第17話

佳子は心の中が空っぽだった。幸いにも個室の照明が暗く、他の人たちには彼女の顔色が見えなかった。

体が勝手に軽く震えている。

表情にはほとんど変化がなかったものの、彼女の親指は、まるで命綱を掴むかのように強く彼の手を握りしめていた。

祐摩は本当に全く気にしていないのだろうか？

佳子は突然、身体が骨まで冷えるような寒さを感じ、歯がカチカチと鳴り始めた。

他の人たちは一様に沈黙を保っている。

社長の考えなど、誰にも分かるはずがない。

祐摩の瞳は暗く、深い闇の中に何かを隠しているようだった。美しい彼の目尻には微かに笑みが浮かび、佳子が彼の手を強く握るのを許している。彼は彼女を見下ろし、静かに尋ねた。「俺のせいだって？誰も気に入らないのか？」

佳子は喉からかすれた「うん」という声を絞り出した。

彼女は顔を伏せ、長い髪で表情を隠していた。

渡辺創は静かに彼女を見つめた。彼女は確かに美しかった。

目元や眉のラインに無意識に漂う艶やかさがあり、春のような柔らかな魅力を持っていた。

渡辺創は彼女のそんな様子に少し同情を感じたが、彼も冷徹な男だった。

むしろ、彼女をからかおうという意図さえあった。

「義姉さん、もう少し選んだらどう？」

佳子は体が寒さで震え、何とか平静を装っていたが、何を言えばいいのかさっぱりわからなかった。

渡辺創はネクタイを引き緩め、淡々と続けた。「俺が手助けをするのも全然構わないんだけど」

彼はいつも事を大げさにするタイプだ。祐摩と長年の付き合いがある渡辺創は、祐摩が心に抱かない者がどうなろうと一切関知しないことをよく理解していた。

ましてや、今日のような些細な出来事など、何も問題ではない。

佳子は冷静に対処しようと努め、冷淡に言い返した。「結構です」

渡辺創は表向きは礼儀正しく見えたが、佳子はどうしても彼と話すのが好きではなかった。

それは彼女の偏見かもしれないが、どうしても隠せないものだった。

渡辺創は彼女に対して、心からの尊敬をほとんど持っていないように感じた。

渡辺創は眉を少し上げて、「困っているように見える。じゃあ、酒を飲んだらどう？」

佳子は酒も飲みたくなかった。祐摩の前でこんなにも脆弱な姿を見せるのは滅多にないことだった。

彼女は彼に寄り添うようにして、震える声でささやいた。「大崎くん、私、お酒は飲み