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第11話

「誰か、早く誰か来て!この悪い子を、こいつを殺してやる!ああ、俊一が!」

叩かれ、蹴られ、肌をつねられても、私は痛みを感じなかった。ただ、強い力で引き離されるまで。

「ゴン!」と大きな音がした。

次の瞬間、私は温かくて懐かしい胸の中に引き寄せられた。

「美奈、大丈夫よ。お母さんがいるから、もう大丈夫だからね」

弟が生まれてから、母に抱かれたのは一体どれくらいぶりだっただろう。

強がっていた心が一瞬で崩れ去り、抑えていた悲しみが一気に溢れ出した。私は母の腕にしがみつき、嗚咽を漏らした。

「警察を呼べ!この子を捕まえろ!甘やかした結果がこれだ!まだ守るつもりなのか?今日は絶対にこの悪い子を懲らしめてやる!」

そこでようやく気がついた。おばあちゃんの手には折れた木の棒が握られていた。

さっきの「ゴン」という音は、その棒が折れた音だった。赤ん坊の腕ほどもある太さの棒が、私に当たっていたのだ。

おばあちゃんは母を押しのけながら、私を殴ろうと叫び続けていた。

「あなた、何か言いなさいよ!!」

突然の母の怒声で、騒がしかった場が一瞬で静まり返った。

母は怒りに満ちた表情で、父を睨みつけながら叫んでいた。

父はいつも通り、ただ口を開けて、唇を動かしただけで、すぐにきつく閉じてしまった。

一瞬静止していたおばあちゃんは勢いを取り戻し、母を強く押しのけ、木の棒を振り上げようとした。

「私の娘に手を出せると思ってるの?」

私が気づく前に、母の手にその木の棒が握られていた。

母の目には怒りの炎が宿り、歯を食いしばり、無謀な侍のように私の前に立ちはだかった。

心の中の隙間が埋められたような気がした。たとえ全世界が私を見捨てても、母だけはずっと私を愛してくれた。

でも次の瞬間、心の奥に潜む獰猛な獣が暴れ出し、周りの全てを引き裂こうと叫んでいるのが感じられた。

「お母さん、苦しいよ、ごほっ、ごほっ......」

母は焦りながら弟の元へ駆け寄った。

俊一はその腕の中で「怖いよ」と言いながらも、口元には笑みを浮かべ、その顔には悪意が満ちていた。

こうして、この「選択の戦い」で彼はまたしても勝利を収めたのだった。

もし視線が実体を持つなら、俊一は私に貫かれてすでに千々に裂かれていただろう。

一連の騒ぎが収まると、おばあちゃんの意向で私は「女性の道徳教
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