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第29話

彼女は唇をきつくすぼめ、ようやく前の真ん中に座っている男を見つめた。

窓から差し込んだ日差しが作った影で、彼の顔立ちがよりくっきりと際立っていた。彼は左手に煙草を持ち、白いシャツにネクタイを緩めにし、足を組んで気怠そうに二つのデザイン画を見ていた。いつもの厳しさと今朝、錯覚のように見えた優しさとは違って、今の彼からは無造作な気安さすらも感じられ、キラキラと輝いている。

女が彼に食い気味になるのも無理はない。

目の前にいるこの男自身にも、よくトラブルを引き起こしてしまう要素がありそうだ。

「広瀬さん、私をじいっと見てきて、何か言いたいことでも?」

油断してつい見つめていると、風間湊斗の冷たい声に現実に引き戻された。

風間湊斗は煙草の灰を落とすと、真っ黒な瞳をまっすぐにこちらに向けた。その目には、人を吸い込む渦があるようだ。

口元をわずかに上げて、その冷たい顔から柔らかささえ感じられる。広瀬雫はドキッとして、慌てて隣を見回した。

春日部咲はまるで広瀬雫が風間湊斗を誘惑したと思っているような嫌そうな顔をしていた一方、浅野舞は相変わらず複雑な顔をしていた。

彼女は急いで自分を落ち着かせ、風間湊斗の顔を見ずに咳払いをした。「私はただ、風間グループがデザインに対する最終的な結論を出すのを待っているだけです。風間社長が有賀グループのデザインが盗作でないと結論を出してくださらないと、私は安心できませんので」

「そうですか」

低い声で言ったのに、ずいぶん優しそうに聞こえた。語尾がからかうように少し高く、何か意味ありげな響きを感じる。見るまでもなく、広瀬雫は男が薄い唇を少しすぼめているのを予想できた。

ふっと昨夜の不用意なキスのことを思い出して、彼女の耳がかすかに赤くなった。また今朝の曖昧な質問が頭に浮かぶと、慌ててまた自分を落ち着かせた。

「そうです。問題があるかどうか、その答えをいただけるんですか」

彼女は背筋を伸ばし、もう一度風間湊斗を見返した時、その目はもう波が立っていない澄んだ湖のようだった。

風間湊斗は淡々と彼女の冷静な目を一瞥して、その赤くなった耳を見逃していなかった。口角をわずかに愉快そうにあげ、何もなかったかのように口を開いた。「有賀グループと浅野グループのデザインは問題ないと確認しました。盗作の形跡は見当たらないです」

春日部咲は嬉し
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