第11話

祐摩は彼女の言葉を聞かず、執事を呼び、運転手に車を出すよう指示した。

佳子は彼の袖を掴み、無理に気を振り絞った。「本当に病院には行かなくて大丈夫、どうやら生理が来たみたい」

祐摩はしばらく考え込み、「この時期じゃないはずなんだけどな」とつぶやいた。

契約婚ではあったが、彼らは表面的な夫婦ではなかった。

祐摩は普通の男で、普通の欲求を持っていた。

彼を満足させるのは容易ではなく、何度か彼女の生理と重なることがあった。

佳子は彼の記憶力に驚き、微かに顔をそむけた。彼に嘘をつくのが怖かった。

「ここ二ヶ月はちょっと不安定で…」

祐摩は「ふうん」と頷き、彼女の額に手を当てたが、体温は普通だった。

佳子は彼に抱えられて主寝室に運ばれ、ベッドに横たわると動きたくなくなった。お腹の痛みが徐々に和らぎ、だいぶ楽になった。

祐摩は医薬品入れから鎮痛剤を取り出し、彼女に渡した。「薬を飲んで」

佳子はぼんやりと鎮痛剤を受け取り、薬の錠剤をじっと見つめた。

正直に言えば、祐摩が優しいときは本当に優しい。

冷静で優しくて、そしてとても思いやりがあった。

しばらくして、男は彼女に温かい水を差し出した。

佳子は水を持ち、低い声で「ありがとう」と彼に言った。

しかし、今は安易に薬を飲むことができなかった。

何しろ、妊娠しているのだから。

祐摩はシャツのボタンを外し、彼女を一瞥しながら「どうして食べないの？」と尋ねた。

佳子は適当な理由を探して言った。「今は少し良くなったわ。医者に止痛薬を飲まない方がいいと言われたの。長期的に飲むと依存症になってしまうって」

祐摩はそれ以上聞かず、浴室へと向かった。

彼の携帯は無造作にベッドサイドに置かれていた。

佳子は浴室から聞こえる水音を聞きながら、掌を静かにお腹に当てた。

この子供はまだ二ヶ月も経っていない。男の子か女の子かもわからない。

週末に予定している手術のことを思い出し、心底恐れが募った。

でも、自分で手術を受ける以外に方法はなかった。

彼女は顔を自分のお腹に向け、低い声でお腹の子供に謝った。

そのとき、ベッドサイドの携帯が鳴り始め、画面が光った。

佳子はその音で我に返り、慌てて彼の携帯を手に取り、画面に表示された着信を見た。

——美保ちゃん。

佳子は物語の悪役のように、電話に出て女主人公を挑発