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第24話

広瀬雫は身を起そうとしたが、手足を思うように動かせず、鉛のように重かった。

「ブランケットを持っていってほしいと大宮さんが――」逃げることができず、仕方ないと思いながら、彼女は目の前の渋い顔をした男を見て、乾いた声で説明した。

有賀悠真は眉をひそめ、無表情のままブランケットを横に払い、立ち上がって上から床に座り込んだ女を見つめた。彼女のきちんと着こなした服に視線を落とすと、わずかに目を開き、責めるように彼女の目を睨んだ。「昨夜どこへ行ってたんだ?」

広瀬雫は目を開閉し、爪がてのひらに深く食い込んで痛くなるくらい手を握りしめて、ようやく力が戻ってきたようで、ゆっくりと立ち上がった。

疲れは隠せなくてもこの美形な男を見ていると、心が冷えていった。

「あなたに毎日の予定をわざわざお知らせする義務なんてないでしょ」

有賀悠真はわけもなく心が苛立っていた。昨晩、春日部咲と一緒にいた時のような感情がまたこみ上げてきて、思わず言った。「俺はもう白石玲奈と別れた、春日部咲とも」

広瀬雫はきょとんとしたが、口元にすぐ皮肉な笑みを浮かべた。「それがどうかしたの?」

白石玲奈と春日部咲がいなくても、また別の女が現れる。

このように際限もなく彼女の感情と尊厳が踏みにじられる生活には、もううんざりだ。

彼女が目を伏せると、長いまつ毛が目の下にうっすらと影を落とした。

広瀬雫は肌が白く、うっすらとピンク色も見える整った優しい顔立ちをしている。彼のスラリとした体が近づくと、彼女の小さな体が包み込まれるようだ。近くにいるせいか、彼女からわずかないい香りがした。

ゴクリと唾を飲み込み、有賀悠真は急に自分を制御できないかのように一歩踏み込んで、広瀬雫を懐に抱いた。そして、ためらいなくその桜の花のような唇を貪った。

彼の呼吸が少し速くなり、唇に触れると我慢できずに、すぐ彼女の唇を吸うように舐めた。まるで中毒になったかのように、今胸の中に抱きしめた人を、そのままずっと抱きしめようと思っていた!

キスされた広瀬雫は呆気に取られて固まってしまった。

彼の手は優しく彼女の体を包み込んでいるが、その薄い唇は力強く押さえつけてきた!

ただ、彼のはだけた白いシャツに妖艶に咲いた赤い印は、皮肉にも嘲笑していた。

彼が昨夜も他の女と一緒にいたのだと思うと、広瀬雫は吐き気がしそうだった。

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