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第2話

「男の子だったわよ」

「本当?お母さん」

「嘘じゃないわ。私の友達は信頼できる人よ」

両親が嬉しそうな顔をしているのを見て、私は何とも言えない気持ちになった。

記憶では、両親はこの子をとても楽しみにしていて、周りの人はみんな冗談で「美奈に弟ができたら、もう両親に愛されなくなるよ」なんて言っていた。

それが怖くて大泣きした私に、両親は笑顔で「弟か妹ができても、もっと愛してあげるよ」と言ってくれた。

でも、彼らは約束を破った。

食べ物も、飲み物も、服も、遊びも、全部弟が選んでからでなければ、私の番は回ってこなかった。

私は崩れ泣きながら叫んだ。「なんで全部弟が先なの?男女差別なの?」

父は厳しい顔で私を叱った。

「美奈、お前はお姉さんなんだから、小さい子を優先するのが当然だ。先生も教えてくれたはずだろう、年長者を敬い、年少者を大切にすることを」

その時、何かが違うと感じたが、反論することはできなかった。

「おばあちゃん、ヤコブ症候群のこと言ってなかった?」

「そうだよ、お前みたいな小さい子にしては、知識が豊富だね。友達が言うには、その子はXYなんとかが他の子より多いらしい」

「XY染色体のこと?XYY、Y染色体が1本多いってことだね」

「そうだ、それそれ」

私はほっと息をついた。調べてもらったなら良かった。

だが次の瞬間、心が締め付けられた。

「ヤコブ症候群ってすごく強そうじゃない?他の人より染色体が多いなんて、きっと賢いんだわ」

私は焦り足を踏み鳴らしながら、前世で調べたヤコブ症候群に関する資料をすべて口にした。

「この小娘、そんなに小さいのに、ずる賢いわね。嫉妬してるんじゃないの、弟に?」

母は優しくしゃがみ込み、私を慰めた。「弟が生まれても、パパとママは変わらずに美奈を愛するから、心配しなくていいのよ」

父もついでに同調した。

私の心は少しずつ沈んでいった。今の母の優しい声は、私を溺れさせるには十分だった。

もう両親にこの子を諦めさせることはできないと悟った。もう、自分で動くしかない。

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