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第16話

夜の車の流れはスムーズで、一時間くらいで市の中心にあるオルキデアメゾンに到着した。

オルキデアメゾンはB市の一等地にある高級マンションだ。そこは一般的な金持ちが住めるような場所ではなく、普通に権力があるだけでは手に入れられるような場所ではない。ここは風間グループが二年前に開発したもので、計画の段階ですでに完売したと聞いている。当時、有賀恭子も彼女と有賀悠真の新居にと考えていたが、残念なことにそのときには部屋は完売で手にいれることができなかった。

広瀬雫はさっき有賀悠真から電話がかかってきて、それを自分が切った後、彼が再びかけてくることはなかったので、自嘲して笑った。

セキュリティが広瀬雫が運転している車を見ると、いそいでゲートを開けたので車は停止する必要なくそのまま駐車場へと入っていった。

駐車した後、広瀬雫は少し気を揉んでいた。

風間湊斗は180センチ以上ある長身男性だ。体格は見た感じそこまで逞しいというわけではないが、着痩せするタイプらしく脱いだら筋肉がある男性だ。言うまでもなく、この時の彼はひどく酔っていて、彼自身に歩けるような力はなさそうだったのだ。

駐車場にある車はどれも高級車だったが、そこには一つも人影はなかった。

広瀬雫は彼一人ここに残して誰かを呼びに行く勇気もなく、仕方なく後ろのドアを開け、唇を噛み、風間湊斗を支えて車から降りた。

幸いにも、風間湊斗はベロベロに酔っ払っていたが、それでも少しは意識があるようだった。

広瀬雫が彼の体を支えた時に、彼も車を降りることが分かっているようだった。

両足が地面に着いた時、二人とも少しよろけてしまった。広瀬雫はもう片方の手で急いで車につかまり、ギリギリ立ち姿勢を保つことができた。

「私、こんなに苦労しても文句一つ言わないんですから、サニーヒルズの件を私に任せてくださったら、有賀グループに多く利益をくださいます?」

風間湊斗が聞こえていないのをいいことに、広瀬雫は小声でブツブツとつぶやくと、足を車のドアの端にかけて閉めた。この時、本来目を閉じていたはずの無表情の男性の口角がひそかに上がっていることに気がついていなかった。

「重たい......」

広瀬雫は風間湊斗を支えながら数歩歩き、車に鍵をかけてエレベーターのほうへ向かっていった。

以前、風間湊斗の体に少し触れたことがあったが、この時
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