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