Share

第17話

太ももあたりなので、ポケットの中は少し熱かったが、嫌な気持ちはしなかった。広瀬雫はしばらくポケットの中を漁っていたが、鍵は見つからず額には汗が浮き出てきた。

男性のふとももの筋肉は硬くしっかりしていて、彼女が極力気をつけていても接触は避けられなかった。

彼女の顔は熱のせいか恥ずかしさのせいか、耳まで真っ赤になっていた。そして仕方なくもう片方のポケットを探すとようやく鍵が見つかった。そのもう片方のポケットは手を伸ばすには少し距離があり、しかも今向いている方向からは届きにくかったので、広瀬雫は何度も手探りをしなければならず、恥ずかしさのあまり窒息してしまいそうだった。そして最後にようやく鍵を見つけることができた。

彼女の錯覚なのか、男性の体が少し硬直したのを感じた。

彼女は深く息を吸い込み、目は閉じていても神様でも嫉妬するほど美形の男性を見て、顔が熱くなった。坂本美香が毎日つぶやいている言葉を思い出し、彼女は耐え切れず小声でつぶやいた。「もし坂本さんが今夜のことを知ったら、言い訳のしようがないわね」

言い終わると、鍵を差込み玄関のドアを開け、男性を支えながら中へ入った。

部屋には階段があり一階と二階に分かれた形になっていた。広瀬雫はもう完全に力がなく、そのまま彼をソファの上に座らせて額の汗を拭き取るとキッチンへと入っていった。

冷蔵庫の中にはありとあらゆるものが揃っていた。広瀬雫は有賀悠真と結婚してから、ちゃんとした妻になれるように専門的に料理を習いに行ったことがある。彼女は酔い覚まし用のあさりの味噌汁をてきぱきと作り、テーブルの上に置いた。

この時、彼女はようやく風間湊斗の家をじっくりと見回してみた。

部屋はとてもスッキリとしてきれいで、まさに男一人暮らしの部屋といった感じだ。全体的に色は暗めのトーンで、白黒の現代風スタイルだった。

細かく見てみると、風間湊斗の私生活はとても健全なもののようだ。女性の影は全く見られず、長い髪の毛一本も見当たらなかった。

B市にある名家は少なくない。有賀悠真と彼の幼馴染たちを見れば分かることで、このような上流階級にいる男たちはプライベートでは男女関係が乱れていた。その身分や立場から言えば、風間湊斗がこんなに愛情に深い人間であることは想像しにくいのだ。

彼女はソファで眠っている男性のほうを向いた。目を閉じているので
Locked Chapter
Continue to read this book on the APP

Related chapters

Latest chapter

DMCA.com Protection Status