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第18話

南区郊外にある別荘にて。

黒いビロードのカーテンが開けられ、月明かりが窓ガラスに透けて床を照らした。窓から外を見下ろすと、遠くのB市の煌びやかな夜景が瞳に飛び込んできた。

春日部咲はこの場所をとても気に入っていた。有賀悠真が一度ここへ連れてきてからというもの、彼らが密会する時は必ずここを選んでいた。

有賀悠真は春日部咲の隣から身を起こし、ガウンを手に取り体にかけるとベッドの端に座った。そしてすぐにタバコの匂いが部屋に漂った。

月はとても美しかった。彼の顔にはいかなる感情も現れていない。

春日部咲はタバコの煙で少しむせて二回咳をした。水のように流れるしなやかな体を有賀悠真の肩に絡ませ、目の前のハンサムな男性をじっと見つめた。

「悠真、何か悩みでもあるの?」

部屋に入ってから、彼がベッドの上で話した言葉を除いて、まともな話を彼女としていない。冷ややかな顔はずっとこわばっていて、彼の機嫌の悪さがはっきりと見て取れた。

有賀悠真は少し頭をかしげ、春日部咲と目を合わせた。月光の下、彼女の瞳は宝石ようで、笑った時にはキラキラと光輝いていた。それは記憶の中のあの瞳と特に似ていた......

彼は少しぼんやりして、そして深くタバコの煙を吸い、横に置いてあった灰皿にタバコを押し付けて火を消した。

「今後は、広瀬雫とトラブルを起こすなよ」彼がはっとした時、この言葉が口から出ていた。

彼の声は低く、少し冷ややかだった。

それを聞いて春日部咲は少し驚き、自分の聞き間違いじゃないかと思った。しかし、有賀悠真の冷たい表情を見て、彼女の瞳には嫉妬の色がちらつき、悲しそうにこう言った。「悠真......誤解しないで。今日は確かに広瀬雫がサニーヒルズプロジェクトの功績を独り占めしたもんだから、腹が立って彼女のところに行ったの。あなただってこのプロジェクトは私と彼女二人が責任者だって知ってるでしょ。まさか広瀬雫があんな人だったなんて、私――」

「君と彼女が共同責任者だって言うが、デザイン原稿作成に君は関与したのか?」

春日部咲がひたすら責任逃れする言葉を聞き、有賀悠真は眉間にしわを寄せ、そのまま立ち上がった。この時、心の中には言い表せない苛立ちが湧き上がり、彼は一秒でもこの場に居たくないと思った。

春日部咲は驚き、彼が行ってしまうと思い慌てて走り寄り彼を抱きしめた。「悠真
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