第19話

佳子は冗談を受け流すことができず、時に真剣にこだわることがある。

プライドが邪魔をしていて、祐摩の前では面子を保とうとするのだ。

「誰も誘惑していない」

彼女は一言一句、真剣に説明する。

祐摩は少し眉を上げ、指先で彼女の柔らかい肌を軽く押し、少し力を入れると赤い痕が残った。「渡辺創は、あなたのことが好きだと言っていたよ」と、彼は何気なく言った。

佳子は祐摩の顔に不快感や気にしている様子がないか探ろうとしたが、残念ながら全く見つけられなかった。

祐摩はこのことをまったく気にしていない。

佳子はうつむいて、「私は彼と親しくありません」と言い、少し気まずさを感じながら続けた。「それに、彼にはたくさんの美しい知り合いがいるので、好きな人も多いのでしょう」

祐摩の親指は依然として彼女の顎をつかんでおり、彼女を深く見つめ、その目には何か不可解な意味が含まれているように感じた。

「そうとは限らないよ」

佳子はそれ以上何も言わなかった。

渡辺創が今夜連れてきたモデルは、彼女が前回パーティーで見かけた女性とは違う。

彼の周りの人は頻繁に入れ替わっているようだ。

祐摩は彼女の顔をじっと見つめた。

攻撃的ではないが、美しく、確かに人を引きつける顔だ。 彼はゆっくりと親指を離し、彼女の肌に残った明らかな赤い痕を見て、「ごめん、力加減を間違えた」と言った。

祐摩は佳子ほど従順な人間に出会ったことがなかった。

どんな状況でも怒らないように見える。

「佳子、もし好きな人がいたり、適切な相手がいたら、そっちに気を向けてもいいんだよ」

祐摩は彼女に対して優しいと思っていた。

少なくとも将来のことを教えてやっている。

佳子は喉から「ありがとう」と、かすかな声を絞り出した。

祐摩はさらに親切に付け加えた。「ただし、私たちの結婚が続いている間は、何の進展も見せてほしくない」

佳子は「分かっています」と答えた。

祐摩は言い終わると、浴室に行ってシャワーを浴びた。

佳子は、先ほど片付け損ねた薬の瓶を引き出しにしまった。

祐摩はシャワーを終えて着替えると、すぐに会社へ向かった。

佳子も同じ車に乗っていたが、少し落ち着かない気持ちだった。

彼女は運転手に会社の手前の交差点で車を止めてもらい、低いヒールの靴を履いて自