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第14話

今日解熱剤を飲んでそれが効くかどうかは分からない。広瀬雫がクラブルミナスから出てきた時には頭がフラフラしていたので、帰るのはやめてロビーにある休憩所へと戻りそこに座って休んでいた。

彼女が額を触ってみると、さっきよりも熱が出てきているようだった。少し休んでから帰ろうと思っていたら、この時、あるグループがクラブルミナスに入ってきた。

その一番前を歩いていたのはグレーのスーツを着て、もみあげ部分の髪を普段よりかっちり決めて厳しさを増した無表情の美形男性だった。広瀬雫がよく知っている顔だ。

思いもよらず、この時有賀悠真が幼馴染たちを連れてクラブルミナスにやってきたのだ。

彼らはこのクラブルミナスの常連客のようで、それぞれ腕の中にセクシーなドレスを来た女性を抱きしめ入ってきた。有賀悠真の胸の中にいたのは少し内気な感じの白いドレスに薄化粧の女性で、まるで小鳥が拠り所を求めているように彼の胸の中に縮こまっていた。

広瀬雫は胸が張り裂ける思いで「ガタン」と音をたて立ち上がった。振り返る間もなくグループの中の一人に気づかれてしまった。

その人物が有賀悠真に何を言ったのか分からないが、有賀悠真は顔を曇らせ胸の中の女を離すと、不機嫌そうな顔で広瀬雫のほうへ向かって来た。

広瀬雫はソファに置いていたハンドバッグを持ち、彼が向かってくる方向とは逆方向へクラブルミナスから出ていこうとしたが、後ろから手を掴まれ引っ張られた。

「ここで何をしている!」

有賀悠真はすでに彼女の後ろに来ていた。

彼の声はとても冷たく、広瀬雫は自分の手がじんじんと痛むのを感じた。

彼女は無表情で彼のほうへ振り向くと、視界の端にやりきれない顔で彼らを見つめるあの白いドレスを着た女が見えた。彼女のあの表情を見ると、まるで雫が彼女たちの結婚をめちゃくちゃにした浮気相手のように見える。広瀬雫は自嘲の笑みを浮かべた。「あなたはここに来ていいのに、私は来ちゃダメだとでもいうわけ?」

有賀悠真の顔色が一気に変わり、瞳にも陰りが見えた。「おまえは今夜用事があると言っていたな、それはここに来てふざけた真似することだったのかよ!?」

ふざけた真似?

広瀬雫は笑い、涙が滲んできた。「なに、あなたはここで酒を飲んで女遊びしてもいいけど、私はここに来て遊んじゃダメだとでも言うわけ?」

「有賀悠真、あんたは毎日女を
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